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アンリ・ル・シダネル展 2回目【埼玉県立近代美術館】

10日ほど前の日曜日に埼玉県立近代美術館へ行って、最終日となった「アンリ・ル・シダネル展」を再度観てきました。この展示はすでに終了しましたが、満足度の高い展示でしたので、改めてご紹介しておこうと思います。

 参考記事:アンリ・ル・シダネル展 (埼玉県立近代美術館)

P2052941.jpg

【展覧名】
 アンリ・ル・シダネル展

【公式サイト】
 http://www.momas.jp/003kikaku/k2011/k2011.11/k2011.11.htm

【会場】埼玉県立近代美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】北浦和駅


【会期】2011年11月12日(土)~2012年2月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
最終日ということもあり、以前行った時よりはお客さんが増えていましたが、それでも自分のペースで観るのに支障はない程度でした。

さて、この展示は以前にもご紹介しましたが、フランスで活躍した画家アンリ・ル・シダネルの個展となっていました。今回の記事は以前ご紹介しなかった作品を中心に、気に入った作品をご紹介していこうと思います。なお、各章のテーマについては以前と変わっておりませんので割愛します。

<第1章 自画像>
1章は自画像が1点のみとなっていました。改めて見ると陰影が絶妙で、髪の流れがわかるほど精密な作品でした。


<第2章 エタプル>
2章は初期のエタプルという寒村での活動のコーナーです。

2 アンリ・ル・シダネル 「サン=ミッシェル教会(エタプル)」
教会を斜め前から観た構図の作品です。若干ぺったりとした平坦な画面に見えるかな。周りには雪があり、空は抜けるような青さでした。静かな雰囲気の作品です。

7 アンリ・ル・シダネル 「横向きの若い女性(エタプル)」
戸外で樹の下に腰掛けている白いドレスの横向きの女性を描いた作品です。青みがかった色で影の中にいる感じがよく出ています。奥には日の当たる草むらがあり、そのコントラストが明るく感じました。こちらも淡く平坦な感じの作風に思えました。

3 アンリ・ル・シダネル 「農家の庭 [プティット=シンテ]」
横に長く伸びる農家と、その手前にある水辺を描いた作品です。農家の前には白い布を被った女性と数羽の鶏がいて、のんびりした雰囲気があります。全体的に色が落ち着いている作品でした。


<第3章 人物像>
3章は人物像のコーナーです。こうして観て回ると人物像は少なめに思えます。

10 アンリ・ル・シダネル 「ルイ・ル・シダネルの肖像」
鉛筆で描かれた少女の肖像で、これはシダネルの娘のようです。お椀にスプーンを入れてうつむいているようなポーズで、背景は暗く後頭部は暗闇に溶けこむような感じでした。全体的にうねった毛のような質感のタッチで描かれているのも面白いです。

9 アンリ・ル・シダネル 「朝 [モントルイユ=ベレー]」
川の上に左半分だけ描かれたボートが浮かび、ウェディングドレスのようなものを着た女性が描かれた作品です。ボートの右側は画面外ですが、誰か居るはずで気になりますw そもそも何故このような格好でボートに乗っているのかも謎めいて観えました。朝の光景を描いているようでピンクを含んだ光の表現が爽やかでした。


<第4章 オワーズ県の小さな町々>
4章は1900年に移ったオワーズ県のボーヴェにいた頃の作品のコーナーです。

20 アンリ・ル・シダネル 「月明かりのなかの教会 [ビュイクール]」
雪の積もった平原にある村と、塔のある教会を描いた作品です。全体的に青く沈んでいますが、画面には描かれていない月に照らされているらしく教会の辺りはちょっと明るく観えます。寒々とした雰囲気と静けさを感じる作品でした。


<第5章 取材旅行>
5章はジェルブロワを拠点として各地に放浪した頃の作品のコーナーです。

25 アンリ・ル・シダネル 「噴水 [パリ]」
パリの街を背景に、2段の水盤から成る噴水が描かれた作品です。右には樹も描かれていて、水平と垂直の線が多いように思います、街には薄っすらとあかりが灯り、夕方なのかな? パリの風情が伝わってくるような作品でした。

