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ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [後期] 戦前から戦後へ 【山種美術館】

もう10日ほど前のことになりますが、恵比寿の山種美術館で「山種美術館創立45周年記念特別展 ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [後期] 戦前から戦後へ」を観てきました。この展示は前期・後期に分かれていて、今回の展示は後期の内容となっていました。

 前期展示:ザ・ベスト・オブ・山種コレクション [前期] 江戸絵画から近代日本画へ (山種美術館)

P1082681.jpg

【展覧名】
 山種美術館創立45周年記念特別展 ザ・ベスト・オブ・山種コレクション
 [後期] 戦前から戦後へ

【公式サイト】
 http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

【会場】山種美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 恵比寿駅
【会期】2012年1月3日(火)~2月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前期よりもさらに混んでいて、中はごった返す場所もありました。一番困ったのがロッカーで、満杯で10分くらい空くのを待っていました。会期末になるに連れてさらに混む可能性もあるので、ある程度は覚悟したほうが良いかも知れません。

さて、今回の展示はこの美術館のベスト作品を集めた内容で、前期・後期で分かれているうち後期は戦前・戦後の作品となっていました。とは言え、それ以前との境目が分かりづらい気がしますので、お目当ての作品がある方は事前に公式サイトのリストで確認しておくことをお勧めします。
 参考リンク:[後期] 戦前から戦後へ の出品リスト(pdf)

展覧会の趣旨などは前期と同じですので説明は割愛します。今回も素晴らしいコレクションが並んでいましたので、詳しくはいつも通り、気に入った作品を通してご紹介しようと思います。なお、挙げていくものは以前ご紹介した作品が大半ですが、改めて感想を書いていこうと思います。


<洋画>
まずは洋画のコーナーです。

安井曽太郎 「葡萄とペルシャ大皿」
机の上の緑の皿に入った紫の葡萄とマスカットのような緑の葡萄を描いた作品です。平面的に描かれているのですが、器は斜め上からの視点に見えます。(これはセザンヌからの影響のようです。)また、全体的に直線が多く構成的で、色の対比も強い作品でした。
 参考記事:日本画と洋画のはざまで (山種美術館)

和田英 「黄衣の少女」
赤い装飾的な布地を背景に、椅子に座って手を交差させる姿勢の女性を描いた作品です。ノースリーブの黄色いワンピースが赤の背景に映えて、若さを感じます。腕も眩しいほどに瑞々しかったです。どこを観ているか分からない表情も神秘的。
 参考記事:没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい) (山種美術館)

佐伯祐三 「クラマール」
レンガ造りの古い洋館を描いた作品です。筆使いがよくわかるレンガや、暗めの色調のせいか、全体的に重厚感とリズム感が共存しているように感じ、洋館は風格が出ているように思いました。
この辺には佐伯祐三の「レストラン(オ・レヴェイユ・マタン)」や、荻須高徳の「食品店」などもありました。


<近現代日本画>
続いては近現代の日本画のコーナーです。
この章の始め辺りには川合玉堂の「早乙女」もありました。この作品も大好きな1枚です。
 参考記事:美しき日本の原風景 -川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷- (山種美術館)

奥村土牛 「城」
姫路城の天守閣を見上げるように描いた作品です。城壁の色が目に鮮やかで、幾何学的な城の構造を強調するような構図が面白いです。この構成はセザンヌの影響だそうで、洋画・日本画を越えた展開を感じさせます。
 参考記事:生誕120年 奥村土牛 (山種美術館)

奥村土牛は他には大人気の「醍醐」もありました。また、近くには速水御舟の「翠苔緑芝」もありました。
 参考記事:速水御舟展 -日本画への挑戦- (山種美術館)

落合朗風 「エバ」
6曲1双の屏風で画面全体に様々な植物がうっそうと生い茂っています。左隻中央あたりには黒髪の裸婦が左手を頬にあて、木になっている果実を手に取って見ています。これは旧約聖書のアダムとイブ(エバ)の物語のようで、エバの後ろにはじっと様子を見ている蛇の姿もありました。エバは横向きで果実を取るにしてはちょっと不自然な感じですが、全体的にどことなくゴーギャンを思わせる明るく平坦な画面で、右隻の太った2羽の鳥(ホロホロ鳥)や赤いケシの花などが楽園っぽさを出していました。

