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法然と親鸞 ゆかりの名宝 (感想後編)【東京国立博物館 平成館】

今日は前回の記事に引き続き、東京国立博物館 平成館の 法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら

PB291997.jpg PB292000.jpg


まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」

【公式サイト】
 http://www.honen-shinran.com/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1404

【会場】東京国立博物館 平成館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)


【会期】2011年10月25日(火)~12月4日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日12時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
前半は法然の周辺の人々のコーナーまでご紹介しましたが、後半は親鸞の周辺の人々のコーナーからです。


<第3章-2 親鸞をめぐる人々>
越後に流された親鸞は1211年に赦免されたそうですが、その地に数年留まり、その後東国に布教して行ったそうです。ここには弟子や妻などに関する品も並んでいました。

96 親鸞 「浄肉文」
これは掛け軸で、出家者が食べていい肉と食べてはいけない肉を書いたものです。ふりがなが書いてあり、「肉食」などの文字は読めましたが他は難しくて読めませんでしたw 解説によると、この裏には妻帯に関する写本が書かれているそうです。親鸞は出家者の形式や身分に意味はないと考えていたようで、妻がいることを公言していたそうです。
この展覧会では特に言及していませんでしたが、肉食や妻帯などが法然の浄土宗と違うようです。

106 恵信尼 「恵信尼自筆書状類」
親鸞の妻である恵信が書いた書状です。恵信は夢の中で、法然は勢至菩薩、親鸞は観音菩薩の化身であると告げられたそうで、それ以来 親鸞は普通の方ではないと考えて仕えたということが書かれているそうです。

この辺には子孫や弟子の絵巻、坐像なども展示されています。

130 「一流相承系図」
これは親鸞の弟子たちの師弟関係を示した巻物です。肖像画が描かれ、そこに細い赤線でお互いの繋がりを示しているようです。何故こういうものが必要なのか疑問に思いましたが、これによって正しく親鸞の教えを伝えることを示し、門流の結束を強める役割があるようでした。

この近くには名前だけが家系図のように並んだ門流の系譜などもありました。


<第4章 信仰のひろがり>
最後は信仰に使われる品などのコーナーです。法然も親鸞も念仏を唱えれば救われるという教えであるため、造寺造仏の功徳を説いた既存の宗派と違い、仏像は規模が小さいのが特徴です。(これが私が中々展示を見に行こうとしなかった理由でもあります) 小さめの阿弥陀仏や来迎図などに祈るそうで、さらに親鸞は阿弥陀仏は造形化できない無量の光としたため、浄土真宗の寺院では中世に遡る彫像は極めて少ないそうです。その代わりに阿弥陀仏の名前を書いた「名号」や祖師像などがあるようで、ここにはそうした品が並んでいました。

140 「善導大師坐像」
法然に影響を与えた中国の僧の善導が椅子に座って手を合わせ、念仏を唱えている像です。その口は少し開いていて、昔は中から小さな阿弥陀仏が出ていたそうです。
隣には善導の立像もあり、口があいて少し上を見るような感じが共通しているように見えました。

149 「阿弥陀三尊坐像」
鎌倉6代執権の北条長時が浄土宗諸行本願業の僧 真阿を迎えて開いた浄光明寺の本尊です。諸行本願業というのは念仏以外にも善行を積むという考えで、念仏の宗派の中で先祖帰りしたような感じです。そのせいか、後に念仏以外の比率が増えて律と同化して消えていった宗派のようです。
この像は中央に大きな阿弥陀如来が蓮の上に座り、説法印という見慣れない印を組んでいます。(最初の看板の写真の仏像の印です)この説法印というのはこの世ではなく極楽浄土で組まれるもののようです。その印も珍しいですが、この像はかなりの大きさで、これだけ大きなものはこの宗派では珍しく、三尊がすべて坐像である点も珍しい特徴とのことでした。

