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ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション  (感想前編)【国立新美術館】

つい昨日のことですが、土曜日の午後に国立新美術館で始まった「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション」を観てきました。色々とネタを溜めていますが、注目度の高い展示ですので先にご紹介しておこうと思います。 メモもたくさん取りましたので、前編・後編に分けようと思います。

P1190660.jpg

【展覧名】
 ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/washington/index.html
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/nga/index.html

【会場】国立新美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅

【会期】2011年6月8日(水)~9月5日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
入口付近は空いていたので、これは意外と混んでないのでは??と一瞬期待しましたが、甘かったw 中に入ると結構混んでいて、1つの絵に3~4人くらいの混み具合でした。 しかし、展覧会の奥の方はあまり混んでいなかったし、17時頃にさらっと2週目した時には空いていたので、まだゆっくり観られる時間帯もありそうです(開催1週間目時点での状況ですので、会期が進むほどに混雑が予想されます) 観るなら今のうちですね。
 ※公式サイトで最新の込み具合の分かるページが出来たようです。こちらです。

さて、今回はアメリカのワシントン・ナショナル・ギャラリーの貴重なコレクション、特に印象派とポスト印象派が中心の展覧会となっています。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは1941年にアンドリュー・メロンという実業家のコレクションが基となってできた美術館で、まるで神殿のような建物の大美術館です。 その後、多くの実業家や市民の寄贈によってコレクションが増え、今では印象派・ポスト印象派だけでも400点を数えるほどだそうです。成り立ちは昨年の六本木でも展覧会を行ったボストン美術館に似ているかな。アメリカ人の寄贈の考え方は素晴らしいですね…。

今回はそこから日本初公開50点を含む80点が展示されています。(さらに常設作品は通常は12点しか貸し出ししないらしく、今回は8点も貸し出されています。) まさに空前絶後の大盤振る舞いとなっているのは、70周年に伴う回収工事のためのようで、本当に今後はこんな機会は無さそうです。この辺の事情は去年ここで展示を行ったオルセー美術館と同じのようですが、海外勢が震災と原発で貸し渋るこの時期にこれだけのものが観られるとは本当にありがたい話です。もちろん、貴重なだけでなく中身も素晴らしかったので、詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。
 参考記事:
  ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 (森アーツセンターギャラリー)
  オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想前編 (国立新美術館)


<第1章 印象派登場まで>
まず最初は印象派の少し前の時代の作品が並んだコーナーです。主にバルビゾン派やマネの作品が並んでいました。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「うなぎを獲る人々」 ★こちらで観られます
小川とその周りの森を描いた作品で、全体的に緑がかっています。川の中でしゃがんでいる人がうなぎを取っているようで、他にも畔の木に登る人やエプロンのようなもので何かを集めている?女性なども描かれています。緑が柔らかく、空気感も穏やかでのんびりした雰囲気の作品でした。

この辺はコロー以外にもバルビゾン派のドービニーやデュプレなどの作品もありました。また、モネの師でもあるブーダンや、クールベなどもあります。

エドゥアール・マネ  「オペラ座の仮面舞踏会」 ★こちらで観られます
黒い服に黒いシルクハットを被ったたくさんの人々が集まるオペラ座のフロアが描かれた作品です。後ろ姿のピエロ?や、男性に抱きつくように話す女、仮面の女たち(高級娼婦)の姿も見られます。絵の上のほうには2階のバルコニーも描かれていて、解説によるとこのバルコニーによって構図は上下に分割され、両端の人物は突然切り離されているとのことで、確かにピエロは左半分が画面から出ていました。こうした表現は枠内にしっかり収めていた同時代の画家とは異なっていて、大胆な革新が伺えるようです。また、私が気になったのは色使いで、柱の白やシルクハットの光などで上手く黒が引き立っているように思いました。そのせいか、黒が大半を占めるのに明るく楽しげな印象を受けます。やはりマネの黒の使い分けは素晴らしいです。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

