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法然と親鸞 ゆかりの名宝 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

今週の水曜日に有給休暇を取って東京国立博物館で法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」を観てきました。この展示には前期・後期で作品の入れ替えがあったようですが、私が観たのは最終週の内容でした。情報量の多い展示でしたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

PB291994.jpg

【展覧名】
 法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」

【公式サイト】
 http://www.honen-shinran.com/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1404

【会場】東京国立博物館 平成館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2011年10月25日(火)~12月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日12時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
快晴の中12時頃に行ったのですが、平日にも関わらず入場制限を行なっていて、外で30分ほど待っての入場となりました。やはり展覧会は会期末が混むものです…。
PB292001.jpg

列はこんな感じです。
PB292002.jpg


中に入ってもかなり混んでいて、特に平日だったせいか年配が多く、何度もぶつかられてしまいました。周りが見えない人が多くていつもの倍は疲れましたw

さて、今回の展示は浄土宗の開祖である法然上人の800回忌と浄土真宗の親鸞聖人の750回忌を記念したもので、2人の関わりや活動などをテーマにしたものとなっていました。私には浄土宗・浄土真宗と「名宝」という言葉の組み合わせがいまいちピンとこなかったので行くのが遅くなったのですが、まあ大体は思った通りの内容だったかなと。本願寺のような大寺院に寄進された品も出るのか期待したのですが、それはほとんどなくこの2人と2つの宗派にフォーカスした硬派な展示でした。その分、歴史的に貴重な品々が並んでいましたので、各章ごとにご紹介しようと思います。なお、展示物の入れ替えがあるので、お目当ての作品が在る方は出かける前に作品リストをご確認することをお勧めします。
 参考リンク:「法然と親鸞 ゆかりの名宝」  作品リスト


<第1章 人と思想>
まず最初に、「二河譬(にがひ)」という話について紹介されていました。これは往生者が西方(極楽浄土)に向かう時に目の前に現れる2つの底なしの河で、1つは南側の火の河でこれは憎しみを表しています。そしてもう1つは北側の波が荒巻く水の河で、貪りを表しているそうです。それぞれ果てしなく続いているのですが、2つの河の間には15cmほどの白い道があり、これは清浄なる信心を表します。東岸の娑婆(この世)から西岸の極楽浄土までは100歩ほどだそうですが、この白道には絶え間なく波や炎が襲い、群賊や悪獣といった邪悪な者たちも襲ってくるそうです。往生者には白道しか逃げ道が無く、渡ろうとすると、東側からは「この道を行きなさい」という声(釈迦の象徴)が聞こえ、西岸からは「私が守るから来なさい」という声(阿弥陀の象徴)が聞こえるそうです。後ろから追ってきた群賊たちは「この未知は険悪だから戻って来い」と誘惑するそうですが、これを渡りきれれば極楽浄土にたどり着くことができるそうです。
そして、入口にはこの話を再現したものがあり、京都の光明寺の二河白道図の大きなコピーと、その前の床に赤と青に色分けされたカーペットが広がり、二河を表現していました。そして、真ん中には白道もあるのですが、平均台くらいの太さでした。もちろん、再現だけでなく二河白道を描いた作品もすぐに出てきます。

少し進むと法然と親鸞の生まれから活動までをざっくりと紹介したコーナーです。まず、法然についてですが、法然が比叡山にいた頃、夢の中で唐の僧 善導に出会い、阿弥陀仏の本願の行である念仏によってあらゆる人々が救われるということを確信したそうです。43歳で善導の教えと出会った法然は比叡山を下って布教を始め、次第に民衆に広まって行きました。
一方、親鸞は法然がその確信に至る少し前に生まれ、やがて法然と同様に比叡山で修行を積んだ後、下山して聖徳太子が開いたとされる京都の頂法寺の六角堂にこもります。その時に夢で救世観音が白衣の僧の姿で現れお告げを授けたそうです。そして、親鸞が29歳の時に法然(69歳)を訪ね、専修念仏に帰することを決意しました。
 参考記事:番外編 京都旅行 比叡山延暦寺

しかし、2人の念仏の広がりは既存の仏教団体の脅威となり、その為に幕府や朝廷から弾圧されるようになります。そしてついに法然は四国へ、親鸞は越後に流罪となりました。 (2人が一緒に活動したのは6年程度のようです) 法然は流罪の5年後に彼の地で80歳の生涯を閉じましたが、親鸞はその後に赦免され関東で20年ほど布教を進め、晩年は京都に戻って90歳で亡くなるまで指導に励んだそうです。
最初のこの章ではその姿や教えに関しての内容となっていました。

16 「二河白道図」
先ほどご紹介した二河白道を絵にした作品です。これは善導の譬え話が元になったもので、左に火の河、右に水の川が流れ、その中には欲にまみれている人々などが描かれています。下の方には現世で様々な苦しみに合う様子、上には極楽浄土で橋のあたりに阿弥陀三尊らしき仏もいました。教えをよく表しているように思いました。

3 「法然上人像(鏡御影)」
数珠を持った法然の肖像で、黒い法衣をまとっています。これは鏡御影(かがみのみえい)という通称があり、門弟が描いた肖像をみた法然が、自ら鏡を見ながら頭頂部を描き直しているそうです。そのせいか、頭の上が平らな感じの特徴がよくわかりました。この後に出てくる法然も大体この姿となっています。

この辺には法然の肖像が並んでいる他、法然が結縁した1500人の書状や説話をまとめた伝記、親鸞による写本なども並んでいました。

1 「法然上人坐像」
数珠を持った法然の坐像で、鎌倉時代に作られたものだそうです。微笑むような表情をしているのが印象的で、解説によると肉付きが良い展は肖像と同じだそうですが、若く見えるとのことでした。

