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日本赤十字社所蔵アート展 東郷青児、梅原龍三郎からピカソまで 【損保ジャパン東郷青児美術館】

もう2週間ほど前ですが、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館に行って、「東日本大震災チャリティー企画 日本赤十字社所蔵アート展 東郷青児、梅原龍三郎からピカソまで-復興への想いをひとつにして」を観てきました。

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【展覧名】
 東日本大震災チャリティー企画
 日本赤十字社所蔵アート展 東郷青児、梅原龍三郎からピカソまで-復興への想いをひとつにして

【公式サイト】
 http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html

【会場】損保ジャパン東郷青児美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】新宿駅

【会期】2012年1月7日(土)~2月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。

今回の展覧会は日本赤十字社所蔵アート展ということで、日本赤十字社の所蔵する近代絵画を観ることができる展覧会となっています。以前にも同様の展覧会を観た際に赤十字の成り立ちをご紹介しましたので、それについての詳細は割愛しますが、今回もその理念に賛同した画家たちの作品を観ることができましたので、気に入った作品を通じてご紹介していこうと思います。
 参考記事:日本赤十字社所蔵美術展 -人道と平和への想い-(千葉県立美術館)


<第1章 赤十字の誕生とその理念>
まずは赤十字の誕生や、理念についてのコーナーです。創立者のアンリ・デュナンに関する作品が多めです。

Fritz Behn 「アンリー・デュナン肖像」
右手で本を持ち、右手で会話のようなジェスチャーをとる創立者の肖像で、口ひげを生やしています。やや粗めのタッチですが、意志の強そうな顔をしていました。また、左上には赤十字の旗があり創立者らしい感じです。

近くには東郷青児の「ソルフェリーノの啓示」の下絵と実寸大の写真パネル、「ナース像」もありました。

増田誠 「ソルフェリーノのアンリーデュナン」
大砲や銃剣などが散乱する中、3~4任の兵士たちが傷つき倒れている様子が描かれています。既に手当を受けた者や今まさに手当を受けている者、死んでいる者などがいて、中央上部には女性とともに兵士を介抱しているアンリ・デュナンの姿があります。左下にはキリストを思わせる男性と青いベールの女性もいて、アンリ・デュナンの活動と関連づけているような感じでした。大画面でドラマチックな作品です。


<第2章 戦前の旧所蔵品>
続いてのコーナーは日本の戦前の赤十字の活動を紹介するコーナーです。佐賀の佐野常民は、明治維新前にパリ万国博覧会に派遣された際に赤十字社を知ったそうで、その後 赤十字に準じた「博愛社」を創立し、西南戦争の際には両軍の救護を行ったそうです。さらに佐野の働きかけによって日本はジュネーヴ条約に加入し、1887年に博愛社は日本赤十字社となったようです。
 参考リンク:佐野常民のWikipedia

この章のはじめにはT.Uchinoという人の記録絵画のような作品がならび、当時の博愛社の救護所と西南戦争の様子、関東大震災の頃の様子(写真パネル)を描いた作品などもありました。

寺崎武男 「博愛社創設許可の図」
洋風の部屋の中で、礼をして畏まっている佐野常民らしき人物と、博愛社の創設を許可している有栖川宮熾仁親王、その周りにサーベルを持った人物たちが描かれています。佐野の熱意に打たれてすぐに許可したそうで、写実的にその場の雰囲気を伝えていました。

この辺はこうした歴史を記したような作品が並びます。戦前は実業家や文化人、政治家、皇族など上流階級たちが日本の赤十字の発展に寄与したそうで、美術品が集まる土壌となっていたようです。ここには他に、以前ご紹介した藤田嗣治の戦時中の作品や赤十字の広報のポスター、幻燈映像版というガラス板に絵を描いてスライドで映すもの、赤十字スゴロクなどもありました。


<第3章 日赤設立100周年 記念寄贈美術品>
3章が今回のメインといえる戦後のコーナーです。戦争で日赤は疲弊したそうですが、GHQの支配下で赤十字国際委員会や厚生省も交えて再編の方向が決められました。アメリカ赤十字社によってボランティアの概念が伝えられ、多くの戦後事業の骨子を作ったのもこの時期のようです。やがてサンフランシスコ講和条約が結ばれた際、ジュネーヴ諸条約への加入を宣言したそうです。ここにはそうした戦後に制作された作品が並んでいました。