エドゥアール・マネ 「鉄道」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている作品で、当時のサロンに入選した作品です。鉄道というタイトルですが目の前に描かれているのは母子らしい2人の人物で、列車の姿はなく、線路と蒸気でその姿を連想させるのみです。母親らしき人物は膝に子犬を乗せて本を開いていて、こちらに気が付いたようにちらっと視線を向けています。それに対して娘は後ろ向きで立ち、鉄格子を掴んで駅の様子を見ているようでした。一見、日常風景をそのまま描いたようにも見えますが、2人の衣装は紺と白で対照的で向いている方も逆だったりと、色々と解釈できそうです。しかし、解説によるとサロンでは酷評されたようで、1枚の絵に1つの題材の同時代の画家には受けが悪かったようでした。なお、左上に描かれている家はマネの家だそうです。めっちゃ駅近ですねw

余談ですが、この絵のようにこの展覧会の絵の中には何匹かの犬が現れます。全部覚えておくと、最後のミュージアムショップで面白いアイテムが見つかると思います^^

アンリ・ファンタン=ラトゥール 「皿の上の3つの桃」
小さな静物画で、皿の上に乗った3つの桃が描かれています。ざらざらした質感の茶色い机や生き生きとした桃など、シンプルながらも静物で名高いラトゥールの力量を感じさせる作品でした。

フレデリック・バジール 「エギュ=モルトの城壁」
手前から砂浜と港が描かれ、奥には白い城壁が横に伸びています。さらにその上は抜けるような青空となっていて、海・空・白い城壁の取り合わせが非常に爽やかな印象を与えます。色は強めでぺったりした感じで印象派よりも後の時代の作風を髣髴しました。
この画家は印象派誕生の一翼を担った人で、議員の息子として生まれ、印象派への財政支援もしていました。解説によると、アカデミックな人物造詣と戸外制作を融合した明暗の際立った作風(ちょうどこの作品みたいな感じかな?)だったそうですが、29歳の時に普仏戦争で戦死したのだとか。

フレデリック・バジール 「若い女性と牡丹」
若い黒人女性の花売りが花々に向かい、右手で牡丹の花を持ってこちらをじっと見ている様子が描かれています。ちょっと無表情で怖いw 手前の花はバラやチューリップなど春の花が描かれ、赤・黄色・白など色も鮮やかでした。解説によると、この作品はマネのオランピアに着想を得たそうで、恐らく花を持った黒人の従者のことだろうと思います。
 参考リンク:マネのオランピアのwikipedia (オランピアの画像があります)


<第2章 印象派>
続いては今回特に充実していた印象派のコーナーです。印象派とは何か?という説明は省略しますが、この章を観ればよくわかると思います。(冒頭に解説もあります) 錚々たる面々に加えて、女性画家のコーナーもあり、嬉しいサプライズでした。※女性画家のコーナーは後編でご紹介します。
どれを観ても素晴らしいので、この時点で図録を買うことを心に決めましたw 

クロード・モネ 「アルジャントゥイユ」
左に川、右に小道と木々を描いた作品です。川には帆をかけた小舟が浮かび、非常に穏やかな光景となっています。右から木漏れ日が道に落ちている様子も見事で、光の移り変わりを感じることができました。のどかで心休まります。

クロード・モネ 「日傘の女性、モネ夫人と息子」 ★こちらで観られます
緑の傘を差して振り返る白いドレスの女性(モネ夫人)と、帽子を被った息子を描いた作品です。空には流れる雲、手前には緑の草に夫人の影が落ちていて、風の流れや日差しを感じます。夫人の顔の上にすら~っと筆跡が残っていたり、塗り残しがあったりして、それが非常に生き生きとした勢いも感じさせました。これぞ印象派!という明るいエネルギーにあふれています。これには何枚か似た作品がありますが、心底素晴らしい作品でした。

クロード・モネ 「ヴェトゥイユの画家の庭」 ★こちらで観られます
家の前のひまわり畑を描いた作品です。真ん中に上に向かって道がまっすぐ伸びていて、そこに3人の人物も描かれています。ひまわりの緑の葉と黄色い花がお互いに色を引き立てていて、明るい雰囲気がありました。 しかし、解説によるとこの頃はモネにとって苦しい時期だったようで、ヴェトゥイユでは妻のカミーユもなくしているようでした。