東山魁夷 「満ち来る潮」
巨大な壁画のような作品で、岩場に波が打ち寄せ飛沫が飛び散る様子を描いています。岩には金も塗られ、飛沫にも金やプラチナが使われるなど輝くような煌びやかさと力強さがあります。波は様式化されていていますがダイナミックで緑が鮮やかでした。
近くにはこの作品のための小下図なども展示されていました。
 参考記事:没後10年記念 東山魁夷と昭和の日本画 (山種美術館)

奥村土牛 「鳴門」
こちらは大きく渦巻く鳴門を描いた作品で、ほぼ薄い緑と白の濃淡だけで描かれています。線を使わずに波を表現していて、目の前で渦が巻いているような動きを感じます。全体的に霞むような感じですが、遠くには淡路島らしき島影も見えていました。これも魁夷の作品とは違った趣きのダイナミズムを感じます。

少し進むと川端龍子の大きな屏風作品や、福田平八郎の作品が3点程度あり、その先には東山魁夷の「年暮る」や「秋彩」といった作品もありました。

小野竹喬 「沖の灯」
茜色に染まる雲を背景に、大きな海と手前の砂州?が描かれています。海には星のようなピンクの光があり、これは漁火のようです。ゴッホの「星降る夜」に影響を受けたと考えられるようですが、幻想的で叙情性を感じました。観ていて暖かい気持ちになります。
 参考記事:
  生誕120年 小野竹喬展 (東京国立近代美術館)
  オルセー美術館展2010 ポスト印象派 感想後編 (国立新美術館)

橋本明治 「舞」
扇子を持って踊る仕草の女性を描いた作品です。黒い太めの輪郭線で縁取られ、緩やかな曲線で描かれているのが優美さを漂わせています。色合いも明確で、ややデフォルメされた感じもしますが、キリッとした女性の表情は凛々しく内面を感じさせました。

伊東深水 「婦人像」
白い帽子と赤い手袋を付け胸元の開いた洋服を着た女優の肖像画です。黒いテーブルに肘をついて頬を押さえる仕草が何とも色っぽい感じです。テーブルには反射で女優の姿が映り込むなど、写実的なところもありつつ、理想化されたような気品がありました。
 参考記事:
  大観と栖鳳-東西の日本画 (山種美術館)
  伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)

岩橋英遠 「暎」
手前に田んぼが広がり奥には山に沈む夕日が描かれています。全体的にオレンジに染まり、田んぼは夕日を反射しています。太陽は輝いているように見えて神聖な雰囲気があります。手前には滑空する鳥の姿もあり、美しくどこか懐かしい日本の原風景を感じさせました。
 参考記事:日本美術院の画家たち (山種美術館)

加山又造 「満月光」
6曲1隻の屏風で、黒を背景に噴煙を上げ火口付近が赤くなっている浅間山が描かれて、力強く雄々しい雰囲気です。それに対して手前には風に揺れるススキや桔梗などの秋草が描かれ、妖しいほどに白く優美な雰囲気がありました。太い輪郭の山と繊細に描かれた秋草が対比になっているように思います。

近くには平山郁夫の「バビロン王城」もありました。


<山種美術館と速水御舟>
続いては第二会場で、速水御舟のコーナーとなっていました。

速水御舟 「紅梅・白梅」
2幅対の掛け軸で、左に若い白梅と細い月、右に年老いた赤梅が描かれています。白梅は左下から右上に向かっていて、赤梅は下の方で右下から左上に向かって伸びています。それがお互いに対になるように見えて、2つで1つという感じがしました。また、木の周りには暗い煙のような空気感があり、それが緊張感を強めているように思います。
 参考記事:百花繚乱 -桜・牡丹・菊・椿- (山種美術館)

この部屋には今回のポスターにもなっている速水御舟の「炎舞」も展示されていました。こちらも何回も見ていますが、暗い中で浮かび上がるような展示方法だったので、より魅力を感じるように思いました。


ということで、前期に負けずに後期も素晴らしい内容となっていました。まさにベストというに相応しいと思います。こんなに良い作品を一気に観られる機会はそうそう無いと思いますので、日本画が好きな方は是非どうぞ。(混雑は仕方ないかも)

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