関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

フランク・ロイド・ライト 「自由学園明日館」(2018年12月)

今日は写真多めです。先週の日曜日に池袋にあるフランク・ロイド・ライトが設計した「自由学園明日館」を見学してきました。この施設では撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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公式サイト:https://jiyu.jp/tour/


結構沢山の人がいましたが、建物マニアの人たちというよりは公民館的な感じで使われているので、そうしたイベントの人が多かったように思います。さらにここにはカフェと講堂もあって、この日は無料コンサートもあったのでそれで混んでいたのかも。講堂とカフェ(旧食堂)については別記事で書こうと思いますので、今日は本館のカフェ部分以外についてです。

この建物は近代建築の三大巨匠の1人であり日本とも少なからず関係のあるフランク・ロイド・ライトによる設計で、恐らくライトの設計で現役で使われているのは日本でここだけだと思います。明治村の旧帝国ホテルは玄関部分だけを切り取ったものだし、「FUKUHARA HOUSE(福原有信邸)」は関東大震災で倒壊したし、丸々生き残ってるのは奇跡のような建物です。しかも池袋駅から徒歩5分という場所にありながら一般にはあまり知られていないというのも穴場感があります。
元々ここは羽仁吉一・もと子 夫妻が1903年に『家庭之友』という雑誌の事務所と自宅を建てる為に、おさつと大根の畑だったこの地を借り受けたのですが、2人は女性教育のための学校設立を夢見て 実際に創立する際に、当時2人が通っていた教会の教会員でありフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新に学校の設計を依頼しました。すると、遠藤新は自分よりもフランク・ロイド・ライトに頼んではどうかと勧められ、帝国ホテルの建設で忙しいライトに紹介され、2人の教育理念を話したところ ライトの深い共感を得ることができて、校舎の設計を快諾されたそうです。帝国ホテルの建設でめちゃくちゃ忙しくて遂には首になったライトがよく引き受けてくれたな…と驚くと共に、そんな中でも時間を作って数日でラフスケッチを作ったというのにも更に驚きです。成り立ちを知ると如何に貴重な建物かが分かります。と、感慨深いエピソードが色々あるのですがちょっと前置きが長くなってきたので、写真を使いながら合わせてご紹介していこうと思います。

 参考記事:
  【番外編】博物館明治村の写真 後編(2013年12月)
  アントニン・レーモンド 「旧イタリア大使館別荘」 【日光編】
  【大谷資料館】 坑道内の写真
  それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio 【資生堂ギャラリー】

こちらは全体の外観。
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「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」という羽仁夫妻の思いを基調としているようで、割とシンプルな見た目です。

こちらが本館部分の見取り図。(現在位置は無視してくださいw)
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タリアセンという部屋がありますが、タリアセンというのはフランク・ロイド・ライトが設計した建設のことを指したりする言葉です。豊島とかマニアーニャ(明日)とかモーゼスとか、この建物にゆかりのある名前が多いですね。

こちらが本館の入口部分。ここで入館料を払います。
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入館のみとカフェ込のチケットがあり、私たちはカフェ込のチケットにしました(日によってはカフェをやっていないようです)

入口の隣の隣の部屋では婦人之友社の書籍を紹介するコーナーがありました。
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婦人之友社のおかげでフランク・ロイド・ライトの建物が日本でも観られるんですね。本当にありがたいことです。

こちらは講堂側の入口部分。左右対称になっていてほとんど同じに見えます。
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こちらは生涯学習の事務所として使用しているようでした。

講堂側の側面部分の教室は結婚式の相談所?として使われています。
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この自由学園明日館を土日に見学しようとすると月に1日しか見学出来る日が無いのですが、それ以外の土日は結婚式場として予約が埋まっているそうです。こんな名建築で結婚式が出来るのは幸せなことでしょうね。 一方、私のように単にこの建物を休日に見学したい場合は、公式ページのカレンダーをよくチェックしておくことをお勧めします。

こちらは本館のドア。幾何学的な模様が美しい!
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この写真にも写っていますが、あちこちに大谷石が使われています。フランク・ロイド・ライトの熱い大谷石へのこだわりが感じられますねw

