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重要文化財指定へ わが国初期の美術館建設の軌跡 【聖徳記念絵画館】

もう10日以上前ですが、信濃町の近くにある聖徳記念絵画館に行ってきました。ここは特に展示の入れ替えが無いのでご紹介を後回しにしていましたが、忘れてしまうのでそろそろ記事にしておこうと思います^^;

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【展覧名】
 重要文化財指定へ わが国初期の美術館建設の軌跡

【公式サイト】
 http://www.meijijingugaien.jp/art-culture/seitoku-gallery/

【会場】聖徳記念絵画館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】信濃町駅、国立競技場駅、千駄ヶ谷駅、青山一丁目駅、外苑前駅など


【会期】2011年7月2日(土)~12月11日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて、貸切みたいでした。…空いているのは良いのですが、節電のためか冷房が効いておらず、扇風機だけという状態というのが辛かった! 外よりはマシですが、この日は特に暑い日だったので中もかなりの暑さで汗だくになって鑑賞しましたw

さて、今回の「重要文化財指定へ わが国初期の美術館建設の軌跡」というのは一部に資料的なものがあるだけなので、特別展というほどのものでもありません。なので、この展示については割愛して、常設をご紹介しようと思います。

この絵画館は神宮外苑にあり、明治天皇・昭憲皇太后を称え、明治時代の偉業を絵画で示しています。建物に入って右半分が日本画、左半分は西洋画となっていました。測ったわけではないですが2.5m四方くらいの絵が80点あまりもずら~~~っと並んでいます。詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<日本画>
まずは日本画のコーナーです。明治天皇が生まれた頃から主な出来事を絵にしていました。

高橋秋華 「ご降誕」
緑の御簾の垂れ下がる部屋の中、何人かの皇族らしき人々が画面の右のほうに注目しています。天井には金雲が立ち込め、大和絵風の雰囲気です。御簾の透き通る感じが見事で、高貴な雰囲気がありました。

この辺は明治天皇の成長が分かる作品が並んでいます。皇太子になった頃や、天皇になった頃など人生の節目が描かれていました。

邨田丹陵 「大政奉還」 ★こちらで観られます
徳川慶喜が二条城に家臣を集めて会議をしている様子を描いた作品です。広い部屋の畳の上で、家臣たちは畏まり、緊張感があります。この歴史的な瞬間を描いた作品は教科書か何かで観た気がします。厳粛な雰囲気のある作品でした。
 参考記事:【番外編】 京都旅行 二条城

この辺は明治維新の頃の動乱の様子を描いた作品などがありました。画家は作品ごとに違うのですが、不思議と画風が似ているように思います。

結城素明 「江戸開城談判」 ★こちらで観られます
これは写真で観たことがある人も多いのでは? 和室で正座をして向き合う西郷隆盛と勝海舟を描いた作品です。西郷はよく知られている上野の銅像と似た姿をしています(実際には別人らしいですけど) 2人ともピシっと背を伸ばし、手を太ももに置いた姿勢が凛としていて、話しあうというか目と目で会話しているような感じを受けました。

この辺には明治天皇が江戸に来た時の様子などが展示されています。

山口蓬春 「岩倉大使欧米派遣」 ★こちらで観られます
アメリカに視察に行く全権大使岩倉具視を始め、大久保利通、伊藤博文らも同行した使節団一行を見送る様子を描いた作品です。港の石垣には沢山の見送る人々が押しかけ、小さな蒸気船(沖の船まで乗る小舟)には岩倉、木戸、大久保が立って見送りを受けています。沖には大きなアメリカ号の姿がありました。遠近感が妙な感じでしたが、その時の人々の期待と不安が分かるような作品だと思います。
 参考リンク:岩倉使節団のWikipedia

この辺は近代化・不平等条約解消といった明治期の目標がよく分かる展示となっています。鉄道の開通式や、軍隊の演習、富岡製糸工場への視察などの作品が並びます。

近藤樵仙 「西南役熊本籠城」
西南戦争を題材として、山の斜面で沢山の兵士たちが戦っている様子を描いた作品です。車輪のついた大砲を押して山を登る者や、山から大砲を撃つ者など、緊迫した光景です。画面中央の辺りには熊本城の周辺が火事になって、激しい炎と、もうもうとした煙が上がっていました。戦争の生々しさが表れています。


