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奇想の絵師歌川国芳の門下展 【礫川浮世絵美術館】

この間の土曜日に、東京ドームの裏手にある礫川(こいしかわ)浮世絵美術館で「奇想の絵師歌川国芳の門下展」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていたようで、私が観たのは後期でした。

PC162369.jpg

【展覧名】
 奇想の絵師歌川国芳の門下展(芳年、芳幾、芳艶、他)

【公式サイト】
 http://homepage2.nifty.com/3bijin/menu_j.html

【会場】礫川浮世絵美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】後楽園駅・春日駅


【会期】
 前期:2012年11月1日(火)~11月25日(金)
 後期:2012年12月1日(木)~12月25日(日)

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

さて、今回の展覧会は没後150年を迎え盛り上がりをみせている歌川国芳の門弟たちの作品を集めた展示となっています。歌川国芳は自らの作品の素晴らしさだけでなく、親分肌で多くの弟子の可愛がり、弟子たちに慕われた絵師で、その流れは明治以降も脈々と続いていくことになります。この展示では師匠の影響を感じさせる作品などがありましたので、気に入った作品をいくつかご紹介しようと思います。

 参考記事:
  歌川国芳-奇と笑いの木版画 (府中市美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 前期:豪傑なる武者と妖怪 (太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想前編(太田記念美術館)
  破天荒の浮世絵師 歌川国芳 後期:遊び心と西洋の風 感想後編(太田記念美術館)


歌川芳虎 「[錦昇堂役者大首] 新洞左エ門娘夕しで坂東三津五郎 秀佳」
青地を背景に左を見る美人の胸から上だけの大首絵です。ちょっと上目遣いで色っぽい雰囲気がありました。この隣には背景の色が深くなった復刻版もあったので、人気があったのかな?

歌川芳春 「深川仮宅全盛揃 岡田屋内若人」
片膝を突いて座りながらキセルを持ち、やや振り返っている姿の沢山の簪をさした女性を描いた作品です。着物の模様や色が派手で、女性は楽しそうな表情をしています。このポーズが気に入ったのかわかりませんが、隣には同じポーズで違う場面の作品もありました。

この辺は主にこうした美人画が並んでいました。

月岡芳年 「おしやう吉三(小団次)、土佐得江門娘一とせ(歌女之丞)、木屋手代重三郎(羽左衛門)」
2枚続で、墓の前で争う2人の男と1人の女を描いた作品です。吉三と書かれた男は口をへの字にして何かを振り上げ、全身に龍の刺青をしています。もう1人の十三郎と書かれた人物は手を前に出し、やめてくれと懇願しているような感じです。そして2人右では背を向けた釣り目の女が笑っているような表情でした。3人はどういう関係なのかは分かりませんが、カラフルでちょっと怖いくらいのドラマチックなシーンとなっていました。特に襲う方の男の目はいっちゃってますw

この辺には月岡芳年の作品が何点かありました。
 参考記事:月岡芳年「月百姿」展 [後期](礫川浮世絵美術館)

歌川芳艶 「自来也越後妙高山の蟇を助け大蛇を撃つ図」
3枚続で、右に自来也(じらいや)と刀を持つ美女丸、もう一人名前がわからない男が描かれ、その下には竹槍を持ったカエルたちが左に向かって突進していきます。中央では沢山の蛇とカエルたちが戦っていて、その上に雲に乗った蝦蟇仙人の姿もあります。そして左には黒姫夜叉五郎と2人の男が蛇に巻きつかれたカエルを眺めているようでした。 どうやらこれは蛇退治の様子の絵らしく、ちょっとコミカルな感じもしつつ、ストーリーが伝わってくるように思いました。
こういう妖怪など出てくるのは師匠の国芳の譲りなのかな。想像力豊かに描いています。

月岡芳年 「芳年漫画 土蜘」
2枚続で碁盤に向かって突っ伏している感じの武士と、その後ろで身をくの字にして身体から蜘蛛の巣を出している女性が描かれています。この女性が土蜘蛛なのか怪しい雰囲気に見えました。だいぶピンチの場面です。
この隣には大江山の鬼退治の3枚続の作品もありました、こちらはすごい迫力でした。

歌川芳藤 「新坂さかなつくし」
1枚の中にところ狭しと沢山の魚とその名前が描かれた作品で、いわゆる「○○つくし」の典型といった感じです。たこ、さんま、たい、エイ、カレイ、車海老、ヒラメなどなど、数えるのも大変なくらいいます。ややデフォルメされているようにも思いますが、基本的には写実的に描かれていました。図鑑みたいだけどどこか洒落ているのが面白いです。

落合芳幾 「擬九星市川系譜 元祖 二代B」
上下に並んだ円形の中に描かれた、役者の顔だけの肖像です。上は目玉が丸く飛び出すように描かれた初代市川団十郎で、下は五右衛門のような頭をした2代目が描かれています。共に個性的な顔立ちで、特徴をデフォルメしたような感じがありました。
ここには擬九星市川系譜のシリーズ作品が並び、9代目までありました。

落合芳幾 「東京日々新聞第壱号」
これは絵が中心となった新聞らしく、包丁を振り上げて女の首を踏んでいる男が描かれています。下の女は男の足を掴み、必死にもがいているような感じです。男の挙げた包丁は東京日々新聞のタイトル部分を隠すように描かれ、画面から飛び出してくるような雰囲気がありました。


ということで、国芳の弟子たちも面白い作品を描いていたことがわかる展示でした。河鍋暁斎もあるかなと期待したのですが、今回はありませんでした。 とは言え、これだけ才能ある弟子がいるとは国芳の凄さがますます伝わってくるように思います。


おまけ:
この日、六本木で始まった歌川国芳の展示も観たのですが、こちらを先に観ておきました。六本木の展示は後日ご紹介の予定です。

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Comment
No title
こんばんわ!!
 この展覧会では歌川芳艶と歌川芳虎が良かったです~。
 最近この美術館に行く機会が多かったせいか、スタッフの方に顔を覚えられてました。小さい美術館ならではです。
 歌川国芳の展示の記事楽しみにしてます!
Re: No title
>だまけんさん
コメント頂きありがとうございます^^
私が行った時はすでに後期でしたが、前期も観ておけば良かったかなと。
芳艶は師匠の奇想な部分が受け継がれているようでしたね。

国芳の記事はただ今準備中です。タイトルの打ち込みが大変でして…w もう少々お待ち下さい^^;
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