この辺にはモネの晩年の代表的な連作の太鼓橋の作品などもありました。

エドガー・ドガ 「アイロンをかける女性」
左を向き、テーブルに置かれた服?にアイロンをかける女性を描いた作品です。力を入れて真剣に向き合っている感じがよく出ています。上にはたくさんの衣服があり、色や構成も考えられているようでした。

この近くにはドガの踊り子を題材にした作品もありました。これがまた内幕を知ってしまったような気持ちになる作品なので面白いです。 また、昨年のドガ展で観た落馬の絵もありました。
 参考記事:ドガ展 (横浜美術館)

ギュスターヴ・カイユボット 「スキフ(一人乗りカヌー)」
恐らく川の上で描いた作品です。目の前で 帽子を被り黄色いオールを持った男性がカヌーを濃いでいる様子が描かれていて、奥や右側にも同じ格好の人がボートをこいでいます。周りは緑に囲まれ、水面まで緑に染まっているのが何とも美しく、その水面をボートが波を分けて滑らかに進んでいる表現が見事でした。革新性を感じつつも優雅な雰囲気の作品でした。

カミーユ・ピサロ 「カルーゼル広場、パリ」 ★こちらで観られます
高い階のアパルトマンから観た公園の風景で、周りをルーブルなどの建物に囲まれています。人々が公園に集まり、穏やかな日差しと明るい緑がのんびりした雰囲気を出していました。

ピサロも3点くらいありました。 解説機だとこの辺で何故かアンジェラ・アキのテーマソング?も聴くことができますw テレビ屋さんの発想かな? そういうのは要りませんから…。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ポン・ヌフ、パリ」 ★こちらで観られます
手前から奥に伸びていくパリ最古の橋を描いた作品です。奥には町並みと青空が広がり、橋にはたくさんの人々や馬車が行きかい活気がありました。全体的に明るく、観ていて楽しい気分になってくる作品です。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「モネ夫人とその息子」 ★こちらで観られます
扇子を持ち白い帽子と白いドレスを着たモネのカミーユ夫人と、それに寄りかかる息子を描いた作品で、右には鶏の姿もあります。軽やかな色彩で幸せな雰囲気に満ちていました。
解説によると、ルノワールがこれを描いた時に、モネ家にはマネが先に来ていて、この2人を描こうとしていたそうです。そこにやってきたルノワールはモデルの準備ができた2人を描かないと勿体無いと思ったらしく、これを描いたのだとか。 しかし、隣で描いていたマネは気になって仕方なかったそうで、モネに止めさせてくれと言ったそうですw  しかし止めなかったようで、モネは出来上がったこの作品を生涯大切にしていたそうです。マネやルノワールとの友情を感じるエピソードでした。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「踊り子」
振り返る踊り子を描いた作品です。ふわっとしたスカートで、背景の緑地に溶け込むような色合いで描かれています。可愛らしい顔で輝くような美しさでした。 解説によると、伝統的な形式で描かれているようですが、筆跡を残さないのを範とした当時は批判されたそうです。 

この辺はルノワールの作品ばかりなのですが、どれも凄くてw 以前ルノワール展でご紹介した「アンリオ夫人」なども並んでいます。
 参考記事:ルノワール-伝統と革新 感想前編(国立新美術館)

と言うことでまだ2章の途中ですが、この辺で丁度展示の半分くらいなので今日はここまでにしようと思います。本当に素晴らしい展示となっていますので、美術好き、特に印象派隙の方は絶対に観ておいた方が良い内容と言えます。会期は長めですが、比較的空いている今のうちに行っておくことをお勧めします。

次回は2章の続きから4章までをご紹介します。お楽しみに^^

おまけ:
この日は以前ご紹介したラ・リングア・オチアイでランチしたのですが、前にも増して美味しかったです^^
 参考記事:ラ・リングア・オチアイ (六本木界隈のお店)



   続いて、後編はこちら


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Re: No title
>コメント頂いた方
そうです、それです^^ 非常に革新的な1枚です
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Re: No title
>コメントいただいた方
コメント頂きありがとうございました。

非常に良い課題で楽しそうです^^
その作品は平坦で明るい色彩が良かったですね。だいぶ得るものも多かったのでは?
こんな良い展示は年に数回程度しかないので、ご自身の中で財産になるかと思います。

また気になる記事があったら遊びに来てください^^
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