生誕100年記念 瑛九展 【埼玉県立近代美術館】
もう10日ほど前ですが、土曜日に埼玉県立近代美術館へ行って、「生誕100年記念 瑛九展」を観てきました。この展覧会はうらわ美術館との同時開催となっていて、私は先にこちらの展示を観ました。
→後日、うらわ美術館の展示も記事にしました。
参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)

【展覧名】
生誕100年記念 瑛九展
【公式サイト】
http://www.momas.jp/003kikaku/k2011/k2011.09/k2011.09.htm
【会場】埼玉県立近代美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】北浦和駅
【会期】2011年9月10日(土)~11月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_②_3_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていてゆっくりと観ることが出来ました。
さて、今回の展示は瑛九(えいきゅう、Ei-Q)の個展となっています。宮崎生まれで、埼玉の浦和で活動したことから、宮崎と浦和(さいたま市)での開催となっているようです。この埼玉県立近代美術館にも埼玉ゆかりの画家として常設に作品が並んでいることもありますが、これだけ大規模な展覧は初めて観ました。
瑛九のことを知らない方も多いかと思いますので、まず簡単に経歴を紹介すると、本名は杉田秀夫で、宮崎市に1911年に生まれました(今年でちょうど生誕100年) 子供の頃から絵画を学び、10代の頃には美術評論や写真評論を発表し、フォトグラムの作品も試みていたようです。1936年には瑛九として美術界にデビューし、油彩、写真、コラージュ、水彩、ガラス絵など様々な分野で創作活動していきました。1951年に浦和に転居してからは版画にも取り組み、晩年は点描の油彩画の制作に没頭しました。(私が瑛九と聞いてまっさきにイメージするはこの晩年の作風です)
詳しくはいつもどおり各章ごとに… と、言いたいところですが、今回の展示は非常に変わっていて8つのトピックを埼玉県立近代美術館とうらわ美術館で4つずつ取り上げ、埼玉県立近代美術館はTOPIC 5、2、6、8という順番になっています。時系列でもないので、理解するには難解な印象を受けます。(作品も抽象的なので、今まで観てきた展覧会の中でも難しい部類だと思います) その為、今回は展覧会の途中で体系的に理解するのは諦めて、感じたことをメモしてきましたw ちょっと薄い感想になるかもしれませんがご容赦ください。
<TOPIC 5 瑛九の言葉>
まずは瑛九の言葉が沢山壁に書かれていた章です。瑛九は権威主義に抵抗し自由と独立の精神で制作することを目指したそうで、「ふるさと社」や「自由美術家協会」、自ら主催した「デモクラート美術家協会」などの設立にも参加したそうです。ここにはそうした精神を感じさせる言葉と共に作品が紹介されています。
5-1 瑛九 「タバコを吸う女」
ボール紙に描かれた油彩画で、ざらついて単純化された女性像です。女性はタバコを持っていて、画面は暖色系の茶色っぽい色合いで、やや素朴な雰囲気がありました。解説によると、瑛九はこの絵について「画面の上にもう少し戦いが無ければ発展性は生まれないと言ってまとまった絵にする必要はないと感じていたようです。
この辺にはシュルレアリスムの影響を感じる写真や、キュビスムともまた少し違った抽象などもあり、色の強い感じを受けました。
5-4 瑛九 「鳩」
非常に単純化された有機的な形の複合体のような作品です。黒丸と三角で鳩の顔らしきものを描き、紫やオレンジ、黄色などの色が強く平面的な感じがします。解説によるとこれは1949年頃の作品だそうで、写実から半抽象へと向かった時代の作品のようでした。
<TOPIC 2 エスペラントと共に>
瑛九は世界共通言語として作られた「エスペラント語」を生活の一部に取り入れていたそうです。人類が同じ立場に立つ土壌から美術や社会について考える道へと進んだとのことで、ここにはエスペラントに関する作品が並んでいました。
参考リンク:エスペラントのWikipedia
2-1 瑛九 「ザメンホフ像」 ★こちらで観られます
ポーランド出身の眼科医でエスペラント語の創始者であるザメンホフの肖像です。メガネで白い髭をたくわえ、タキシードを着ている姿で描かれ、襟章に星印があるのはエスペラントのバッチだそうです。写実的な画風で、やけにボコボコした表面でヒビ割れているように見えました。眼の光が強く意志の強そうな肖像でした。
