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ラファエル前派からウィリアム・モリスへ 【目黒区美術館】

前回ご紹介した山種美術館の展示を観た後、だいぶ離れた目黒区美術館までハシゴして「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」を観てきました。

P1200164.jpg

【展覧名】
 ラファエル前派からウィリアム・モリスへ

【公式サイト】
 http://mmat.jp/exhibition/archives/ex110604-2

【会場】目黒区美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 目黒駅
【会期】2011年6月4日(土)~2011年7月14日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、自分のペースでゆっくり観ることができました。

さて、今回の展示は巡回展で去年ご紹介した横須賀の展示と同じものです。とは言え、横須賀では観ていない作品も結構あって、改めて楽しむことができました。詳しくは気に入った作品を通じてご紹介しようと思いますが、ラファエル前派とは?などについては以前にご紹介したので、今回は作品の感想のみとします。
 参考記事:ラファエル前派からウィリアム・モリスへ (横須賀美術館)


まずは最初の辺りに、以前ご紹介したウィリアム・ホルマン・ハントの「キリストと二人のマリア」などが展示されていました。特に章立ては無く、順路もよく分かりませんでしたが、大まかに作家別になってる感じかな。

ウィリアム・ホルマン・ハント 「ストラトフォード=オン=エーヴォン」
右側には奥から手前にかけてカーブした川が描かれ、川の上には小舟の姿もあります。絵の左側には牧草地で牛がのんびりしている姿が描かれ、背景には背の高い建物も見える風景です(教会かな?)鮮やかな緑が爽やかで、水彩ならではの透明感がありました。緻密な描写もこの流派ならではです。

ウィリアム・ダイス 「ヤコブとラケルの出会い」
青い服の女性(ラケル)が目をつぶってうつむいていて、半裸の男性(ヤコブ)がその女性の首に手を回して、もう一方の手で女性の手を握っている様子を描いた作品です。何かを訴えているような顔で、想いを伝えているのかな? ちょっと中世絵画のような雰囲気の感じですが、男性の熱い視線からは心情が伝わるようでした。
 参考リンク:ラケルのwikipedia

この近くには以前ご紹介したウィリアム・ダイスの「聖母子」もあり、旧約聖書やキリスト教を題材にした作品が多くなっています。

ウィリアム・ホルマン・ハント 「幼いキリストと寺院の博士たち」
赤い長髪の少年(キリスト)を中心に、たくさんのターバンの男性達(博士達?)がじっと見守る様子を描いた作品です。キリストは巻物を広げ、おでこを触って何かを考えているようです。その隣には身なりの良い子供たちもいて、キリストの様子を興味津々に観ているようでした。写実的である一方、人々の服や模様は華やかで、装飾性が強い作風に思いました。

少し進むと、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの「愛の杯」「レディ・リリス」「ルネ王のハネムーン:音楽」などもありました。ロセッティは特に充実しているように思います。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「マリゴールド」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。棚?の上に花を置く頭巾を被った若い女性が描かれ、ちらっと右側に視線を向けています。背景の壁には葡萄の文様が描かれるなど装飾的な要素もあります。よく観ると、下のほうには黒猫がごろっと転がってこちらを伺っているのが可愛らしい^^ 全体的に陰影の使い方も良くて、柔らかい雰囲気がありました。

フレデリック・サンズ 「ワルキューレ」
赤い髪の女性が崖のようなところで木にとまるカラス?に目を向けていて、まるで会話をしているような感じを受ける作品です。背景は夕暮れで、城の様子も見ることができます。 北欧神話のワルキューレがタイトルにあるので女神だと思うのですが、何か悩んでいるような顔が印象的でした。色鮮やかな色彩も好みです。

近くにはミレイの「めざめ」や、ジョン・ラスキンの本やスケッチなどもありました。

エドワード・コリー・バーン=ジョーンズ 「モーガン・ル・フェイ」
黒い壷を抱え、薬草を口元に寄せるローブの女性を描いた作品です。背景は暗い空と暗い草むらとなっていて、どことなく不吉な雰囲気が漂います。それもそのはず、この女性はアーサー王の異父姉であり魔女である「モーガン・ル・フェイ」で、この薬草を黒魔術に使うようです。
 参考リンク:モーガン・ル・フェイのwikipedia
解説によるとこの作品はイタリアで観たルネサンス絵画の影響を受けているそうです。また、よ~く観ると魔女の胴の半分辺りから人物の周りに枠線のようなものがあるのが気になったのですが、これは画家自身が切り取って売り払った痕跡のようで、その後に画家のE・クリフォードが買い戻して、バーン=ジョーンズ自身によって修復されたという経緯があるようでした。どうして切り離しちゃったのかは分かりませんが、面白いエピソードでした。

エドワード・コリー・バーン=ジョーンズ 「聖カタリナの復讐する天使」
両手に燃え盛る真っ赤な火を持った、赤い衣に緑の羽の天使を描いた作品です。足で聖カタリナを襲った車輪を壊していますが、この作品にはカタリナはいません。どうやらこれはステンドグラスの下絵らしいので他にカタリナもいるのかな? 中世風のちょっと硬い感じもしました。