ドアの内側から観るとこんな感じ。
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シンプルながらも むちゃくちゃ絵になる幾何学模様で、テンションあがりっぱなしでしたw (同じ構図の写真を10枚は撮ってきたw)

続いて、この建物で一番の特徴とも言えるホール。右は吹き抜けの二階から見下ろす構図で撮っています
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この窓は限られた工費で抑えつつ、空間を充実させる為の工夫が見どころです。高価なステンドグラスではなく幾何学模様となっていて、独特の美しさです。保存修理をする前は中敷居を入れて風が強い日も安心なよう小さな窓に改変していた時期もあったようですが、今は文化財修理の原則に基づいてオリジナルに戻されているそうです。

ホールを振り返るとこんな感じです。吹き抜けの2階はフランク・ロイド・ライトミュージアムということでミニ展示室となっています。
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ここで注目したいのが、ここに並ぶ椅子です。六角形の背もたれを持つ椅子は、真ん中にスリットがあってフランク・ロイド・ライトのテイストがよく現れています。(ライトもしくは遠藤新の作品と考えられているようですが、他の椅子と比較しても遠藤新っぽい気もします。) 六角形にしたのはこの部屋が六角形を基調とした窓があるためのようで、非常に調和した雰囲気となっていました。

こちらもホール。窓に向かって右手奥にある壁画です。
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1997年からの修理工事で発見された壁画だそうで、壁の下から現れたようです。創立10周年の頃に美術講師でもあった美術家・石井鶴三の指導の下で生徒たちによって作られたそうで、出エジプト記を題材にしているようです。

こちらは先程写っていたホールの暖炉。
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ライトは「火のあるところには人は集まり、団欒の場を共有するのだ」と考えていたそうで、この明日館には5箇所の暖炉があります。冬の夜間見学の日など年に何回か焚いているそうで、煤がついていました(夜間見学もスケジュール表に載っています。基本的に毎月第3金曜日のようです)

こちらは廊下。
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廊下の窓にも装飾があって優美な雰囲気です。

こちらは先程とは別のドア。天井部分がガラスになっている所がありました。
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間接照明みたいな感じかな? デザインが非常に美しい。

前述の通り色々とイベントをやってたりするので、たまに入れない部屋がありますがいくつか教室にも入れて貰えました。
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物置に学校らしさを感じるけど、こんな洒落た木組みは観たことありませんねw

窓だって様になっています。
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ちなみに、この建物は設計を依頼してわずか3ヶ月で建てられたそうで、塗装も終わっていないような段階で入学式を迎えたのだとか。その後も授業と並行して建設工事が続けられ、約1年後に中央棟全体が完成したそうです。

こちらは黒板。
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周りの木枠があるだけで洒落た感じが出る不思議w

一番奥の部屋は自由学園のPR室になっていました。
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流石にここでは手狭になって、今の自由学園は東久留米市にあるそうです。ここで初の入学式を行ったそうで、1921年に完成した部屋という意味でRm.1921と名づけられたそうです。もう少しで100周年です。

中の造りは他の教室と似た感じ。
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お食事会、会議、ミーティング等でも使えるということで、この部屋の隣を公民館のように使っているグループもありました。

ここにも先程のと同じ形の椅子がありました。
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レトロだけど先進性があって、欲しくなりますw

この後、カフェのある食堂に行ったのですが、それについては次回ご紹介の予定です。とりあえず、食堂をさらに階段を登って先程のホールの吹き抜けにあるフランク・ロイド・ライトミュージアムをご紹介。

こちらは明日館の模型。
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こうして綺麗に残っていますが、空襲の危機(付近は全部焼けたけど免れた)や老朽化で取り壊す危機なんかもあったそうです。1997年に国の重要文化財に指定され、1999年から修理康史を開始して2001年に中央棟、東西教室棟の3棟が復元されました。

こちらは模型を横から見たところ。
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この建物は使い続けることが保存につながるという「動態保存」を旨として使われています。日本の宝みたいな建物なので、末永く残ってほしいものです。