隣にはザメンホフ祭のメンバー(日本人のみ)と一緒に記念撮影されたこの絵の写真が展示されていました。また、近くにはエスペラント辞典、旗、手紙、エスペラント会の写真などもあります。
2-3 瑛九 「読書」
窓辺で本を読んでいる紫の服の夫人を描いた作品です。兄と共にエスペラント語で会話する瑛九を見て興味を持ったらしく、瑛九に学んだそうです。ちょっと神経質そうな痩せた感じもするかな。写実的で、青いテーブル、紫の服、窓の外の緑など色の取り合わせが強く感じられる作品でした。
<TOPIC 6 転位するイメージ>
瑛九は写真的なメカニズムやプロセスを絵画や版画と交錯させながら、多様なイメージを連鎖的に生み出したそうです。この章では写真と絵画の関わりを感じさせる作品が並んでいました。
6-30 瑛九 「子供」
円や長方形など単純な形を並べて描いた子供の顔です。と言っても、抽象的でむしろライオンみたいな感じに見えますがw 原色を使っていて色もリズミカルな感じでした。この作品の隣には似た形の紙を切り抜いた型があり、それを使って描いた素描もありました。フォトデッサンのイメージと油彩画のモチーフが共通している例のようです。
この近くにはピカソを思わせる作品もありました。また、顔や目を題材にした抽象的な作品が並び、色鮮やかな油彩と白黒のフォトデッサンが比較するように展示されていました。
解説によると、この時代の写真はフィルムではなくガラス板を使っていたらしく、フォトデッサンはそのガラス板に描画しているようです。写真の原盤も3点もあります。フォトデッサンは写真だけれど現実とは思えない不思議な世界で、マン・レイのレイヨグラフを思い起こします。
参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)
6-22 瑛九 「乱舞」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品で、沢山の人影が連なって踊っているように見える抽象的なフォトデッサンです。動きやリズムを感じ、写真とも絵画ともつかない幻想的な光景となっていました。
隣にはそれを作るために使った型紙と、同じ型を使った反転している作品、制作に使ったガラス棒などもありました。工程を連想させる興味深い展示方法です。
また、他の型紙ですが「ダンス」と「影」という連作作品も艶かしく動きのある表現で良かったです。
この辺は透過による転写を使ったフォトデッサンやエッチング、吹きつけを使った作品などもありました。有機的で幻想的な雰囲気の作品が多く、意味は分かりませんが面白いです。
6-6 瑛九 「題不明」
手の写真や足の写真を組み合わせたコラージュです。頭のあたりが手と足で、3本足のワンピースの人間のように見えなくもないかな。ちょっと不気味でシュールな印象を受けました。
この辺は眼や顔なども含め人体をコラージュした作品が並んでいます。グロい感じもしますが斬新に見えました。
6-15 瑛九 「題名不詳」
網目のような黒と灰色の背景と、その前に浮かぶ様々な色の円や四角を描いた抽象画です。背景の色のせいか、無機質な中に円が漂っているような印象を受けます。隣には似たような模様の型紙もあり、この作品とのイメージの相関を感じさせました。
6-61 瑛九 「カオス」
4枚セットの壁画のような作品です。有機的な形のものが沢山漂うように描かれています。不定形で色は淡く霧吹きしたようなおぼろげな色合いで、確かに混沌とした雰囲気です。 近くにいた子供が、ぐちゃぐちゃでわからない!と言ってましたが、大半の人はそう思うんじゃないかと思いますw ちょっと難解ですが色合いが面白い作品でした。
<TOPIC 8 点へ>
瑛九は晩年3年間に点描画を描いていて、ここにはそうした作品が並んでいます。私がイメージする瑛九の作風はこのコーナーそのものでした。
8-2 瑛九 「兄妹」
点描作品の原点と言える作品で、メガネの男性と女声が窓辺で会話しているような感じ光景が描かれています。淡い色彩で黄色が多く、柔らかい印象を受けます。点描ですが、スーラやシニャックほど科学的分析はせずに日本人の詩情を活かしているとのことでした。
瑛九はこの作品を描いた頃、自作への疑問や不安を感じて印象派からやり直すと言ってたそうです。
8-12 瑛九 「黄と白と青の編目」
幾何学的な形が並んだ抽象画です。網目のように四角が並んでいたり、円があったりと、どこかの街の航空写真のような整然とした雰囲気がありました。色も様々でリズムを感じます。
8-13 瑛九 「作品」
青、黄色、水色の帯と、中心に赤の円が描かれた作品です。点描がモザイクのようになっていて、宇宙的なイメージ(木星みたいな)に思いました。
