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コレクション展「こどもの情景-戦争とこどもたち」 【東京都写真美術館】

前回ご紹介したジョセフ・クーデルカ展を観た後、同じ東京都写真美術館の3階でコレクション展「こどもの情景-戦争とこどもたち」を観てきました。

P1190325.jpg

【展覧名】
 コレクション展「こどもの情景-戦争とこどもたち」

【公式サイト】
 http://syabi.com/contents/exhibition/index-1349.html

【会場】東京都写真美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】恵比寿駅


【会期】
 2011年5月14日(土)~7月10日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間50分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらの展示も空いていてゆっくり観ることができました。

毎年、この写美ではテーマを設けた常設が行われていて、一昨年は「旅」、去年は「ポートレート」となっていましたが、今年度のテーマは「子供」だそうで、今回の展覧会も子供が主役となっています。 初回の今回は「戦争とこども」となっていて、単純に子供の可愛らしさを写したものではなく、中々シリアスな内容となっていました。
ほとんど白黒で、主に第二次世界大戦の戦中戦後とベトナム戦争の作品が多かったように思いますが、大戦以前の1930年代から時代を追う形式の展示となっていましたので、章ごとに気に入った作品をご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  私を見て! ヌードのポートレイト (東京都写真美術館)
  コレクション展「旅」 第3部「異邦へ 日本の写真家たちが見つめた異国世界」 (東京都写真美術館)

<1930年代>
まずは1930年代のコーナーです。

アンリ・カルティエ=ブレッソン 「セビーリヤ、スペイン」
これは1933年のセビリアで撮られた写真で、爆破か砲撃で破れた壁の穴から子供たちが遊んでいる様子を覗いたような構図となっています。周りは瓦礫で松葉杖をついたりしているにも関わらず、子供たちは楽しそうで生き生きとしていました。大人なら絶望してしまう光景だろうに、子供って凄い…と、どん底でも生きる喜びを感じる作品でした。


<1940年代>
続いて、第二次世界大戦のあった一番厳しい時代のコーナーです。

ドロシア・ラング 「昼食の時間、マンザナーの日系アメリカ人収容所、カリフォルニア州」
簡素なテーブルに向かって食事をする収容所の人々を撮った作品です。彼らは敵性外国人として収容された日系人たちで、暗い表情を浮かべています。しかし、手前にはカメラ目線の子供がいぶかしげな表情でこちらをみていました。こんなところに子供もいたのかとちょっと気分が暗くなります。
また、この辺にはこうした収容所の写真が数点あり、簡易的な建物が並ぶ荒地のようなところで遊ぶ子供や、鉄条網を握って外の世界を見る子供の写真など、強さを感じる作品もありました。

山端庸介 「おにぎりを持つ少年。井樋の口町付近(爆心地より南南東1.5km)[長崎ジャーニー]より」
泥だらけの顔で防空頭巾?を被る子供が、手におにぎりを持っているところを撮った写真です。しかし、その顔は無表情で、感情が喪失してしまっているかのようです。タイトルから察するに、長崎の原爆の後の光景でしょうか。隣には同じ子供が母親と一緒に立っている写真もありました。 所々に黒い点があるのが凄く気になったのですが、これはもしかして放射線による感光なのかな…。
この辺には治療を待って野ざらしになっている子供や栄養失調の子供など、目を背けたくなるような痛々しい写真が並んでいます。どれも非常に恐ろしいです。

この先は戦後の作品が並んでいました。

林忠彦 「リームを回して物乞いする孤児(上野駅) [カストリ時代]より」
フラフープみたいなものを担いで芸をしていたらしい子供と、何かを差し出す夫人、沢山の観客などを撮った写真です。貧しい姿をしていますが、意外とみんな爽やかな笑顔をしていて、苦しい中でも明るく生きている様子が伝わってきます。戦後の人たちは強いですね。
この辺は敗戦後の頃の作品が並び、進駐軍と一緒に写ったり、物乞いしたり、靴磨きをして働く子供たちの写真がありました。小さいのに逞しく懸命な姿です。


<1950-60年代>
ここは戦後の復興を感じさせる作品と、ベトナム戦争関連の作品などがありました。

土門拳 「紙芝居 [江東のこども]より」
紙芝居の前に集まる子供たちを撮った写真です。群がる子供たちが押し合いへし合いしながら真剣な表情で見入っているようです。ようやく子供らしい子供を観た気がしますw
この辺はやや落ち着きを取り戻した時代のようですが、まだ混沌とした雰囲気があるかな。この近くには土門拳の作品が何点かありました。
 参考記事:土門拳 作品展「室生寺」 (FUJIFILM SQUARE フジフイルム スクエア)

熊谷元一 「コッペパンをかじる [小学1年生]より」 ★こちらで観られます
鬼のような形相をして、コッペパンにかじりつく子供を撮った写真です。背景にも沢山子供がいて、教室のようなので給食かな? 恐らくパンが固いのでしょうw 良いリアクションでした。

岡村昭彦 「Vietnam-6 捕らえられた解放民族戦線兵士の家族。背後には解放戦線の旗と武器。彼らはこの2時間後に銃殺された。(ヴェトナム・フコック島)」
これはベトナム戦争関連の作品で、砂地に座る7人の家族が撮られています。その中の女性は赤ちゃんを抱っこしているのですが、タイトルから察するに…。戦争の冷酷さを感じる1枚です。


<1970-80年代>
最後は70年代~80年代のコーナーです。ここにもベトナム戦争関連の作品などがありました。ここにはカラーの作品がいくつかあったかな。

中村梧郎 「1961年から71年まで10年間にわたって行われたアメリカ空軍による枯葉作戦で、枯死全滅した南ベトナムのジャングルの一画(Ca Mau=カマウ岬のマングローブ林跡、1976年撮影」
枯れ木となった森の残骸の中、裸の子供が立っている様子を撮った写真です。その枯れ木の森があまりに無残で、死と終末を感じさせます。これはかなりインパクトのある作品でした。
この辺には米軍の枯葉剤によって障害を持った子供たちを撮った写真が並んでいました。ダイオキシンは米兵にもダメージを与え、その子供にも欠損などの先天性の障害が出ている様子などもわかります。

長倉洋海 「瞳が輝く貧民街の少女」
身なりは貧しくボロボロですが、微笑みを浮かべ上を見上げている可愛らしい女の子の写真です。タイトル通り、その目は輝いていて、希望に満ちていました。これも長く記憶に残りそうな素晴らしい写真だと思います。


と言うことで、特別展とあわせて写真を通して戦争を知る内容となっていました。こんなに絶望的な状況になる戦争を恐ろしく感じると同時に、「瞳が輝く貧民街の少女」のように苦境にあっても希望を感じさせる作品があったことに感動できました。 ここにはついでに寄ったつもりでしたが、中々の収穫でした。
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