この部屋にはこの建物の成り立ちや、自由学園の創立当時のエピソードなんかもありました。見学する上で非常に参考になります。

ミュージアム内の調度品もフランク・ロイド・ライトのタリアセンを使っていました。
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この照明、市販で7~8万円しますw 流石にこの建物にピッタリ合いますね。

最後におまけでミュージアムショップ。ここには色々と魅惑の商品があって、遠藤新の食堂の椅子のミニチュアとかにも心を惹かれたのですが、Tシャツを買いました。
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このTシャツのデザインは食堂にあるライトがデザインした照明です。まあ、これを観て分かる人はあまりいないと思いますがカッコいいので衝動買いですw


ということで、それほど大きくない建物ですが見どころが多すぎて2時間以上はぐるぐる周って写真を撮ってきました。特に建築好きの方は一度は訪れておきたい建物だと思います。
次回は引き続き、明日館のカフェをご紹介しようと思います。

 参考記事
  自由学園明日館のカフェ 【自由学園明日館 館内のお店】
  遠藤新 「自由学園明日館 講堂」(2018年12月)



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もしかする未来 工学×デザイン 【国立新美術館】

今日は写真多めです。日付が変わって昨日となりましたが、六本木の国立新美術館で「東京大学生産技術研究所70周年記念企画展 もしかする未来 工学×デザイン」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 東京大学生産技術研究所70周年記念企画展
 もしかする未来 工学×デザイン

【公式サイト】
 https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/event/moshikasuru/
 http://www.nact.jp/other_exhibition/u-tokyo-iis2018.html

【会場】国立新美術館 展示室3B
【最寄】乃木坂駅・六本木駅

【会期】2018年12月1日(土)~12月9日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構多くの人で賑わっていて、場所によっては人だかりが出来ていましたが概ね自分のペースで観ることが出来ました。

さて、この展示はタイトルの通り東京大学生産技術研究所の開設70周年を記念したもので、東京大学生産技術研究所(以下、東大生研)の研究成果を分かりやすく伝える内容となっています。元々、東大生研はこの国立新美術館の建っている場所にあった時代もあるということで、ゆかりの地での開催と言えそうです。展覧会は4章構成となっていましたので、写真を使ってご紹介して参ります。


<01 PLACE もしかする未来がうまれる場所>
まずは東京・駒場が拠点の東京大学生産技術研究所の研究所そのものを紹介するコーナーです。

こちらは写真家のGottingham氏による東大生研の写真シリーズ。
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中々個性的な研究所の様子が並びます。

こちらはそのうちの1枚。
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研究所というと実験器具などが沢山ありそうなイメージですが、こちらの研究室はIT企業みたいなスッキリしたイメージ。勿論、研究内容で色々あるようで、それぞれの部屋で異なる印象を受けました。


<02 PLATFORM もしかする未来のつくりかた>
続いてこちらは価値創造デザインの仕組みなどを紹介していました。

こちらは東大生研のS棟(1/30スケール)の模型
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こちらは現在の価値創造デザインの活動拠点となっている建物の模型のようです。駒場にあるのかな? あの辺は東大の施設だらけでどれだか分かりませんがw
 
東大生研のラボの一部が出張してきていました。
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こちらもカジュアルな印象を受けるかな。こういう場所で高度な研究が行われているんですね。


<03 PROTOTYPE もしかする未来の原型>
続いては今回の展示のメインとなる未来的なデザインが並ぶコーナーです。

こちらは「Cell Figure」という人型の作品。
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元々は同じ形で、コラーゲンのゲルと細胞で出来ているそうですが、細胞の働きでこのように形に違いが出てくるのだとか。ちょっとホムンクルスみたいなイメージで妖しげでワクワクしますw

こちらは「Penta:コンセプトモデル(1/2スケール)」 未来の住宅のプロトタイプです。
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ここで注目は骨組が集まっているジョイント部分で、これは3Dプリントして作ったものです。パーツを作れると自分で家を建てることも出来るようになるのだとか。アレンジも自由にできるようで、建築にも新時代が来そうな予感。

こちらは「Elastic Surface」 日本語にしたら伸縮自在の表面ってところでしょうか。実際に触ることができます。
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こちらも3Dプリンタで作られていて、柔らかく弾力のある触り心地となっています。3Dプリンタなら複雑な造りも簡単に実現できるのも未来的ですね。