この近くにも色が近い似たような作品もあり、ひたすらに斑点の絵が続きます。
8-20 瑛九 「嵐」
左上から沢山の斑点が放射されているかのように見える抽象画です。筆跡が残っているのでそう感じさせるのかな。色も様々で、不定形ながらも勢いを感じさせました。まさに嵐のような作品です。
この辺には花や花火といったタイトルの作品が並んでいますが、どれも似た雰囲気の点描となっています。
8-36 瑛九 「ブーケ(花束)」 ★こちらで観られます
点描だけで描かれた大きな作品です。対比的な色を重ねるように、細かい点が打たれています。ところどころに鮮やかな原色の円が浮かんでいて、まさに花束のような明るく華やかな印象を受けました。
この辺の作品はさらに点が細かくなっているのに反比例するかのように作品は大きめでした。
8-43 瑛九 「田園」
これも点描の大型作品です。周りの作品は完全に抽象的ですが、これはおぼろげながら離れて観ると黄色く染まった田園風景とその上の太陽に見えるように思います。色合いも美しく好みの作品でした。
最後は資料のコーナーで、スケッチ、型紙、吹き付け用のコンプレッサが並び、5分程度の映像もありました。
ということで、難解な構成となっていますが予想以上に良い作品が多くて楽しめました。安易に誰でも知っている画家や流派の展覧会を開くのではなく、地元の画家を研究していくような展覧会は非常に意義深いと思います。後日、うらわ美術館の展示も観てきましたので、そちらも近いうちにご紹介しようと思います。
参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
→後日、うらわ美術館の展示も記事にしました。
参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)


【展覧名】
生誕100年記念 瑛九展
【公式サイト】
http://www.momas.jp/003kikaku/k2011/k2011.09/k2011.09.htm
【会場】埼玉県立近代美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】北浦和駅
【会期】2011年9月10日(土)~11月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_②_3_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていてゆっくりと観ることが出来ました。
さて、今回の展示は瑛九(えいきゅう、Ei-Q)の個展となっています。宮崎生まれで、埼玉の浦和で活動したことから、宮崎と浦和(さいたま市)での開催となっているようです。この埼玉県立近代美術館にも埼玉ゆかりの画家として常設に作品が並んでいることもありますが、これだけ大規模な展覧は初めて観ました。
瑛九のことを知らない方も多いかと思いますので、まず簡単に経歴を紹介すると、本名は杉田秀夫で、宮崎市に1911年に生まれました(今年でちょうど生誕100年) 子供の頃から絵画を学び、10代の頃には美術評論や写真評論を発表し、フォトグラムの作品も試みていたようです。1936年には瑛九として美術界にデビューし、油彩、写真、コラージュ、水彩、ガラス絵など様々な分野で創作活動していきました。1951年に浦和に転居してからは版画にも取り組み、晩年は点描の油彩画の制作に没頭しました。(私が瑛九と聞いてまっさきにイメージするはこの晩年の作風です)
詳しくはいつもどおり各章ごとに… と、言いたいところですが、今回の展示は非常に変わっていて8つのトピックを埼玉県立近代美術館とうらわ美術館で4つずつ取り上げ、埼玉県立近代美術館はTOPIC 5、2、6、8という順番になっています。時系列でもないので、理解するには難解な印象を受けます。(作品も抽象的なので、今まで観てきた展覧会の中でも難しい部類だと思います) その為、今回は展覧会の途中で体系的に理解するのは諦めて、感じたことをメモしてきましたw ちょっと薄い感想になるかもしれませんがご容赦ください。
<TOPIC 5 瑛九の言葉>
まずは瑛九の言葉が沢山壁に書かれていた章です。瑛九は権威主義に抵抗し自由と独立の精神で制作することを目指したそうで、「ふるさと社」や「自由美術家協会」、自ら主催した「デモクラート美術家協会」などの設立にも参加したそうです。ここにはそうした精神を感じさせる言葉と共に作品が紹介されています。
5-1 瑛九 「タバコを吸う女」