この辺には法然が選んだ五祖の絵巻なども展示されていました。

165 親鸞 「十字名号」
掛け軸に漢字が書かれている書で、阿弥陀如来の名前が書かれているようですが、難しくて読めませんw 実際には「帰命尽十方無碍光如来(きみょうじんじっぽう むげこうにょらい)」という十字名号が書かれているそうで、これを信仰の対象にしているそうです。
この辺には「南無不可思議光如来(なむふかしぎこうにょらい)という九字名号などもありました。よく知られている南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)は六字名号というもののようです。
 参考リンク:名号本尊のWikipedia

この辺には阿弥陀を描いた絵に名号を書いた掛け軸なども並んでいました。

183 「聖徳太子立像」
若いころの聖徳太子の立像です。親鸞は聖徳太子ゆかりの六角堂にこもった際にお告げを受けたので、それに関係しているのかな? この像は手に香炉と杓を持ち奈良時代の格好をしています。着色されていて目に力があり、神像のような雰囲気がありました。

この辺には聖徳太子関連の絵も何点かありました。また、やや大きめの阿弥陀三尊像や、国宝の「当麻曼荼羅縁起」なども展示されています。

148 「刺繍九条袈裟貼屏風」
4曲の屏風に刺繍が貼られている作品です。左端の第4扇は剥がれてなくなっているようですが、残りの3扇は刺繍とは思えないほど緻密で精巧な絵となっています。仏や極楽の様子が描かれ、あちこちに鉤十字(卍の逆)のマークもありました。

この作品のアッた部屋は大きな掛け軸が何点かあります。

186 後鳥羽天皇ほか 「本願寺本三十六人家集(素性集・重之集・能宣集下)」
これは宗派や教えに関係するというよりは天皇から賜ったお宝という感じです。36人の和歌をまとめた本で、銀の波がうねるような背景に美しい雪のようなものが散らされ、その上に歌が詠まれています。非常に贅を尽くした紙で、これは白河上皇が60歳の祝賀の際に作らせたもので、本願寺が後奈良天皇から賜ったようです。この本がほぼ完全な形で残っているのは貴重なようでした。単純に見ても美しい本です。
なおこの作品は会期中に場面替えがあるようで、私が観たのは最後の期間でした。

174 覚如 「皇太子聖徳奉讃」
親鸞聖人の400回忌の際に作られた江戸時代の8幅セットの掛け軸です。巨大でありながら細部まで細かく描かれていてやまと絵風でした。親鸞の生涯を描いているようですが、その画面の大きさに圧倒されました。

154 「山越阿弥陀図」
大きめの掛け軸で、中央に2つの山の間から上半身だけ姿を出した阿弥陀仏が姿を出しています。その右に観音菩薩、左に勢至菩薩が雲に乗ってやってきて、山には四天王と2人の童子の姿もあります。阿弥陀は説法印を組んでいるのでここは浄土のようで、阿弥陀の背景には大きな満月、その左上隅には梵字の入った月輪がありました。解説によると、これは大日如来を示すそうで、真言密教との融合を見せているとのことでした。


ということで、貴重な品々が並んでいるのですが私には猫に小判だったかなw 4章は結構面白いものもありましたが、美術品よりは歴史的に重要なものが中心といった感じです。 たまに手をあわせて念仏を唱えている信者の方がいたので、恐らく信者の方には有難味がよく分かるのだろうと思います。
いずれにせよもうすぐ終わってしまいますので、気になる方はお早めにどうぞ。非常に混んでいるので時間はたっぷり取ったほうがよさそうです。


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Comment
No title
こんばんわ
ご紹介ありがとうございます。
って今回コンペには参加させていただきましたが・・・(涙)
次回の北京故宮も是非にぃ~<これも違いますけど(涙)
本館のお正月展示は ぐふっ
Re: No title
>σ(^○^)さん
コメント頂きありがとうございます^^ スマートフォンで返信したら文字化けしてしまいましたw

こちらは違ったようですが、人気がありましたね。歴史的に貴重な品々を観られてよかったです。
お正月の本館は楽しみにしています。今年も光琳の雷神風神なども観られそうですし。
また裏側のレポート楽しみにしています!
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