こちらは「十亀折(そがめおり)の一体成型」というもので、これも3Dプリンタで作っています。
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3Dプリンタではヒンジを使わないでも一体で成型できるそうで、これは組み立てを一切していないそうです。まるで蛇腹のような感じ。

十亀折を圧縮するとこんな感じ。
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綺麗に収まって場所を取りません。宇宙ステーション建設などでの使用を検討されているとのことで、応用範囲も広そう。

こちらは「Al-dente」という3Dプリンタで作った人の顔のような形のオブジェ。
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エッシャーの絵にこんなのあったな…w 驚くのはこのスライス状のはすべて螺旋のようになっていて、特につなぎ目とかは無い点です。

顔のオブジェを広げようとすると、伸びるというよりは曲がります。
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これは3Dプリンタじゃないとできないような複雑な構造ですね。3Dプリンタは単に今までのものを再現するだけでなく、専用のデザインも生み出せる革命的な機械と言えそう。

こちらは「さまざまな握り心地のグリップ」
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正直、素材感が同じなので大同小異な気はしますが、メッシュ状と面になっているものでは明らかに握り心地が違いました。デザインによって触り心地にも影響が出るんですね。

こちらは「Ready to Crawl」という3Dプリンタの特性を用いた歩くロボットのシリーズ。
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虫みたいでちょっとキモいw しかし虫ってかなり合理的な造形なのでロボットに応用できそうですね。

動く様子がこちら。

予想以上に生物っぽい動きで一層キモいw センサーに反応して動くようになっていました。

こちらはトカゲみたいな形。これはリモコンが付いていました。

これも生きてるかのような有機的な動きに見えます。 他にダイオウグソクムシみたいなのもありましたw

こちらはタイトルを忘れましたが、同様に伸縮しているように見える3Dプリンタによるプロダクト。

これも見事で、もはや現代アートそのものと言った美しさです。これはインテリアにも活用できそう。

こちらは「Rami」と「miniRami」という競技用の義足。miniは子供用です。
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パラリンピックで観た記憶があります。これも3Dプリンタならではの構造で出来ているようです。

むちゃくちゃ速く走れる様子を映像でも紹介していました。
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動物の足のような形をしていて地面を蹴る反発を上手いこと生かしているように見えました。機能を極めると見た目も美しくなる不思議。

続いては打って変わって「浸水対応型拠点建築物」という水害に備える建築案。
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下のイメージは堤防の内側が水に使ってますが、この建物は水に浸からずライフラインの役割を担うようです。

模型もありました。一段高くなってるような構造です。
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水害が起きないようにダムや遊水地といった設備を作ったりしていますが、近年にも実際に決壊していますからね… あまり活躍する機会が来てほしくないけど、備えとして心強いデザインです。

こちらは「チタニウムスツール」 チタン製の椅子です。
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チタンは軽くて錆びにくくて丈夫 という加工品には非常に適した金属ですが、高価なイメージです。それは今の精錬の技術だと手間がかかるためのようですが、アルミも昔は同じような境遇だったことを考えると いずれは覇権を握る金属かもしれません。

こちらはメッシュ状のチタニウムスツール
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固くて丈夫だから板状より少ない材料で作れるこちらのほうが安上がりかも?? 中々カッコいいデザインだし欲しいw チタンが身近になるような研究に期待したいですね。

続いてこちらは映像作品。「幸せの四つ葉のクローバーを探すドローン」です。
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四つ葉のクローバーは0.001%しか無いそうですが、このドローンは必ず見つけてくれるそうです。機械やAIは形状の認識能力は人間の比では無いですからね。夢があるような夢をぶち壊すような発想で、可愛さとシニカルさがあって面白いw


<04 ARCHIVE もしかする未来の足跡>
最後の章はこれまでの東大生研の研究を振り返る内容でした。我々の現在は東大生研が過去に作った未来だったのかも。

こちらはロケットについての紹介。東大生研は日本のロケット研究の発祥の組織なのだとか。
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科博などでもペンシルロケットが展示されていたのを思い出しました。地上の星でも聞こえて来そうな壮大なプロジェクトです。