ボール紙に描かれた油彩画で、ざらついて単純化された女性像です。女性はタバコを持っていて、画面は暖色系の茶色っぽい色合いで、やや素朴な雰囲気がありました。解説によると、瑛九はこの絵について「画面の上にもう少し戦いが無ければ発展性は生まれないと言ってまとまった絵にする必要はないと感じていたようです。
この辺にはシュルレアリスムの影響を感じる写真や、キュビスムともまた少し違った抽象などもあり、色の強い感じを受けました。
5-4 瑛九 「鳩」
非常に単純化された有機的な形の複合体のような作品です。黒丸と三角で鳩の顔らしきものを描き、紫やオレンジ、黄色などの色が強く平面的な感じがします。解説によるとこれは1949年頃の作品だそうで、写実から半抽象へと向かった時代の作品のようでした。
<TOPIC 2 エスペラントと共に>
瑛九は世界共通言語として作られた「エスペラント語」を生活の一部に取り入れていたそうです。人類が同じ立場に立つ土壌から美術や社会について考える道へと進んだとのことで、ここにはエスペラントに関する作品が並んでいました。
参考リンク:エスペラントのWikipedia
2-1 瑛九 「ザメンホフ像」 ★こちらで観られます
ポーランド出身の眼科医でエスペラント語の創始者であるザメンホフの肖像です。メガネで白い髭をたくわえ、タキシードを着ている姿で描かれ、襟章に星印があるのはエスペラントのバッチだそうです。写実的な画風で、やけにボコボコした表面でヒビ割れているように見えました。眼の光が強く意志の強そうな肖像でした。
隣にはザメンホフ祭のメンバー(日本人のみ)と一緒に記念撮影されたこの絵の写真が展示されていました。また、近くにはエスペラント辞典、旗、手紙、エスペラント会の写真などもあります。
2-3 瑛九 「読書」
窓辺で本を読んでいる紫の服の夫人を描いた作品です。兄と共にエスペラント語で会話する瑛九を見て興味を持ったらしく、瑛九に学んだそうです。ちょっと神経質そうな痩せた感じもするかな。写実的で、青いテーブル、紫の服、窓の外の緑など色の取り合わせが強く感じられる作品でした。
<TOPIC 6 転位するイメージ>
瑛九は写真的なメカニズムやプロセスを絵画や版画と交錯させながら、多様なイメージを連鎖的に生み出したそうです。この章では写真と絵画の関わりを感じさせる作品が並んでいました。
6-30 瑛九 「子供」
円や長方形など単純な形を並べて描いた子供の顔です。と言っても、抽象的でむしろライオンみたいな感じに見えますがw 原色を使っていて色もリズミカルな感じでした。この作品の隣には似た形の紙を切り抜いた型があり、それを使って描いた素描もありました。フォトデッサンのイメージと油彩画のモチーフが共通している例のようです。
この近くにはピカソを思わせる作品もありました。また、顔や目を題材にした抽象的な作品が並び、色鮮やかな油彩と白黒のフォトデッサンが比較するように展示されていました。
解説によると、この時代の写真はフィルムではなくガラス板を使っていたらしく、フォトデッサンはそのガラス板に描画しているようです。写真の原盤も3点もあります。フォトデッサンは写真だけれど現実とは思えない不思議な世界で、マン・レイのレイヨグラフを思い起こします。
参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)
6-22 瑛九 「乱舞」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品で、沢山の人影が連なって踊っているように見える抽象的なフォトデッサンです。動きやリズムを感じ、写真とも絵画ともつかない幻想的な光景となっていました。
隣にはそれを作るために使った型紙と、同じ型を使った反転している作品、制作に使ったガラス棒などもありました。工程を連想させる興味深い展示方法です。
また、他の型紙ですが「ダンス」と「影」という連作作品も艶かしく動きのある表現で良かったです。
この辺は透過による転写を使ったフォトデッサンやエッチング、吹きつけを使った作品などもありました。有機的で幻想的な雰囲気の作品が多く、意味は分かりませんが面白いです。
6-6 瑛九 「題不明」
手の写真や足の写真を組み合わせたコラージュです。頭のあたりが手と足で、3本足のワンピースの人間のように見えなくもないかな。ちょっと不気味でシュールな印象を受けました。
この辺は眼や顔なども含め人体をコラージュした作品が並んでいます。グロい感じもしますが斬新に見えました。
6-15 瑛九 「題名不詳」
網目のような黒と灰色の背景と、その前に浮かぶ様々な色の円や四角を描いた抽象画です。背景の色のせいか、無機質な中に円が漂っているような印象を受けます。隣には似たような模様の型紙もあり、この作品とのイメージの相関を感じさせました。
