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草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展 【ワタリウム美術館】

つい今日のことですが、ワタリウム美術館で「草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展」を観てきました。色々とネタを溜め込んでいますが、前回ご紹介したカナダ大使館から1駅のところにあるので、このタイミングでご紹介しておこうと思います。

P9030463.jpg P9030464.jpg

【展覧名】
 草間彌生 ボディ・フェスティバル in 60's 展

【公式サイト】
 http://www.watarium.co.jp/exhibition/index.html

【会場】ワタリウム美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】外苑前駅、表参道駅など


【会期】2011年8月6日(土)~11月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間50分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
夕方にいったせいか、若いお客が散見するものの思ったより空いていて自分のペースで観ることができました。

記事を書くにあたって調べてみたのですが、意外にもこの美術館をご紹介するのは初めてですw (というか現代アート系の美術館の記事は極端に記事が少ないような気もします^^;) 今までも行こうと思った展示はいくつかあったのですが、いつも逃していました・・・。しかし今回は流石に見逃せなかったので、早いところ足を運んで見ました。

さて、この展示についてですが、日本が誇る現代アーティストの草間彌生の1960年代の作品にフォーカスした内容となっています。以前、森美術館で草間彌生の展示をやった記憶がありますが、東京で個展をやるのは久々なのでは??
幼い頃から統合失調症を病み、それに対抗するために絵を描いていた草間ですが、学生時代には京都市立美術工芸学校で日本画などを学び、その後何度かの個展を開くなど国内で活躍しはじめます。そしてニューヨークのビエンナーレに紹介されたのをきっかけに1957年11月にアメリカに渡り、1960年代はアメリカで活動していくことになりました。当時は今ほどアメリカにいくのは容易ではなく、外貨の持ち出しにも制限があったようで、草間は現地で売るために着物60着と絵2000枚を持っていったそうです。展覧の最初にはその頃の写真48枚の映像を流していました。
アメリカでは数々の有名アーティストと交流を持っていく草間ですが、どうしても女性画家のジョージア・オキーフに会いたくて、水彩画を同封した手紙を送ったそうです。返事は来ないだろうと思っていたようですが、激励の手紙が届いて感激したそうです。また、ニューヨークのオフィス街の一角にアトリエを構えた草間のところに、隣のビルに住んでいた無名時代の抽象画家サム・フランシスが訪れてきた際、コーヒーを出したらミルクが欲しいと言われたものの、コーヒー以外に何も食べ物は無かったという極貧生活のエピソードも紹介されていました。
 参考リンク:
  草間彌生のwikipedia
  ジョージア・オキーフのwikipedia
  サム・フランシスのwikipedia

<2階>
まず、展覧会最初の2階は「無限の網」という作品が2点並んでいます。これは白地に灰色の水滴というか水玉のようなものが描かれ、所々に白い絵の具が厚塗りされています。自伝によると、「絵の構成を無視して、中心が無い常動作用からくる反復のもたらす単調さは見る人を当惑させ、暗示と静謐は精神を無の眩暈の中に誘う」とのことでした。確かに見ていると意味とか考える以前に虚無感を感じると言うか、一種のゲシュタルト崩壊的な、あれ?何見てるんだっけこれ?という感じになってきましたw
また、この辺には当時の作品の映像などが展示されていました。

1959年にはニューヨークで初の個展を開き、その後もいくつかの展覧会を開いたようで、かのアンディ・ウォーホルも来て、素晴らしい!と賞賛してくれたようです。自伝によると、その後発表されたウォーホルの作品の中には草間の影響を感じさせる作品があったのだとか。
 参考リンク:アンディ・ウォーホルのwikipedia

少し進むと「終わりなき愛」という作品がありました。これは背丈ほどの高さがあり、下の方は鏡、上の方は形の箱のような形の作品で、表面にびっしりと水玉模様の突起のようなものがついています。また、長方形ののぞき穴が開いていて、その中を覗き込むと中は鏡合わせとなっていて、箱の底に置かれた水玉模様の突起が無限のごとく広がる風景となっています。草間の語る自作の特徴から察するに、この突起は男性器を模したものかな? 草間作品にはよくこの形が出てきます。また、草間と言えば水玉も真っ先に思い浮かぶので、その両方があるこの作品は草間の世界観がよく出ているように思います。

