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フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ 【横浜美術館】

ランドマークでお昼を食べた後、横浜美術館で「フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ」展を観てきました。 結構混んでました。

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【展覧名】
フランス絵画の19世紀 美をめぐる100年のドラマ

【公式サイト】
http://france19.com/top.html

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2009年6月12日(金)~8月31日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真はコンパクトデジカメで撮影しました。


【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度 + 常設1時間30程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
日本では19世紀後半から20世紀の印象派とエコールドパリあたりが人気で、アカデミスムというとあまり馴染みがないですが、19世紀当時はアカデミスムが王道でした。この展覧会ではそのアカデミスムにスポットを当てて、詳しく紹介してくれます。公式サイトも今まで観たことがないくらい気合が入っているので必見です。
しかし、作品リストを貰えなかった(どこかにあったようですが展覧会のところにはありません)ので、どの作品がどのコーナーにあったのか流石に覚えていませんw 解説機のリストもお願いしても貰えず、何だかケチくさいです。。。そのためメモも取れなかったので、公式サイトを参考にしながら思い出せる範囲でご紹介しようかと。
サイトの細部までこだわってるのに、こういう普通の対応ができないのは非常に残念です。ここではそれ以外にも、はぁ?と思う謎対応があったので、この美術館のサービスはその程度なのかもしれません。それさえなければ、これだけの内容なので非常に満足だったのになあ。


気を取り直してまずは章立てを紹介。 (それぞれ公式サイトにリンクしています)

<第1章 アカデミスムの基盤~新古典主義の確立>
<第2章 ロマン主義の台頭とアカデミスム第一世代>
<第3章 アカデミスム第二世代とレアリスムの広がり>
<第4章 アカデミスム第三世代と印象派以後の展開>

こんな感じでその時代の変遷を追っていくことができます。各章についてリンク先のページで相当詳しく書いてあるので、趣旨はそちらを読んで頂ければと。(メモがないので投げやりですみませんw)


この展示の構成を無視してしまいますが、どこの章とか調べられないので↓のサイトの出展美術館ごとにご紹介。幸い、大概の作品が出品した美術館別に観られます。
http://france19.com/features/index04.html

中にはこちらで詳細に説明している作品もあります。
http://france19.com/lecture/index03.html

アラス美術館
ラファエル・コラン 「フロレアル(花月)」
この絵は先日、東京博物館の黒田清輝展でほぼ同じ習作を見たので、あれ?っと思いました。アカデミスムだけど印象派の影響がみられます。清らかな感じがしますが、どこか官能的に思えました。

アンジェ美術館
アンリ・レーマン、本名カール=エルネスト=ロドルフ・ヘンリッヒ 「預言者エレミヤ」
この絵はかなり気に入りました。威嚇する天使の険しい表情と指差す仕草が美しくもあり恐ろしさを感じました。何といっても、預言するまさにその瞬間を描いたドラマチックさを感じます。画風も全体的に理想化された感じでいかにもアカデミーって思いました。

オルセー美術館
ジャン=オーギュスト=ドミニック・アングル & アレクサンドル・デゴッフ 「パフォスのヴィーナス」
この展覧会のポスターになっている作品です。滑らかさを感じる仕上げがアカデミスムの基礎となったこの頃の特徴らしいですが、それがこの作品にも観られると思います。それにしても、右側の子や左手が透けているのはまだ未完成なのかな? 特に解説がなかったですが謎です。

ジュール・バスティアン=ルパージュ 「干し草」
これは印象派以降のコーナーにあったかな。後ろで寝っ転がっているのが面白かったw ありのまま描いている感じがありありと出ていて、理想化されたアカデミスムのそれまでの流れとだいぶ違う気がしました。

カルカソンヌ美術館
ジャン=ウジェーヌ・ビュラン 「無垢な結婚」
この作品は特に気に入ったので、絵葉書を買いました。これはレアリスムの時期だったかな。主題は田舎の風景で、それまでのような神話や宗教などとは違いますが、アカデミスムならではの緻密で上品な筆遣いを感じました。

サン=テティエンヌ近代美術館
イポリット・フランドラン 「トロイアへ向かうギリシャ軍の動きを見張る、プリアモスの息子ポリテス」
これはロマン主義だったかな。横向きで膝を抱えるポーズと明暗のある力強い描写が良かったです。神話、裸、緻密な描写、とってもアカデミスムです。

シェルブール=オクトヴィル、トマ=アンリ美術館
ジャン=フランソワ・ミレー 「施し」
この絵も特に素晴らしかったので絵葉書を買いました。左のドアから光が差込むのを感じます。それまでのアカデミスムでは人物を描くなら王侯貴族だったのに、この作品では施しを受ける老人を描いています。この辺りが革新的だったところかなと。

ジャック=ルイ・ダヴィッド 「男性裸体習作」、または「パトロクロス」
ロダンの彫刻のような生命感あふれる描写で、これほどの作品なのに習作なのかと思うばかりでした。まるで本当に生きているかのような漲る躍動を感じました。