何やら未来的な雰囲気の車もありました。
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東大生研は車があまり普及していないころから自動車を研究していたようです。自動車だけでなく信号のタイミングで渋滞を軽減することなども東大生研の成果とのことで、我々も暮らしの中で確実にお世話になっていますね。鉄道好きとしてはこうした車の研究が「ワイドビューしなの」の車体にも活かされているという話に興味を持ちましたw

こちらは海中観測に使う品々。
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過酷な環境を探査するのが大変なのは想像に難くないですね。海底を知ることで地球そのものや生体も知ることが出来るので、かなり重要な研究だと思われます。


ということで、東大生研の凄さと新しい技術の面白さを楽しむことが出来ました。SF的なワクワク感があるので、ギークな人には特に楽しいと思います。この記事を書いている時点で最終日なので、気になる方はすぐにでもどうぞ。


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扇の国、日本 【サントリー美術館】

先週の土曜日に六本木ミッドタウンのサントリー美術館で「扇の国、日本」を観てきました。

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【展覧名】
 扇の国、日本

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_5/

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2018年11月28日(水)~2019年1月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんはいましたが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は日本で生まれ発展した扇を主題にしたもので、その歴史と共に多様な美術表現を紹介する内容となっています。扇は日本で発祥したのは分かっているものの その起源の詳細は不明のようですが、10世紀末には中国や朝鮮半島に日本の特産品と渡っていることが明らかになっているようです。扇は宗教・祭祀・日常用としての役割もありつつ身近な美術品であり、コミュニケーションツールとしても使われていたようです。その為、扇は日本人の求めた美のエッセンスが凝縮されているとも言えるようで、この展示ではその様子をテーマごとに章分けしていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<序章 ここは扇の国>
まずは明治11年(1878年)にパリで行われた万国博覧会に出品された扇が並ぶコーナーです。この頃、欧米ではジャポニスムが流行していて、それをさらに加速させたこの万博には幅広い時代と流派を網羅した100本の扇が出品されたようです。ここにはそのうちの数点が展示されていました。

1-6 長沢芦雪 「雀図扇面」
こちらは金地に墨で描かれた扇で、岩にとまってこちらを振り向く雀が描かれた作品です。雀はキョトンとした顔をして可愛らしい!w 一方、岩には滲みを使った濃淡で表現していて、それが苔むしたように見えるのが風情がありました。

1-3 狩野探幽 「山水図扇面」
こちらは遠くに雲間の山を望み、手前に楼閣やその周りの様子が描かれた扇です。こちらも金地に墨の濃淡で表され、優美な雰囲気があります。伝統的な山水のようでもあり、扇でも見応えのある作品でした。


<第1章 扇の呪力>
続いては祭祀に関するコーナーです。扇は大きく分けて2種類あり、1つは奈良時代に生まれた薄い板を綴じ重ねた「檜扇」で、もう1つはやや遅れて平安時代に生まれた骨に紙や絹を張った「紙扇」です。平安時代半ばには檜扇は冬扇、紙扇は夏扇とされたようですが、季節を問わず重要な装いには檜扇が正式とされたようです。ここでは神事などで使われた扇が並んでいました。

2 「彩絵檜扇」 ★こちら観られます
こちらは伝わった扇では最も古い品で、檜に彩色して楓や草花を表しています。かなりボロボロになっていますが、群青と緑青のぼかしなどもあって華やかな印象を受けます。解説によると、こちらは糸を通す穴がないので、実用ではなく広げて御神体として使われたとのことでした。扇って御神体にもなるんですね。

この隣には扇箱もありました。なお、10世紀末の『往生要集』には扇は願主が臨終の際に地獄に落ちるのを食い止める道具の1つとして書かれているようです。風を起こして熱地獄を払うと考えていたとのことでした。

17 九条兼孝 「後月輪殿扇次第」
こちらは月の満ち欠けの絵や細かい文字がびっしり書かれた扇です。何やら走り書きみたいに見えるのですが、これは儀式の進行を裏表に書いておいたカンペみたいなもので、当時の扇はメモ帳としての役割もあったようです。割と目立つので片面にしておけばバレなそうなのに…w やってることはパワポのアンチョコと同じですねw ちなみに、檜扇は笏や木簡を介して誕生したと考えられるようです。木簡を並べて束にして紐を通せば扇っぽくなりそうなので、確かにルーツになのかも。


