関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展 (感想後編)【国立新美術館】

今日は前回の記事に引き続き、国立新美術館の 「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展 の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら


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まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 「モダン・アート,アメリカン ―珠玉のフィリップス・コレクション―」展

【公式サイト】
 http://american2011.jp/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/american/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室1E  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2011年9月28日(水)~12月12日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編では5章までご紹介しましたが、今日は6章から最後までご紹介しようと思います。

<第6章 都市>
第一次世界大戦をきっかけに、アメリカでもナショナリズムが高まり、都市が国家の象徴となったそうです。芸術家もマンハッタンの街路や高層ビルなど近代的な風景を求めたそうで、この章は都市をテーマにした作品が並んでいます。ロバート・ヘンライやジョン・スローンらアッシュカン・スクール(ゴミ箱派)の画家たちは都会派リアリズムを推進し、ヨーロッパのキュビスムや未来派の影響を受けた画家も都市を主体に活動していきました。また、直線的構図と平坦な色面、精密な描写を特徴とする「プレシジョニスト(精密描写派)」は人間や自然を画面から廃して近代建築の幾何学的形態に着想を得て制作していったようです。

ラルストン・クロフォード 「船と穀物倉庫 No.2」
3本の円筒と四角からなる工場と、その奥の船を描いた作品です。影らしき部分も含めて直線的で、色も均一で平坦な感じがします。単純化されていて現実感はなく、人っ子一人いないちょっと寂しい雰囲気となっていました。

チャールズ・シーラー 「摩天楼」
摩天楼のビルそのものを描いた作品で、写実的でどこか無機質な感じを受けます。規則正しく並ぶ窓や直線の多い幾何学性があり、色は平面的でした。

ステファン・ハーシュ 「ニューヨーク、ロウアー・マンハッタン」
幾何学的で単純な形を積み木のように並べて描いたマンハッタンの絵です。手前に黒い川があり、船が行き交っているのですが人の気配はありません。これも無機質なようでどこかシュールな感じすらする不思議な光景となっていました。

この辺にはエドワード・ブルーの「パワー」、エドワード・ホッパーの「都会に近づく」といった面白い作品もあり、私としてはこの章が最も楽しめました。

ジョン・スローン 「冬の6時」 ★こちらで観られます
画面の上の方に高架の駅に止まる列車が描かれ、絵の下の方には沢山の仕事帰りの人々でごったがえす町角が描かれています。空は暗い青に染まった夕暮れで街頭も灯っていて、郷愁を誘いました。また、人々の表情は楽しそうで活気と彼らの生活を感じる作品です。かなり気に入ったので、この絵はポストカードを買いました。


<第7章 記憶とアイデンティティ>
1910年~40年代はアフリカ系アメリカ人が南部から北部へ大移動した時代だそうです。アフリカ系アメリカ人の芸術家はその体験を伝えようとした一方で、1920~30年代はアメリカ国民の体験を描いた「アメリカン・シーン」の絵画が人気を博すなど、絵画にも民族的多様性が反映されるようになったようです。日本からの移民である国吉康雄も日本の伝統とアメリカのフォークアートを融合し、アメリカで最も知られるモダニズムの画家として活躍しました。ここにはそうした民族的多様性を感じさせる作品が並んでいました。

国吉康雄 「メイン州の家族」
朱色の壁に黒い屋根の家の前で、椅子に腰掛ける女性とその娘らしき少女、ハイハイする赤ちゃんが描かれた作品です。背景にも家があるのですが、いずれも幾何学的で遠近感や大小関係のバランスが奇妙で幻想的な雰囲気がありました。解説によると漆を思わせる朱や象牙色などは日本の伝統が反映され、構図は19世紀フォークアートのメモリーポートレートに着想を得ているとのことでした。

マージョリー・フィリップス 「ナイト・ゲーム」
野球のナイターを描いた作品です。1塁側の低めの席から観たような視点で、今まさにピッチャーが球を投げようとしている瞬間となっています。それを迎え撃つバッターはじっと力を貯めているようで緊張感がありました。解説によるとこのバッターは伝説の打者ジョー・ディマジオだそうです。 煌々としたライトやたくさんの人が入ったスタンドなど、楽しげな雰囲気が伝わる作品でした。

この辺には東郷青児美術館の常設でよく見かけるグランマ・モーゼスの作品などもありました。

アラン・ローハン・クライト 「ハモンド通りのパレード」
レンガ造りの建物を背景に、鼓笛隊がパレードしている様子を書いた作品です、その沿道には沢山の人々が見物しているのですが、鼓笛隊も含めて描かれているのは大人も子供も黒人ばかりです。アメリカにはこういう町があるのかな? やや単純化されていますが、賑わいと活気に満ちた作品でした。

ジェイコブ・ローレンス 「大移動」シリーズ ★こちらで観られます
アメリカ南部から北部を目指した黒人の大移動を描いたシリーズです。単純化された平面的な色彩で描かれていて、展示されていた5枚は旅の苦難を感じさせるものが多いように思います。特に、「私刑も行われた」という作品は、横一直線の枝に紐が吊り下がった木と、その近くで背を向けてうずくまっている人の姿が、タイトルから過酷な状況を想像させ、恐ろしいものを感じました。