この辺の壁には体に水玉か斑のような模様をペイントした人間や人形の写真が並んでいました。自伝によると、水玉や男性器を沢山描いているのは恐怖感を表現の対象にしているためのようで、沢山描くことでその表現に埋没させて消滅させると考えているようです。ちょっとグロい感じがする作品もありますが、赤が多く使われているせいか女性らしい華やかさもあるような気もします。そこにサイケな雰囲気が混じったような・・・。

2階の奥には「草間の自己消滅」という23分の映像作品がありました。流石に全部は見ていませんが、ニューヨークの町を舞台に様々なシーンで水玉が使われていました。また、この映像の前には水玉模様のクッションがついた椅子も無数に置かれています。


<3階>
続いて3階は、ガラス張りで2階から吹き抜けとなっていて、映像のあった部屋の上部に張られた作品(の写真)を観ることができます。そして、壁には「ナルシスの鏡」というインスタレーション作品の大きな写真が貼られていました。これは1500個ものミラーボールの中で、全身赤の服(全身タイツみたいな)を着た草間彌生が手を広げて倒れている様子が写っています。この写真は1966年のヴェニス・ビエンナーレの中庭に展示されていたそうで、当時の映像も流していました。解説によると、美術界の商業主義を批判して展示中に作品を1つ12000リラ(約2ドル)で売るというパフォーマンスをしたそうです。これはビエンナーレの事務局に中止指令を受けたそうですが、この頃からパフォーマンスを行うようになったようでした。

3階の奥には映像があり、自分で作詞作曲した歌を歌う作品が流れていました。万華鏡のように変わっていく背景を背に、赤地に白と黒の水玉模様の服を着て、赤いかつらをつけた草間(やや歳をとった感じ)が出てきて歌います。その歌詞は日本語でしたが私には難かしくてどういう意味かよくわかりませんでした。 また、その後に自分自身に花を生けていくような映像が続き、ずっと目を見開いているのがちょっと怖かったw こちらも勿論背景は水玉(ピンク色)でした。


<4階>
最後の4階にはエレベーター口の近くに回転しながら中央でフラッシュするシャンデリアの作品がありました。これはどういう意図かはわかりませんが、近くには死に関する考えについて述べている記述がありました。草間は死を恐れていたのですが、現代アート作家のジョセフ・コーネルに若い頃に助言を貰い、今ではコーネルが言ったように死は隣の部屋に行くようなものだと捉えているということです。また、いかに良い作品を作るかに心血を注いでいるかが分かるような言葉もありました。

そして展覧会の最後に今回一番驚いた部屋があります。ここは赤地の水玉模様が部屋中を覆っている部屋で、所々に鏡が配されていて部屋の広さ以上に広い空間のように錯覚します。また、部屋の中にはビニール製の大きな2つの風船?があり、徳利とソラマメのような形をしていました。この部屋は異世界に迷いこんでしまったような、草間の世界観をどっぷり楽しめました。


ということで、実際の作品は少なめでしたが、草間彌生独特の作風を堪能できたように思います。展示の方法も洒落てる感じがしたし、ありそうで中々無い機会だと思いますので、気になる方は観にいってみることをお勧めします。
1階と地下のミュージアムショップでは草間グッズも充実していました。ここはミュージアムショップも魅力の1つです。
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No title
こんにちわ!
 先月この展覧会に行きました。
 4階のインスレーションは、スーパーマリオのキノコに囲まれているよな気分でした。
 13日からTABLOIDギャラリーで開催の草間彌生の天覧きも面白そうです。
Re: No title
>だまけんさん
コメントありがとうございます。
確かにマリオのキノコは草間っぽいですねw 

>13日からTABLOIDギャラリーで開催の
情報ありがとうございます。
http://www.tabloidgallery.com/exhibitions/%e8%8d%89%e9%96%93%e5%bd%8c%e7%94%9f%e5%b1%95/
これも中々面白そうですね。今、世界で大きな個展をやってる影響なんでしょうね
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