<第2章 流れゆく扇>
続いては扇面散らしを題材にした美術品が並ぶコーナーです。扇面流しは京都の渡月橋から流して楽しんだのが発祥だそうで、多くの画家によって描かれたモチーフとなっています。ここには古今の扇流しを描いた作品が展示されていました。

26 27 狩野杢之助 「扇面流図(名古屋城御湯殿書院一之間北側襖絵)」
こちらは将軍専用の浴室の襖に描かれた襖絵で、川を流れる扇が描かれています。広がっていたり閉じていたりして、扇に描かれている画中画も楼閣、草花、鳥、月花など様々です。散らされた扇が雅な雰囲気で、お風呂を観ながら水に因んだ作品を楽しんだのかな? ロケーションに合わせた主題が面白い作品でした。

23 伝本阿弥光悦 「扇面流図屏風」
こちらは六曲一隻の屏風で、川を流れる扇面が描かれ、下の方には蛇籠なども見受けられます。この作品でも扇は開いていたり 半開きだったり 閉じていたりするかな。扇は料紙に和歌や漢詩が描かれていて、寛永の三筆の1人である本阿弥光悦の達筆も楽しめます。(伝なので本人であると確定しているわけではないですが) また、琳派の祖である俵屋宗達と交流を持っていた為か草花は宗達っぽさもありました。絵も凄いんですね…。

34 「舞踊図」 ★こちら観られます
こちらは三面から成る作品で、それぞれ扇を持って踊る女性像が描かれています。頭の上や横に手を伸ばして扇を広げていて、動きを感じるかな。扇面と着物も美しく、扇は一瞬の美しさを強調する役割があるようです。儚さの美意識とも重ねているとのことで、まさに日本的な美を表している作品と言えそうです。


<第3章 扇の流通>
続いては扇の流通や広がりについてのコーナーです。10世紀末には日本の特産品として大陸にも送られるようになり、日明貿易の頃には主要な輸出品になっていったようです。また、扇は季節の贈答品や日常に身につけるアクセサリー的な役割もあったようで、国内外の大量消費が扇の量産を促し美術と商業が結びつく嚆矢となったようです。ここにはそうした当時の様子が伺える品も並んでいました。

48 「扇屋軒先図」 ★こちら観られます
こちらは二曲一隻の屏風で、軒先で扇を作っている工房の様子が描かれています。京都が生産拠点で、紙を折ったり骨を通したり糊を運んでいたりと分業で大量生産しているようです。中には子供らしき姿もあって、結構忙しそうです。庶民の扇はマニュファクチュア的な感じで作ってたんですねえ。

この近くには1562年頃に中国に渡った相国寺の僧が扇1本で百科事典のセットと交換したというエピソードが書かれた日記もありました。国内外で大人気だったようです。

60 狩野派ほか 「扇面貼交屏風」
こちらは南禅寺に伝わる六曲八隻の屏風に240面の扇面を貼り付けたもののうち、1隻が展示されていました。金地に様々な主題の扇が貼り付けられていて、実際に使われた痕跡もあるようです。中国の故事や花鳥などをモチーフに画風も様々で、贈った相手の名前なんかもあるようです。まあ、今で言うところのコレクションシートみたいなものかなw リサイクルの美術とも言えるようですが、こういう収集癖はすごく身近な感じがします。 私もCDジャケットを部屋に並べたりしてましたので…w

この隣にも60面の画帳などもありました。作者の名前もあって、正しいコレクターぶりですw 他にも掛け軸に張ったものなど、扇を美術品にリサイクルするのは割とよく行われていたのかも。
なお、扇は今の価値でいうと3000円~10万円くらいだったようで、結構幅広い価格帯です。さらに特注品なんかもあったので、コレクションしたくなる気持ちも分かりますね。

