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北京故宮博物院200選 (感想後編)【東京国立博物館 平成館】

今日は前回の記事に引き続き、東京国立博物館平成館の日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「北京故宮博物院200選」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。

 前編はこちら

P1292902.jpg P1292904.jpg

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展
「北京故宮博物院200選」

【公式サイト】
 http://www.kokyu200.jp/
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1418

【会場】東京国立博物館 平成館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2012年1月2日(月) ~2012年2月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前回は前半の展示(主に書画)をご紹介しましたが、今日は後半の工芸品などや清朝の文化事業についてご紹介します。後半のほうが点数も多かったのでメモも多くなりました。
なお、今回も作品名と作品番号を併記しておきます。正しく表示できない作品は作品リストをご参照ください。
 参考リンク:作品リスト


<第1部 故宮博物院の至宝 -皇帝たちの名品->
後半の最初の方は引き続き1部の内容となっていました。

87 「明黄色彩雲金龍文ごく絲朝袍」 ★こちらで観られます
これは皇帝のみが着ることができる黄色の礼服です。5本爪の龍や、金龍紋といった皇帝と皇后のみに許さる文様が使われ、さらに十二章と呼ばれる12の吉祥の文様が施されています。パッと見はド派手な感じもしましたが、光沢などに気品がありました。

56 「玉戈」
薄茶色の色をした刀の先のような形の玉(ぎょく:翡翠など鈍い光の輝石)です。滑らかで美しい色合いをしていて、祭礼などで使われていたようです。
この辺は玉器の名品が並んでいて、玉は好きな私には面白いコーナーでした。

53 「方盤」
これは紀元前5世紀頃の青銅器で、4つの虎の形の足がついていて長方形をしています。内側には絡みあう龍が無数に彫られているなど、一目で膨大な手間がかかっているのが分かります。この辺は緻密な細工の青銅器の作品が多く並んでいましたが、これが一番驚きの作品でした。
 参考記事:誕生!中国文明 (東京国立博物館 平成館)

62 「青花龍濤文八角瓶」 ★こちらで観られます
頭が大きく下部がすぼんで行く八角形の胴の陶器の瓶です。スラっとしたフォルムで、側面にはぎっしりと文様と白い龍が描きこまれていました。踊るような龍たちと規則正しい文様が面白く、優美かつ豪奢な雰囲気がありました。
この辺は陶器が並んでいます。

71 「花鳥螺鈿舟形容器」
底の浅い楕円形の容器で、表面はびっしりと鷺や蓮華を螺鈿で表しています。螺鈿の部分が多すぎてやりすぎな気もしますが、その辺は中国人との感性の違いかもしれません。豪華さを誇示するような作品でした。

68 張成 「梔子堆朱盆」 ★こちらで観られます
赤い小さなお盆で、漆を塗り重ねて文様を浮き彫りにする「彫漆(ちょうしつ)」という技法で作られています。彫りが深く、クチナシの茎や花が立体的に表されていました。生き生きとした雰囲気があります。

73 「雲龍堆朱大合子」
こちらも彫漆の作品で、大きめの容器です。上面に5本爪の龍(9頭?)が彫られ、周りには沢山の草花の文様となっています。こちらも驚くほどに細かく、皇帝の象徴が散りばめられた作品でした。

78 「琺瑯蓮唐草文龍耳瓶」 ★こちらで観られます
耳が龍の形をつけら青いエナメル質の壺です。「琺瑯」は「ほうろう」と読むそうで、ホーローの語源にもなり、技法としては七宝と同じもののようです。青が鮮やかで700年も前の作品とは思えないくらい華やかさがありました。上下3段に組み立て直して制作されたと考えられるというのも変わっています。
この辺は琺瑯で、象の頭と足を付けた面白い作品もありました。

88 「孔雀?地真珠珊瑚雲龍文刺繍袍」
皇帝が着た刺繍の施された衣で、緑地に孔雀の羽を敷き詰め、所々にビーズなども使われています。こちらも5本爪の龍たちや波文様など力強く、威厳を感じさせるような絢爛さがありました。

89 「刺繍三羊開泰図」
刺繍で動物や鳥たちを描いた作品です。光沢のある糸で織っているらしく、輝くような艶があり色鮮やかです。理想郷のような感じで、飛び交う鳥や可愛らしい顔の山羊など、生き生きとした楽しげな雰囲気がありました。


<第2部 清朝宮廷文化の精粋 -多文化のなかの共生->
続いて、2部は清朝300年についてのコーナーです。清は1644年に万里の長城を超えて北京に入城した女真族の王朝で、最盛期は6代皇帝 乾隆帝の頃だそうです。チベットやモンゴルも取り込み、イスラムやヨーロッパも受け入れていたらしく、それを伺わせる作品が並んでいました。

<第1章 清朝の礼制文化 -悠久の伝統->
110 「康熙帝南巡図巻 第11巻」
川沿いの街の様子を描いた巻物です。非常に長くて30mくらいあるんじゃないかな?? その割には細密な描写で、皇帝が視察に来た時の様子を描いています。右から順に観ていくと、街の後には山や山道を行く人達、村の様子などが描かれ、寺院のようなものも見えます。更に進むと海のような長江?が描かれ、たくさんの船が浮かんでいました。波の表現なども細密で驚くべき手間です。解説によると、これは6年かけて12巻を作成した内の第11巻のようで、近くには第12巻も展示されていました。(第12巻は城?の中で沢山の人々が整然と隊列を作っている様子などが描かれていました)