ダヘッシュ美術館
アレクサンドル・カバネル&アドルフ・ジュルダン 「ヴィーナスの誕生」
この絵(もしくはこれの複製?)を何度か観た覚えが確かにあるのですが、ヴィーナス展だったようなユニマット美術館だったような、いつどこでという記憶が曖昧ですw この絵は確かに素晴らしく、真珠色の肌や官能的かつ優美なポーズが美しいです。この作品はナポレオン3世に買い上げられたのだとか。

トゥールーズ、オーギュスタン美術館
トマ・クチュール 「黄金への欲望」
真ん中からやや右に座っている守銭奴の鷹のような眼が印象的でした。手は黄金をがっしり掴んでタイトルに相応しい雰囲気でした。

ニーム美術館
グサヴィエ・シガロン 「ロキュスト(ブリタニキュスに使う毒薬をロキュストがナルシスに渡し、若い奴隷にそれを試す)」
題名からして分かりますが、結構むごい状況を描いています。毒薬が効いて苦しんでいるのを観ている2人の目が冷酷に思えました。これもドラマチックな瞬間でした。

バイユー、ジェラール男爵美術館
フランソワ・ジェラール 「ヒュラスとニンフ」
ニンフが男性に抱きついている!…のではなく、川に引きづりこもうとしています(><) 男性は枝に掴まってこらえていますが結局引きづりこまれて帰らぬ人になるのだとか。そう思うと恐ろしい感じですが、ぱっと観た感じは女性の愛の抱擁かと思いました。

パリ、国立美術学校
ミシェル=マルタン・ドロリング 「アキレウスの怒り」
私は素人なので、バロック絵画とこの辺の違いがよくわかりません。劇的な明暗と鮮やかな色彩で理想的かつ動きを感じる作品でした。左の人の赤い衣が特に心に残っています。

フィラデルフィア美術館
エドゥアール・マネ 「カルメンに扮したエミリー・アンブルの肖像」
多分、上野でやったフィラデルフィア美術館展でみたのと同じ絵だと思います。この展覧のポスターになっている作品です。ずっとアカデミスムの絵を観た後に観ると、一際革新的な感じがします。それまでのアカデミスム作品よりも表現の個性が強くなって、自分で感じたままに描く時代が始まりつつあるのがわかります。

ボルドー美術館
レオン・コニエ 「死せる娘を描くティントレット」
題名の通り、死んだ娘を描いている絵で、ちょっと異様な雰囲気がありました。薄暗い明かりの表現が見事でした。

マドリード、プラド美術館
ポール・ボードリー 「真珠と波」
これは先述の「ヴィーナスの誕生」と同じ時にサロンに出品され、こちらはナポレオン3世の妻が買い上げたそうです。背を向けて振り返ったヴィーナスの顔はえらく親しげな微笑みを浮かべ、神話的な題材のはずですが普通に恋人を描いたんじゃないか?って思いました。これだけリアルだと写真みたいです。

ヤマザキマザック株式会社
ウジェーヌ・ドラクロワ 「シビュレと黄金の小枝」
アカデミスム成立の1つのきっかけとなったドラクロワの作品。ドラクロワはロマン主義の筆頭で、彼らの活躍によって個人の感性を重視した作品が広がっていったそうです。(題材の幅も大きく広がったらしい)
私はそんなに好きってほどでもないですが、ドラクロワの作品はあまり観たことがないので貴重な体験でした。

ロマン派生活美術館
アリ・シェフェール 「聖アウグスティヌスと聖モニカ」
母に倣ってキリスト教になった聖人だったかと記憶してます(多分w) 見上げる先に何があるんだろう?と画面の外まで広がりを感じ、その顔には強い光があたっていて、神聖な様子を表現しているように思えました。表情も穏やかです。

国立西洋美術館
ギュスターヴ・クールベ 「眠れる裸婦」
やっぱこの辺は馴染みがありよく特徴を知っているので覚えがいいですw この辺になると理想化ではなくレアリスムを感じる作風の画家が出始めているのがコーナー全体から伝わってきていました。

村内美術館
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「少年と山羊」
これは国立西洋美術館のコロー展でも観た作品でした。牧歌的で好きな絵です。こうしてアカデミスム作品を観てくると、その流れ上にありつつも次の時代への架け橋になっているのがよくわかりました。

島根県立美術館
ラファエル・コラン 「エリーズ嬢の肖像」
コランの描く女性は皆どこか上品さと清楚さが漂います。この少女も白い服装と相まって神聖な感じすらしました。

アルフレッド・シスレー 「舟遊び」
素晴らしいモネも作品も近くにあったのですが、やっぱ私の美術鑑賞はこの辺がルーツだ!と思いましたw この分かりやすくて輝くような明るさは素人の自分には率直に楽しめるところです。それでもここにたどり着くまでの先人達の試行錯誤の結果なんだなーとしみじみ思いました。

リュック=オリヴィエ・メルソン 「エジプト逃避途上の休息」
深い青の夜空、砂漠、スフィンクス…。寂しいようなホッとするような作品です。(なんだかシュルレアリスムにありそうな構図です) 単純な感じがしつつも深く心に残りました。



ということで、観たことがある作品も結構ありましたが、これだけ詳しく歴史を追って紹介してくれる展示は滅多にないと思います。今後の美術鑑賞にも非常に役立つ展覧になっていると思いますので、おすすめです。とりあえず、作品リストはどこかで自分から貰わないと貰い損ねるのでご注意w
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