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月岡芳年「月百姿」展(後期) 【礫川浮世絵美術館】

先週の土曜日に、後楽園の東京ドームの裏手にある礫川(こいしかわ)浮世絵美術館に行って、月岡芳年「月百姿」展を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていて、私が行ったのは後期でした。

P8200252.jpg

【展覧名】
 月岡芳年「月百姿」展(後期)

【公式サイト】
 http://homepage2.nifty.com/3bijin/menu_j.html

【会場】礫川浮世絵美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】後楽園駅・春日駅
 

【会期】
  前期:2011年7月1日(金)~7月24日(日)
  後期:2011年8月2日(火)~8月25日(木)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
ここは普通のビルの5階にあるのであまり知られていないのか、空いていてゆっくり観ることができました。(とは言え、ポツポツと途切れることなくお客さんは来ていました)
さて、この展示は江戸から明治にかけて活躍した月岡芳年(つきおかよしとし)に関する展示となっています。月岡芳年の作品はたまに見かけますが、これだけ一気に観られる機会は中々無いので、見逃すわけにはいきませんでしたw 私としては「風俗三十二相」の「○○さう」というタイトルの美人画を期待したのですが、今回は50点ほどの「月百姿」というシリーズが並んでいます。(恐らく前期も同じくらいあったと思います) 展示室はあまり広くなく、早い人なら15分くらいで観ることができるくらいですが、詳しくは気に入った作品と共に展覧会の様子をご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  東京国立博物館の案内 (2009年11月)
  江戸東京博物館の案内 (絵画編 2009年12月)
  江戸民間画工の逆襲 (板橋区立美術館)


まず最初に簡単な来歴について説明されていました。月岡芳年は12歳で歌川国芳に入門し、15歳の頃に初作を出しました。初期は武者絵や役者絵を中心としていたようなので、そのスタートは師匠と似てるかな。同門には河鍋暁斎などもいます。
 参考記事:
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
  「寅年の祝い」展 (河鍋暁斎記念美術館)


慶應から明治にかけては血みどろ残虐な作風もありますが、これは一部であってその後の神経病と結びつけるのは早計なようです。 やがて神経病が治ると大蘇(病気が回復すること)の号を用いたそうで、この頃から歴史画を制作し始めたようです。そしてその後、美人画や歴史、物語、上下2枚継のシリーズなどを発表し、世間に認められていったようです。晩年には「風俗三十二相」や今回の「月百姿」を残し、明治25年(1892年)に没しました。 その門弟には水野年方もいて、鏑木清方や伊東深水などにも繋がっていきます。
 参考記事:清方/Kiyokata ノスタルジア (サントリー美術館)

ここには晩年の「月百姿」がずらっと並んでいました。

月岡芳年 「月百姿 鳶巣山暁月 戸田半平重之」 ★こちらで観られます
長い槍を持ち左手で遠くを見る仕草をしている甲冑の武者を描いた作品です。周りには幟が立ち、合戦のさなかのようです。満月が浮かぶ中で様子を見渡しているのかな? 背中にさした武器?と槍が絵の枠線を飛び出して描かれているのがだまし絵のような面白さがありました。こういうところは国芳から引き継いだものかな?

月岡芳年 「月百姿 読書の月 子路」 ★こちらで観られます
中国風の山と満月を背景に、大きな袋を肩にかけて大きな笠を腰につけた中国風の人物が右手で本を広げて読んでいます。この人は孔子の門弟の子路らしく、立派なひげをしていますが身なりは貧しそうで、仕事帰りのような感じでした。真剣に学んでいる顔をしていて、その表情と淡い色合いが寡黙で静かな様子を伝えてきました。…と、wikipediaでは軽率な人だったような事が書いてありましたがw
 参考リンク:子路のWikipedia

この辺には竹取物語や阿倍仲麻呂(安倍仲麿)の「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも」の詩を題材にした作品などもありました。

月岡芳年 「月百姿 悟道の月」 ★こちらで観られます
空に浮かぶ満月を見上げて指を指している布袋らしき人物が描かれた作品です。大きな袋をクッションのようにして寄りかかり、楽しそうな顔をしていました。この辺にあった他の作品に比べるとコミカルで柔和な印象を受けました。

月岡芳年 「月百姿 月のものくるひ 文ひろけ」 ★こちらで観られます
橋の上で長い手紙を広げている着物の女性を描いた作品です。風が強いのか、文はビリビリになりながら舞い上がっています。それを観ている女性は物憂げそうで悲しい印象がありました。着物と空の色合いが美しいですが、月は雲にでも隠れているのか見当たりませんでした。

月岡芳年 「月百姿 石山月」 ★こちらで観られます
満月と険しい岩山に向かった廊下(バルコニー的な所)で文台に肘をついて座る紫の着物の女性を描いた作品です。表情は夢想するようでどこか楽しそうにも見えました。

月岡芳年 「月百姿 霜満軍営秋気晴 数行過雁月三更 謙信」 ★こちらで観られます
陣の中で椅子に腰掛けている、白い頭巾と豪華な陣羽織を羽織った鎧姿の上杉謙信です。振り返って空を見上げていて、その視線の先には満月を背景に編隊を組んで飛ぶ雁の姿がありました。配置や色合いが面白く感じられ、風流な雰囲気がありました。

このシリーズにはいくつか武将を描いた作品もあり、秀吉を描いた作品もありました。

月岡芳年 「月百姿 金時山の月」 ★こちらで観られます
山に一部が隠れた満月を背景に、真っ赤な肌で丸々とした体の金太郎がしゃがむような姿勢をして、猿とウサギが相撲を取っているのを見物しています。猿とウサギは小さめで何とも可愛らしい姿です。金太郎はそれを慈愛のような表情でみつめていました。微笑ましい光景に思います。

月岡芳年 「月百姿 むさしのの月」 ★こちらで観られます
大きく描かれた満月の下、草むらの中のキツネを描いた作品です。振り返るようなポーズをしていて、じっとしている感じです。 手前には川が流れ、全体的に静かな雰囲気を感じました。


ということで、月をテーマにしているはずが千差万別の題材であったので小展ながらも楽しむことが出来ました。月岡芳年も国芳のウィットを引き継いでいることが分かり、非常に参考になりました。これは今後の鑑賞の際にも役立ちそうです。もうすぐ終わってしまいますので、ご興味がある方はすぐにでもどうぞ。

おまけ:
私は見れず仕舞いになりそうですが、太田記念美術館では2011/8/26まで、歌川芳艶の展示を開催しています。歌川芳艶も国芳の弟子なので月岡芳年とは兄弟弟子となります。こちらも時間のあるかたはチェックしてみると面白そうです。
 参考リンク:「歌川芳艶~知られざる国芳の門弟」の公式サイト
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No title
こんにちわ!
 浮世絵をじっくり見たい時は良い美術館で気にいってます。 「石山月」は私も好きな作品で、紫式部が源氏物語を構想中の絵らしいですよ。
  
Re: No title
>だまけん
コメント頂きありがとうございます^^ ここは空いていてじっくり観ることができますね。

>「石山月」は私も好きな作品で、紫式部が源氏物語を構想中の絵らしいですよ。
なるほど、考えているところなんですね。実際にこういうところで書いていたんでしょうかねえ。
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