91 「乾隆帝像」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品で、先ほどご紹介した黄色い皇帝の礼服を着た乾隆帝が正面を向いて描かれています。これは即位したての25歳頃に描かれたそうで、イタリア人宣教師で画家のジュゼッペ・カスティリオーネ(中国名;郎世寧)が作者のようです。顔は写真のように写実的で、黄色が明るく輝くような威光を感じさせました。まさに皇帝といった雰囲気です。
この辺には金印などの作品もありました。

122 「御製五体清文鑑」
同じ意味の単語を、満州語、チベット語、モンゴル語、ウイグル語、漢語(漢字)で縦に並べて書いた辞書です。読み仮名も振ってあり、かなり実用的なもののようで全部で18671項目もあるそうです。清朝では満州語と漢語が公用語だったそうですが、こちらからは清朝が広い範囲を治めていた様子が伺えました。
この辺には歴史書などが並んでいました。

108 「翡翠念珠」
ビーズや翡翠で作られたトンボの形のかんざしです。色鮮やかで、ビーズで羽を表すなど豪華な造りとなっています。意匠も面白くて可愛らしさがありました。
この辺にはこうした装飾品や皇帝・皇后の礼服などもありました。


<第2章 清朝の文化事業 -伝統の継承と再編->
清朝は中国歴代王朝の宝を蒐集を行なっていたらしく、審美することで中華文明の最高指導者として君臨したそうです。このコーナーでは主に乾隆帝のコレクションを中心に紹介していました。
この辺りで閉館が近づいてきたので鑑賞スピードを早めたので感想はさらに簡素になりますw

126 「乾隆帝是一是二図軸」 ★こちらで観られます
乾隆帝が文人風の漢族の服を着て、ベッドのようなものに腰掛けている姿を描いた作品です。後ろには衝立に掛けられた乾隆帝の肖像があり、周りにはテーブルに乗った玉器や青銅器など様々な品が置かれています。右上には自筆の漢詩も添えられていました。漢族の格好までして乾隆帝が漢族の文化を愛好していたというのが伝わってきますが、単に好きというだけでは無く政治的な意図もあるようでした。

さて、この章はこの絵をじっくり観ておくと、次のコーナーに移って驚きます。何と絵の中に出てきた物が展示されていて、円卓までありました。

134 「粉彩板象嵌黒檀榻」
これは先ほどベッドみたいなものと書きましたが、どうやら椅子のようです。乾隆帝が座っていたものと同じだと思うのですが、間近で観ても大きく、ちょっと堅そうな質感に見えました。こういうものまで残っているとは驚きです。

その先には、「三希堂」という乾隆帝の書斎の再現コーナーがありました。これは5畳程度の書斎で意外と狭いように思いましたが、壁には沢山の花瓶、机には玉器や朱色の彫漆など、調度品は皇帝ならではのものがありました。


<第3章 清朝の宗教 -チベット仏教がつなぐ世界->
続いて3章は清朝の宗教政策に関するコーナーです。清朝は仏教やイスラムなど多様な宗教を容認していましたが、自分たちは後期密教のチベット仏教を信仰していました。紫禁城にも仏塔や仏堂が建てられたそうで、ここにはチベット仏教関連の作品が並んでいました。
 参考記事:聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝- (上野の森美術館)

174 「乾隆帝文殊菩薩画像」
これは中央に乾隆帝が文殊菩薩に見立てられて描かれた掛け軸です。緑やオレンジが多く使われ、全体的に明るい色合いに見えます。周りには沢山の仏が描かれ、自分は仏であるというのを示しているようでした。解説によると、これはチベットの寺院側にも許しを得ていたらしく、権威付けの意味があるようです。

この近くには宝塔や法具などが並んでいました。

190 「大威徳金剛(ヤマーンタカ)立像」 ★こちらで観られます
牛の角が生え、9つの顔と34本の手、16本の足を持つ大威徳金剛の立像で、恐ろしげな表情をしていて、舌を出しています。手には沢山の武器を持ち足は多くの人?を踏みつけていて、凄い迫力がありました。まさに憤怒の様相です。

この辺はチベットの仏像やインドの仏像が並んでいました182「金剛菩薩立像」なども好みです。時間があればここはじっくり観たかったw


<第4章 清朝の国際交流 -周辺国との交流->
最後の4章は清朝の国際交流についてのコーナーです。清には遠方からの使者や貢物・贈り物が届いたそうで、その中には日本の漆器やミャンマーの翡翠などもあったようです。また、イタリア人宣教師画家のジュゼッペ・カスティリオーネを重用すると、西洋趣味が席巻するなど、西洋との交流もあったようです。

97 「黒貂纓金龍文真珠飾冑」
これは閲兵の時に着る鎧(というか厚手の服みたいな)で、金地に龍が刺繍され胸の前に鏡のようなものがあります。また、この鎧のすぐ隣にはジュゼッペ・カスティリオーネが描いた192「乾隆帝大閲像軸」(★こちらで観られます)が展示され、この鎧を実際に着ていた様子が写実的に描かれていました。

この辺には天球儀や日時計、置き時計なども展示されていました。

199 「万国来朝図軸」
大きな絵で、紫禁城の元旦の風景を描いた作品です。赤い柱の建物の前に沢山の人々が描かれ、属国や周辺国などの人達が集まっています。解説によると実際には付き合いのないイギリスやフランスもいるらしいので、吉祥の意味で描いているようですが、広い交流を感じさせました。右下の端っこには日本もいます。


ということで、行く前はあまり興味が無かったですが、実際に観ると面白い展示でした。「清明上河図」が無くても十分楽しめる内容だと思います。問題は混雑しすぎる点かな。会期末はさらに混雑する可能性もありますので、気になる方はお早めにどうぞ。


この日はギリギリまで特別展を観ていたので常設は観ることができませんでした。

 参照記事:★この記事を参照している記事


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