麻田辨自(あさだべんじ) 「鴛鴦(おしどり)」
黒を背景に泳いでいる5羽の鴛鴦たちを描いた作品です。やや平面的で単純化されたような感じで、じっとして静かな雰囲気がありました。

この隣には東山魁夷の「晴れゆく朝霧」(★こちらで観られます)もありました。

結城天童 「爛漫(月山)」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。雪で白く染まる平坦な山と、手前に桜の花が描かれています。淡く滲みを使った色彩が幻想的かつ華やかな雰囲気を出していました。

石踊達哉 「秋涼」
まるで琳派のように鮮やかでデザイン化された桔梗やススキなどの秋草を描いた作品です。よく観ると、薄っすらと升目状に画面が分割されているのも分かり、伝統的な画風の中に現代的な要素があるように感じられました。中々面白い作品です。

青山義雄 「アネモネ(花)」
青い花瓶に入った赤い花や、その両脇の青と緑の瓶を描いた作品です。背景は黄色で補色関係となっているため、目に鮮やかに見えるのですが、タッチがぼんやりした感じとなっているのが相反しているように思えて面白かったです。この画家はマティスに師事したのですが、確かにそういう側面も感じさせます。

この近くにはピカソの「アトリエの画家」も展示されています。これは梅原龍三郎が寄贈したそうで、自分で作品を描くつもりだったのが体調を崩して描けなかったので代わりにこれを贈ったようでした。

梅原龍三郎 「パリス審判図」
3人の女神が美しさを競い、パリスという牧童を審判にして優勝者に黄金の林檎を渡すという神話に題材する作品です。パリスと3人の裸婦(女神たち)が描かれ、単純化されつつ躍動感のあるタッチとなっています。裸婦は赤い輪郭で描かれているせいか生き生きとした雰囲気もありました。

近くには鈴木信太郎の「椅子にのる人形」(★こちらで観られます)もありました。

末永胤生(すえながたねお) 「海辺の群馬」
2枚セットの作品で、海辺の草原で7~8頭の白馬が草をはみ、そこに裸の人物が背を抑えている様子が描かれています。馬や人はぼんやりと象徴的に描かれていて、色が淡く幻想的な雰囲気がありました。黄緑の草が多いためかさわやかな印象も受けるかな。

ちかくには増田誠の「オンフルール」もありました。

杉山健吉 「牡丹」
白い花瓶に入った、ピンクや紫、白などの牡丹を描いた作品です。緑の葉っぱも生い茂り、花瓶の下には装飾的な赤い布が敷かれていて全体的に色のバランスが心地よく感じられました。華やかな雰囲気の作品です。

近くには荻須高徳の「僧院の回廊」や小磯良平の「集い」といった作品もありました。「集い」はこの前の夏にも観ましたが、何度観ても素晴らしい作品です。
 参考記事:文化勲章受章作家の競演 日本絵画の巨匠たち (ホテルオークラ アスコットホール)

岩本英希 「平和の泉」
鳩を抱く白衣の女性やラッパを吹く白衣の女性、背景には川や月、草原などが広がりますが、馬で空を飛ぶ人や、宙を浮く白衣の女性などもいて幻想的な光景です。 赤や青の使い方がシャガールを彷彿とさせましたが、より優しい感じの作風でした。

朝比奈文雄 「早春」
大画面の作品で、熱海の街を描いています。手前に賑やかそうな街並み、奥に半島状の岬が観え、黄色・オレンジ・緑に染まり夕暮れ時のようにも観えます。単純化された大胆なタッチが力強く、色使いは明るめに感じました。


ということで、以前観た内容と違うところも多く、貴重なコレクションを観ることができました。この展覧会の観覧料はすべて東日本大震災で被災した人たちへの義援金になるらしく、観に行くことで復興への協力にもなるようです。(しかも500円と結構安め) 小磯良平の「集い」など素晴らしい作品もあるので、観たことがない方はこの機会に是非どうぞ。

 参照記事:★この記事を参照している記事

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