エドワード・コリー・バーン=ジョーンズ 「嘆き」
竪琴を持ったピンクの服の女性と、手を組み頭を垂れてるポーズの青い服の男性を描いた作品です。男性の後ろにはピンクのバラが咲いていますが足元にも花びらや花が落ちていて意味深です。タイトル的に2人とも悲しんでいるのだと思いますが、嘆くと言うよりは静かにぼーっとしているような呆然とした悲しみに思えました。それでも色が鮮やかで明るい画面になっているのは面白いです。

この辺には以前ご紹介したエドワード・コリー・バーン=ジョーンズの「プシュケを救い出すクピド」「ドラゴンを退治する聖ゲオルギウス」「東方三博士の礼拝」などもありました。続いては2部屋目です。

メイ・モリス(デザイン) 「刺繍の腰掛」
森の中を装飾的に描いたタペストリーです。あちこちに鳥やウサギがいて、鳥は口に文字を書いた旗のようなものを銜えたのもいて、旗のような帯のようなものはあちこちの木々にも巻きついていました。(紋章のようなもの?) 意味は分かりませんが、賑やかで華やいだ雰囲気の作品でした。

ウォルター・クレイン 「平和の天使」
白い羽の生えた青い衣の天使を描いた作品です。木の枝を持って両手を広げ、下を見ています。下には夕暮れの山のような風景が広がり、天使は空中に立っているかのような感じを受けました。翻る衣や流れるような髪が美しく、清らかな雰囲気がありました。

この部屋にはジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「南の国のマリアナ」やイーヴリン・ド・モーガンの「フローラ」もありました。また、部屋の奥はステンドグラスのコーナーとなっています。向かいの休憩室にもタイルや椅子の作品があります。

続いては最後の部屋です。部屋の入口付近にシメオン・ソロモンの「バッハの前奏曲」もありました。

アルバート・ジョセフ・ムーア 「アプリコット」
2人の女性が前後に並んで歩いている様子を描いた作品です。後ろの女性は前の女性の首に腕をかけて振り返り木の実をつまもうとしているようです。 非常に細やかで、水彩のような柔らかい色調が好みでした。特に2人の衣の表現は見事で透ける感じは見事です。 解説によると物語性はないようですが、ありそうに見えますw

ウォルター・クレイン 「愛の聖域」
古代ギリシャかローマのような雰囲気の部屋の中、祭壇に祈りを捧げる赤い服の男性を描いた作品です。見上げる先には壁に描かれた女性の姿があり、解説によると男性は画家自身で、女性は婚約者だそうです。結婚への期待と唯美主義への熱烈な支持が込められているようで、足元の香炉や背景の音楽を奏でる人々の絵などからは、絵画・彫刻・音楽・建物・詩といった芸術や、匂いや音といった五感すべてへの言及があるとのことでした。

ウォルター・クレイン 「ディアナとエンデュミオン」
2匹の猟犬を抑え弓を持った白い衣の女神ディアナと、草むらで腕を枕にして眠る青い衣の男性(エンデュミオン)が描かれた作品です。偶然犬が見つけたかのようなシーンになってて面白いw 背景には羊のいる牧草地で、繊細な色合いで明るい雰囲気がありました。
 参考リンク:エンデュミオーンのwikipedia

エドワード・コリー・バーン=ジョーンズ 「別天地ヴィンランドへの船出」
鉛筆で描いた白黒の作品で、帆船に乗る沢山の人々とデフォルメされた大きな波が描かれています。波はダイナミックな迫力があり、飲み込まれそうな勢いがあります。また、帆船の曲線や帆の曲線、波の曲線が呼応するようでリズム感がありました。

この部屋の中心には鏡や燭台、本、大きなカーペットなども展示されています。部屋の奥にはタイルとラスター彩のコーナーがありました。ここは多分あまり変わっていないんじゃないかな。コウノトリのラスター彩はやはり可愛いです^^


ということで、以前観た時からちょっと時間が空いたこともあり、気分を新たに観ることができました。欲を言えばもう少し油彩作品やミレイの作品があると嬉しいですが、やはりこの流派は何度観ても好みです^^

この後、同時開催の藤田嗣治に関する小展示も観てきました。次回はそれをご紹介しようと思います。
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Comment
No title
ラファエル前派、いいですよね!
私もこの展覧会のために、わざわざ横須賀美術館まで観に行きました。
そしたら、関西(京都だったかな。)にも巡回にきました。
横須賀美術館は、谷内六郎館や常設展がすごく良かったですし、東京の展覧会も観れたので、横須賀まで行ってよかったのですけどね。
展覧会、横須賀から始まって、関西に行き、多分その他もまわって、最後がこの目黒区美術館でしょうか。
絵画たちもお疲れ様ですね。
Re: No title
>Ms.れでぃさん
コメント頂きありがとうございます^^
私もラファエル前派が大好きでして、ラファエル前派と聞くと何度でも観たくなりますw

>私もこの展覧会のために、わざわざ横須賀美術館まで観に行きました
関西からの遠征は大変だったと思いますが、横須賀美術館は非常に気持ちの良い美術館ですよね。
周辺環境や横須賀という町自体も魅力だし、また行きたいと思います。

巡回は恐らく、京都の駅だったかと思いますが、場所によっては作品がだいぶ違うのかも??
目黒の展示も良かったですよ^^
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