<第8章 キュビスムの遺産>
ピカソとブラックが築いたキュビスムは1913年に開催された国際現代美術展(通称:アーモリー・ショウ)で衝撃を持って迎えられたようで、保守派や大衆は非難したそうですが、若い画家の一部は積極的に学んだようです。このコーナーにはそうしたキュビスムの特徴を感じさせる作品が並んでいました。

カール・クノス 「海について」
まさにキュビスムらしい抽象画です。海を描いているのかすら分からないほど抽象的ですが、幾何学的で色の面で分けられた画面となっていて、多面的にものを捉えているような感じでした。

このコーナーはキュビスムそのものと言った作品もあれば、幾何学性を取り込んだ具象的な作品も並んでいました。

スチュアート・デイヴィス 「卵泡立て器 No.4」 ★こちらで観られます
卵の泡立て器や扇風機、手袋などが描かれているそうですが… それを聞いても何を描いたのかよくわかりませんw しかし、リズムのある形や色の取り合わせが音楽的で、どこかカンディンスキーの傑作を彷彿とするような雰囲気がありました。色のせいか楽しげな絵に見えました。


<第9章 抽象表現主義への道>
1930年代末期までに抽象表現は形態と色彩による純粋で普遍的な視覚言語として注目されるようになったそうです。抽象画家は哲学や数学、科学、心理学、宗教、音楽などに興味を示し、作品に取り込んでいきます。ここには様々な表現の作品が並んでいました。

マースデン・ハートレー 「野ばら」
深い赤の背景の前に置かれた野ばらの花束を描いた作品です。水色の包に入れられていて、赤、ピンク、白といった花が描かれています。結構具象的で、色の取り合わせが強い温かみを感じる作品でした。

ジャクソン・ポロック 「コンポジション」 ★こちらで観られます
ポロックがスタイルを模索していた時代の作品で、有機的で奇妙な形のものがいくつか描かれています。抽象なのか具象なのかもよくわかりませんが、キノコのような原始生命を描いた雰囲気を感じました。解説によると、キュビスム、シュルレアリスム、心理学者のユングなどに影響を受けているそうです。

ミルトン・エイヴリー 「黒い海」
黄色に近い黄土色の砂浜と、白い波、黒い海を描いた作品です。画面の3/4くらいは砂浜になっていて、抽象的で非常に単純化されています。黒い海のせいか砂浜が異様に明るく感じられました。


<第10章 抽象表現主義>
最後のコーナーも抽象画のコーナーです。1940年代になると、若い前衛画家たちは抽象的かつアメリカ固有の新しい視覚言語を探し求めていたそうです。抽象表現主義が登場すると、ニューヨークはモダンアートの重要な拠点となっていきました。

マーク・ロスコ 「無題」 ★こちらで観られます
オレンジの四角と黄色の横長の四角を上下に並べた作品です。背景は紙の色そのものの茶色となっています。じわっとにじむような色合いで、燃え立つような雰囲気を受けました。ロスコにしては珍しく小さい作品だと思ったら、病気で医者に大作を止めたれていた頃の作品だそうです。

最後の部屋は大型作品が並ぶ部屋でした。

リチャード・ディーベンコーン 「少女と植物」
抽象画が並ぶ中でこれは具象的な作品で、部屋の中で椅子に腰掛け背を向けている女性が描かれています。黄色い壁や大きな植物の入った花瓶?など、やや抽象的な感じも受けるのですが、この画家は抽象から具象に立ち戻ったそうです。色の対比の強さや構図はよく練られているように思いました。

サム・フランシス 「ブルー」 ★こちらで観られます
青、オレンジ、赤、黄色などの色が面となって描かれている作品です。絵の具が垂れていたり飛沫が飛んでいてエネルギッシュな雰囲気があります。四隅などに余白があるのですが、これは東洋からの影響であると考えられているようです。そのせいか、一層色鮮やかに見えました。


ということで、日本では比較的馴染みの薄いアメリカの近代美術について流れを知ることが出来ました。ホッパーやオキーフなどは私の好みの画家であるので、それを観られただけでも満足です。平日であれば空いているようですので、気になる方は是非どうぞ。
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コメント
No title
こんばんわ~
 この展覧会に昨日行きました。金曜の夜も空いてました。
 エドワード・ブルーの「パワー」が良かったので、この画家をグーグルで検索しましたが、なかなか見つかりません。。。

 
2011/10/08(土) 19:05 | URL | だまけん #-[ 編集]
Re: No title
>だまけんさん
コメント頂きありがとうございます。
金曜の夜も空いていましたか。やはり誰でも知ってる画家の名前がないとこれくらいなんでしょうか。
「パワー」は後光がさしてるような感じで面白かったです。と、試しにググってみたら確かに出てきませんね。
ちょっと素性を知りたい気持ちになりますよね。4~6章のあたりだけでももう一回観たいなあ。
2011/10/09(日) 01:07 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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