21 アンリ・ル・シダネル 「広場 [プティ=フォール=フィリップ]」
手前に広場、奥に赤い屋根の家が描かれた作品です。広場は右のほうに3人の人物が描かれている以外はガランとした感じです。それに対して、奥の家には窓に明るい光が灯っていて、ここだけ温かみを感じました。

31 アンリ・ル・シダネル 「月明かりのテラス [ヴィユフランシュ]」
手前に植物に覆われた手すりのあるテラスが描かれ、奥には湖と対岸の山が描かれています。水面には白やピンクが使われ、向いから来る月光を強く感じさせました。月自体は描かれていないのですが、神秘的な雰囲気があり人や船の姿すらないのもそれを強めているように思いました。


<第6章 ブルターニュ地方>
6章は1913年頃に訪れたブルターニュ地方を描いた作品のコーナーです。

39 アンリ・ル・シダネル 「朝日のあたる道沿いの川 [ブルターニュ]」
川の両岸にひょろっと伸びたポプラ?の並木が描かれ、その奥に薄っすらと太陽が昇っているようすが描かれた作品です。全体的に霧がかったように淡くぼんやりしていて、昼間なのに幻想的な光景となっていました。ちょっとモネのポプラの連作に構図が似ているかも。

37 アンリ・ル・シダネル 「快晴の朝 [カンペルレ]」
奥で右に曲っている川とその河岸の家々を描いた作品です。手前で船に乗った2人が舟を出す用意をしていて、一日の始まりを感じさせます。また、手前は青みがかった影となっているのに対して、奥の家に明るい日差しが当たっているのも朝ならではの爽やかさを出しているように思いました。


<第7章 ジェルブロワ>
7章は自宅にバラ園など庭園を作ったジェルブロワの時代のコーナーです。

44 アンリ・ル・シダネル 「階段 [ジェルブロワ]」
手前に雪の積もった階段とその両脇の塀が描かれ、奥には明かりの灯った家が描かれています。手前は白や暗めの色が多くて寒々としていることもあり、家の窓からのオレンジの光が一際暖かく感じました。観ているだけで早く家に帰りたくなるような絵です。

40 アンリ・ル・シダネル 「黄昏の古路 [ジェルブロワ]」
左側に明かりの漏れる洒落た建物があり、右側は石畳の道と奥にアーチが描かれています。左の家にはたくさんのピンクの花が飾られ、壁や植木鉢で花を咲かせています。左右で分かれた構図が面白く、花の色は温かみと華やかさを感じさせました。


<第8章 食卓>
8章は絶頂期の食卓の絵を描いたシリーズの並ぶコーナーです。「アンティミスト」と呼ばれる身近なものを描いた作品群です。

60 アンリ・ル・シダネル 「テーブル、白の調和」
円形で白いテーブルクロスのテーブルの上に、白いカップや水差しが置かれ、白い花が入った花瓶もあります。背景には白いドアも描かれているなど白い品が多く描かれています。しかし、陶器には光沢、花にはしっとりした質感があるなど、一口に白と言っても様々に使い分けられていました。円や球体のような形が多い構図も良かったです。

55 アンリ・ル・シダネル 「青いテーブル [ジェルブロワ]」 ★こちらで観られます
今回の展示のポスターになっていた作品です。植物が絡みつくシダネルの家の前に、青いテーブルと2脚の椅子が置かれ、テーブルの上にはワインや籠に入った果物などが描かれています。しかし、今からワインや果物を楽しむように見えるにも関わらず椅子には誰も座っておらず、静かな雰囲気でした。この作品はアンティミストの象徴的な作品のようです。


<第9章 ヴェルサイユ>
最後は冬の時期を過ごしていたヴェルサイユを描いた作品のコーナーです。

67 アンリ・ル・シダネル 「噴水 [ヴェルサイユ]」
暗い夜の森の中の噴水を描いた作品で、手前で水を噴き上げています。奥の木々の間には明かりの灯った家が描かれ、水面に光が反射しています。全体的に静かな雰囲気で、水の音まで聞こえるような光景でした。


ということで、非常に私の好みの画家でかなり満足できました。アンリ・ル・シダネルの作品は中々観る機会が無いのでこの展覧会の図録は大事にしようと思います。


 参照記事:★この記事を参照している記事

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