9 「選択本願念仏集」
法然の教えが無くならないように、教えをまとめた本(の写本)です。弟子が書いたそうですが、阿弥陀仏を唱えると救われるというような根幹となる教えが書いてあるそうです。
この名前を見てだいぶ前に日本史でこの本の名前を習ったことを思い出しましたw

26 親鸞 「教行信証(坂東本)」 ★こちらで観られます
これは親鸞が60歳頃に書いた直筆の経典です。しかし、筆跡鑑定によると80歳頃までの筆跡があるそうで、何度も加筆・修正を行なっていたようです。中身は中国やインドのお経の解釈だそうで、漢文で描かれていました。これも非常に貴重な本です。

この辺には書状などが並んでいました。また、少し進むと「悪人正機説」についての解説もあります。これは、自分の力で善を積んで成仏することができない人、自己の煩悩や能力に絶望しているような悪人こそが阿弥陀仏の救済の対象になるという説です。(信者でない私にはちょっとわかりづらいのですが、以前読んだ本で医者が危篤の人間から救うのに似ていると解説していたのが分かりやすい例えでした) だったら悪人になったほうが得なんじゃないか!?と思う奴も出てくると思いますが、その点は故意に悪事を行うことを厳しく戒めているとのことでした。

21 専阿弥陀仏/賛覚如 「親鸞聖人影像(鏡御影)」 ★こちらで観られます
生前の親鸞を描いた水墨の肖像です。写実的に描かれ、特に頭は細かく描かれています。それに対して、体は一気に描いたような太い輪郭となっていて、大胆な感じです。解説によると、これは後から描いたのではないかとも考えられているようでした。また、立っている姿を描いたのはこれが唯一のようでした。

この辺りには他にも親鸞が書いた法然の言行録など自筆の本や親鸞の坐像などもありました。


<第2章 伝記絵にみる生涯>
法然と親鸞が生きた鎌倉時代には、各宗派の始祖や高僧の伝記絵が流行ったそうです。ここには2人の生涯と共にその伝記絵が展示されていました。

48 「法然上人形状絵図(四十八巻伝) 巻第六」
法然が比叡山を下りて教えを広め始めた頃の様子を描いた伝記絵です。部屋の中央で本を広げて話していて、軒先には様々な人が集まって聞き入っています。中にはのんびりしたり楽しそうにしている人もいて、明るい印象を受けました。ここでも法然の頭が平らに描かれているのも面白いです。

この少し先には法然が往生して仏が迎えに来る様子を描いた絵巻や、法然の一生を描いた絵巻などもあります。ガラスケースに入った作品は人が多すぎて観るのも困難なくらいでした。

62 詞書善如 「本願寺聖人親鸞伝絵(弘願本)」
親鸞の曾孫の孫が描いた作品で、比叡山を下りた親鸞が法然を訪れて2人で話している様子が描かれています。熱心に話しているような雰囲気が伝わって来ました。

63 康楽寺円寂、宗舜、詞書覚如 「本願寺聖人親鸞伝絵(康永本)」
親鸞の曾孫の覚如が74歳の頃に描いた伝絵で、やまと絵風に描かれています。屋敷の中の様子だけでなく、もみじや秋草、朝顔など絵としての要素も面白い作品です。解説によるとこの作品は本願寺系など後世の伝絵に大きな影響を与えたようでした。

71 隆円 「法然上人絵伝」
3幅セットの掛け軸で、隣に展示されていた掛け軸と合わせて全部で4幅対のようです。大きめで縦に何段かに場面ごとに分かれているのが非常にユニークで、いずれも屋敷の中の風景が並んでいました。ストーリー性がありそうで、これでセリフがあったら漫画のようかも。面白い作品です。

この先には7幅対の法然上人絵伝なども展示されていました。


<第3章-1 法然をめぐる人々>
続いては法然とその周りの人々に関するコーナーです。法然は弾圧が強まった頃に、門弟に対して行動を戒めた七箇条制誡を表明したそうで、そこには190人もの名前が連ねられたそうです。ここではそうした人々も紹介されていました。

この章の最初の辺りには有名な熊谷直実の持っていた「迎接曼荼羅図」や「熊谷直実自筆誓願状」という自筆の書状などがありました。

83 「阿弥陀如来立像」 ★こちらで観られます
法然の高弟である源智が1周忌に作らせた阿弥陀仏です。印(与願印かな?)を結ぶポーズで、澄んだ目をしています。所々に金色が残っていて元々は金色だったのではないかと想像しました。解説によると、この仏像からは様々なものが出てきたそうで、中には4万6千人の人の名簿もあったそうです。その多くは庶民のものだったようですが、そこには平清盛や源頼朝、将軍や天皇の名前などもあり、これは源智が書いたもののようでした。貴族も庶民も差別なく極楽に行けるということを示しているのかもしれません。

この辺には阿弥陀仏などが並んでいました。

90 「聖光坐像」
法然に8年間師事した弟子の坐像です。この弟子がその活動のほとんどが筑前・筑後・肥後などの九州西北部だったこともあり、その為に鎮西上人とも呼ばれるそうです。数珠を持ち、穏やかな表情を浮かべていて頭の形は上の方が尖ったような感じでした。
この隣にはその弟子の像も椅子に腰掛けた姿で展示されていました。


ということで、この辺で半分ですので今日はこの辺にしておきます。非常に混んでいる展示となっていて、恐らく、残りの会期もすべて混んでいると思いますので、行かれる予定の方はその点を考慮していくことをお勧めします。
次回は残り半分をご紹介しようと思います。


  → 後編はこちら



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