6-61 瑛九 「カオス」
4枚セットの壁画のような作品です。有機的な形のものが沢山漂うように描かれています。不定形で色は淡く霧吹きしたようなおぼろげな色合いで、確かに混沌とした雰囲気です。 近くにいた子供が、ぐちゃぐちゃでわからない!と言ってましたが、大半の人はそう思うんじゃないかと思いますw ちょっと難解ですが色合いが面白い作品でした。
<TOPIC 8 点へ>
瑛九は晩年3年間に点描画を描いていて、ここにはそうした作品が並んでいます。私がイメージする瑛九の作風はこのコーナーそのものでした。
8-2 瑛九 「兄妹」
点描作品の原点と言える作品で、メガネの男性と女声が窓辺で会話しているような感じ光景が描かれています。淡い色彩で黄色が多く、柔らかい印象を受けます。点描ですが、スーラやシニャックほど科学的分析はせずに日本人の詩情を活かしているとのことでした。
瑛九はこの作品を描いた頃、自作への疑問や不安を感じて印象派からやり直すと言ってたそうです。
8-12 瑛九 「黄と白と青の編目」
幾何学的な形が並んだ抽象画です。網目のように四角が並んでいたり、円があったりと、どこかの街の航空写真のような整然とした雰囲気がありました。色も様々でリズムを感じます。
8-13 瑛九 「作品」
青、黄色、水色の帯と、中心に赤の円が描かれた作品です。点描がモザイクのようになっていて、宇宙的なイメージ(木星みたいな)に思いました。
この近くにも色が近い似たような作品もあり、ひたすらに斑点の絵が続きます。
8-20 瑛九 「嵐」
左上から沢山の斑点が放射されているかのように見える抽象画です。筆跡が残っているのでそう感じさせるのかな。色も様々で、不定形ながらも勢いを感じさせました。まさに嵐のような作品です。
この辺には花や花火といったタイトルの作品が並んでいますが、どれも似た雰囲気の点描となっています。
8-36 瑛九 「ブーケ(花束)」 ★こちらで観られます
点描だけで描かれた大きな作品です。対比的な色を重ねるように、細かい点が打たれています。ところどころに鮮やかな原色の円が浮かんでいて、まさに花束のような明るく華やかな印象を受けました。
この辺の作品はさらに点が細かくなっているのに反比例するかのように作品は大きめでした。
8-43 瑛九 「田園」
これも点描の大型作品です。周りの作品は完全に抽象的ですが、これはおぼろげながら離れて観ると黄色く染まった田園風景とその上の太陽に見えるように思います。色合いも美しく好みの作品でした。
最後は資料のコーナーで、スケッチ、型紙、吹き付け用のコンプレッサが並び、5分程度の映像もありました。
ということで、難解な構成となっていますが予想以上に良い作品が多くて楽しめました。安易に誰でも知っている画家や流派の展覧会を開くのではなく、地元の画家を研究していくような展覧会は非常に意義深いと思います。後日、うらわ美術館の展示も観てきましたので、そちらも近いうちにご紹介しようと思います。
参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)
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ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 【パナソニック汐留美術館】 (12/19)
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鈴木其一・夏秋渓流図屏風 【根津美術館】 (12/16)
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【根津美術館】の紅葉 2021年11月 (12/14)
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カフェラヴォワ 【新宿界隈のお店】 (12/12)
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川瀬巴水 旅と郷愁の風景 【SOMPO美術館】 (12/10)
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- うさぴょん:キヨノサチコ絵本原画の世界 みんな大好き!ノンタン展 【松屋銀座】 (03/21)
- 21世紀のxxx者:川豊 【成田界隈のお店】 (03/04)
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