<西洋画>
続いて西洋画のコーナーです。こちらも壁画のような大きな作品(すべて同じサイズ)が並び、明治天皇が崩御されるまでの様子が描かれていました。やはり、どこそこに行ったとか会議のシーン、戦争シーンなどが多いです。

北蓮蔵 「岩倉邸行幸」
和風の板張りの部屋の縁側あたりで直立している明治天皇と、布団から半身を起こして貰い、家人と共に天皇に向かって合掌している老いた岩倉具視を描いた作品です。布団の上には袴が置かれ、これを礼装の代わりとしているそうです。病気の岩倉はこの翌日に亡くなったそうですが、礼儀正しく毅然としていました。また、明治天皇はその姿勢を含めて威厳があり、神格化されている雰囲気を感じました。

この辺には修復中の作品も数点あり、展示されていませんでした。

金山平三 「日清役平壌戦」
ピョンヤンでの清国との戦争を描いた作品です。あちこちに煙が立ち上る平原を背景に、手前では倒れたり仲間を助けている兵士の姿が描かれています。右のほうには馬に乗った参謀の姿もあり、臨場感があります。解説によると、この戦いの勝利によって日清戦争が有利になったそうです。この作品の隣には黄海での海上戦の様子を描いた作品もありました。

この辺は日清戦争の頃の時勢が分かる作品が多く、台湾の領土化や日英同盟の様子なども描かれています。

荒井陸男 「日露役旅順開城」
日露戦争の激戦の末にロシアが降服して、要塞司令官ステッセルが乃木将軍に愛馬を送る様子を描いた作品です。黒い帽子に青い制服を着た兵士たちや、白い馬、それを迎える日本の軍人たちが描かれています。絵の題材や構図などはどうとも思わなかったのですが、どことなくセザンヌのような色合いと雰囲気を感じました。
 参考記事:旧乃木邸の写真

中村不折 「日露役日本海海戦」
戦艦三笠の甲板から大砲を見るような構図で、海戦の様子が描かれています。大砲は赤い火柱を上げて弾を発射しているようで、船の周りの水面も水柱が立っています。敵のバルチック艦隊の姿こそ見えませんが、戦いのど真ん中の激しさを物語っているようでした。いわゆる東郷ターンで勝った時かな。
 参考リンク:日本海海戦のWikipedia

田辺至 「不豫」
二重橋の広場に沢山の人達が集まって、お辞儀や土下座のような姿勢で祈っている様子を描いた作品です。これは明治天皇の平癒を祈っているらしく、この時既に昏睡状態となっていたそうです。悲嘆にくれる老若男女の様子から明治天皇が国民に慕われていたのが伝わる一方で、ちょっと時代の違いを感じます。もう1つ気になったのが、他の作品は写実的な絵が多いなかで、これは少しぼんやりした画風でした。何か意味があるのかな?
 参考記事:皇居周辺の写真 (二重橋~桜田門~国会議事堂)

最後に建物の中央部分の奥の部屋も見ました。ここには明治天皇の御料馬「金華山号」の剥製と骨格が展示されていました。また、ステンドグラスになっている所もあり、建物自体も楽しめます。重要文化財に指定されたようですが、こんなに立派なのに今更なんだ!?と逆に驚きw


ということで、エアコンが効いていないのが辛かったですが、建物と共に大作の数々を観ることができました。学生の時に勉強した日本史を目の当たりにできたような気がします。受験生の人なんかは息抜きにここで絵を観ておくと明治期の出来事がよく覚えられるんじゃないかなw
地下には休憩室もあり、自販機でジュースを買って一休みすることもできます。何度も行く所ではないと思いますが、一度は足を運んでみると面白いと思います。


おまけ:
絵画館の周りの写真。この辺のランドマーク的な存在です。目の前の神宮球場では甲子園の予選をやっているようで盛り上がっていました。
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