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美しき日本の原風景 -川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷- 【山種美術館】

先週の日曜日に、山種美術館で「美しき日本の原風景 -川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷-」を観てきました。

P1200158.jpg

【展覧名】
 美しき日本の原風景 -川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷-

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/doc/110611jp.pdf (pdf)

【会場】山種美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅


【会期】2011年6月11日(土)~7月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんがいましたが、自分のペースで観ることができました。

さて、今回の展示は日本の原風景ということで、風景を題材とした日本画の展示となっていました。こちらの所蔵品のみで、特に作品同士の繋がりは無いようでしたので、気に入った作品の感想だけご紹介しようと思います。

<第1章 美しき原風景>
最初は今回の展示のテーマに沿った内容となっていて、近代画家の作者ごとに分けられているようでした。

川合玉堂 「早乙女」 ★こちらで観られます
5人の田植えをしている女性たちを描いた作品です。身をかがめてせっせと田植えをしているようで、1人は立ち上がって頭の手ぬぐいを直しているようなポーズをするなど、生き生きとした描写となっています。また、鳥瞰したような空から見た構図が面白く、画面上部にあるあぜ道には「たらしこみ」の技法が使われるなど、のどかなだけでなく絵画的にも非常に興味深い作品でした。

最初は玉堂の作品が続きます。

川合玉堂 「水声雨声」
墨の濃淡で描かれた作品で、雨の中が降る中、手前には斜めに筧(かけい。雨どいのような水路)が走り、その先の水車を回しています。水車の近くでは水しぶきが上がり、筧の下では傘をさす2人の農婦が何か話しているようです。背景の木々には輪郭線が無く、雨にけぶるような叙情性を出していました。静けさの中で水車の音が聞こえてきそうでした。

この辺には玉堂の得意な鵜飼に関する作品もありました。春夏秋冬に分かれているようです。

川合玉堂 「雪志末久湖畔」
「志末久(しまく)」とは風が激しく吹くことで、雪志末久は吹雪を指します。この絵は手前に湖、畔に家々、背景には山々が描かれた作品で、全体的に雪に覆われています。左のほうに白いもやのようなものがあり、これが吹雪のようで湖畔に流れ込んでいくような感じでした。美しくも冬の厳しさを感じさせる作品でした。

奥田元宋 「奥入瀬(春)」
3画面からなる森の中の渓流を描いた作品です。ややぼんやりした感じで、右から左へと飛沫をあげて勢いよく流れている様子が描かれています。音まで聞こえるような臨場感があり、緑の鮮やかさに包み込まれるような気分になりました。

奥田元宋 「玄溟」 ★こちらで観られます
タイトルの「玄」は天、「溟(めい)」は大海を指します。深い落ち着いた赤に染まる山の木々が画面いっぱいに広がり、その木々から沸き立つように白い靄が立ち込めています。右上にはぼんやりと月のように浮かぶ太陽もあり、幻想的な雰囲気となっていました。色合いも相まって静けさがあります。

奥田元宋はこの近くにあった「松島暮色」という作品も良かったです。

東山魁夷 「月出づ」
手前は、左上から右下への対角線上の斜面に白樺が生えた山、奥にはそれと交差するような斜面の山が描かれ、その後ろから満月が顔を出そうとしています。緑の木々が深い色をしていて、少し寂しい感じもしますが、魁夷らしい神秘性がありました。構図も単純化しているようで面白かったです。

この辺は魁夷のコーナーで、春夏秋冬の京都を描いた作品が並びます。以前ご紹介した「緑潤う」や「年暮る」などもありました。
 参考記事:没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画 (山種美術館)

東山魁夷 「秋彩」
秋の小倉山を描いた作品で、奥に緑の山、右下から真っ赤なもみじ、左上からオレンジのもみじが視界を塞ぐように伸びています。背景の山のおかげで2本のもみじの色が映えて、非常に鮮やかな印象を受けました。枝が向き合うような構図も面白かったです。

横山操 「蒲原落雁」(越路十景の内) ★こちらで観られます
枯れ木が並ぶ雪原を描いた作品です。細かくも力強く描かれた枯れ木は一面に規則正しく並んでいて、ちょっと怖いくらいに整然としています。その木の黒さもあり、画面は暗く、どこか死を感じるような光景でした。
この辺は横山操の「越路十景」が10枚続きます。

横山操 「出雲崎晩鐘」(越路十景の内)
画面下にぽつんと堂が建ち、背景には薄っすらとした山、そしてその前の沢山の鳥たちの姿などが描かれた作品です。夕暮れ時らしく淡いオレンジに染まった画面からは郷愁のようなしんみりしたものを感じました。このシリーズは良い作品ばかりかも。


<第2章 風景画の流れ>
続いては風景画の変遷の解説などのあるコーナーでした。広重の東海道五拾三次や池大雅といった江戸時代の作品もありました。

池大雅 「東山図」
こんもりとした丘とその周りの木々や野を描いた作品です。いかにも南画という画風にも思えますが、西洋の遠近法からも影響を受けているそうです。これを描いたころに実景に基づいた真景画が流行ったのだとか。ちょっと意外な感じを受けました。

野口小蘋 「根真景図」
6曲1双の屏風です。作者は南画の女性らしく、右隻には春の芦ノ湖が描かれ箱根権現や富士山の姿も見られます。対して左隻は秋の風景となっていました。穏やかな緑が多く、爽やかで女性らしい繊細さを感じる作品でした。この光景を見ていると箱根に行きたくなりますw
  参考記事:成川美術館の案内


<第3章 富士を描く>
最後は第2会場のみで、富士山をモチーフにした作品が並んでいました。

伊東深水 「富士」
上から手前に松の枝が伸び、奥に浮かぶような富士が描かれた作品で、デフォルメされていて色が鮮やかです。解説によると、余白の良さや格調高さを重んじた伊東深水らしいと評されていました。美人画で名高い伊東深水ですが、風景もよく描いていたそうで、こちらも良い作品でした。

奥村土牛 「山中湖富士」
富士の山頂を描いた作品です。雲の上に浮かぶような感じで、てっぺんに雪が無いので夏の富士のようです。青い山肌は穏やかそうで、手前の雲がたなびいているのが面白い場面となっていました。

横山大観 「霊峰不二」 ★こちらで観られます
雲海の上に浮かぶ富士と、真っ赤な太陽を描いた作品です。末広がりの美しい斜面と雄々しい風格がさすがで、太陽と共に神格化された「霊峰不二」の雰囲気が出ていました。富士と言えばやはりこの巨匠ですね。


と言うことで、今回も楽しめる展覧会となっていました。ここにはそれなりに通っていると思うのですが、まだ観たことない作品も多くてコレクションの奥深さを感じています。会期が残り少ないので気になる方はお早めにどうぞ。 次回の「日本画どうぶつえん」の展示も楽しみです。
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