この辺で上階は終わりです。階段を降りると垂れ幕に扇が舞い落ちる映像が流れていました。


<第4章 扇と文芸>
続いては扇と文芸、特に源氏物語などについてです。扇は各場面を端的に表わしているので、いくつかの場面を集めるとストーリー全体を楽しめるようにもなるようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

70 「酒呑童子絵扇面」
こちらは酒呑童子と源頼光の一行の戦いのクライマックスを描いた扇です。既に酒呑童子の首が撥ねられているのですが、首だけになっても襲いかかってきているようで恐ろしげな場面です。扇の形にモチーフが配置されているのが特徴で、物語を分かりやすく伝えるような構成となっていました。

73 「源平合戦扇面貼交屏風」
こちらは元々は六曲一双の屏風で1曲に5枚の扇面が並んでいるので合計60枚の扇面となるようですが、1隻のみの展示(30面)となっていました。それだけ揃うと物語のストーリーも見えてきて、ダイジェスト版のような印象を受けるかな。特に戦うシーンが多く、結構細かい描写となっていました。1つ1つがわかりやすい構成の絵が集まると絵物語みたいになるんですね。セリフがあったら漫画になりそうw

71 「源氏物語絵扇面散屏風」 ★こちら観られます
こちらも六曲一双のうちの1隻で、5×6で30枚の扇面が散らされています。扇は実際に使用されたもので、源氏物語の名場面をまとめて屏風にしているようで、ほぼ全編が揃っているようです。しかし普通は右から左へとストーリーになるはずですが、ここでは春夏秋冬の順で並んでいるとのことでした。絵柄は似ているので元々同じシリーズの扇だったのかな? 雅で見栄えのする屏風でした。

この近くには扇絵の人物が分からなくなって占いで判定する「花鳥風月物語絵巻断簡」という物語もありました。当時からこれ誰だ?となるのはよくあったそうで、花鳥風月物語では源氏物語の光源氏と伊勢物語の在原業平の区別がつかないで占ったようです。当時の人はむしろ謎解きを楽しんでいたようで、色々楽しみ方があったんですね。


<第5章 花ひらく扇>
続いては扇の名品などが並ぶコーナーです。ここには豪華な顔ぶれの作品が並んでいました。

86 鳥居清広 「ぢがみうり 中村富十郎」
こちらは扇型の容器を背負って売り歩く 女性のように白い肌の男性を描いた浮世絵です。この人物は「地紙売り」という扇を売り歩く人だそうで、イケメンが多かったことから浮世絵でも色男として描かれることが多いようです。そのせいか八頭身くらいあるスラッとしたスタイルで、粋な雰囲気の人物でした。

近くには地紙売りを美人に置き換えた作品もありました。

96 宗達派 「扇面貼交屏風」
こちらは六曲一隻の扇面を貼った屏風で、金地に56の扇が開いたり閉じたりしています。折り跡がないので元々貼るために作られたようですが、物語や武士の姿など緻密に描かれています。ちょっと劣化が進んでいるのが残念な感じもするかな。解説によると、これらの絵は保元物語が多めとのことでした。

この隣にも琳派風の扇面散らしもありました。また、本阿弥光悦の「扇面鳥兜螺鈿蒔絵料紙箱」も見事です。

101 尾形光琳 「達磨慧可図」
こちらは水墨の扇で、背中を向けた達磨と、弟子入りしようとしている慧可の姿が描かれてます。この慧可は弟子入りするために自ら左手を切り落として差し出すのですが、そのエピソードのためか静かながらも緊迫した雰囲気が漂っています。簡素に描いているものの、尾形光琳らしい雅さもあって正に名品といった感じでした。

126 酒井抱一 「雷神図」
こちらは俵屋宗達をはじめ琳派が模倣していった風神雷神図のうちの雷神を描いた扇です。勿論、風神もあるようですが今回は展示していませんでした。やや色合いが薄めですが、滲みを使っていたり洒脱さもあって酒井抱一らしさを感じました。


<終章 ひろがる扇>
最後は扇以外の扇をモチーフにした作品のコーナーです。

まずは扇型の釘隠し、刀の鍔、目貫などがあり、扇の形そのものも愛好されていた様子が伺えました。扇って形だけでも何故か優美な印象を受けますね…。

166 海北友雪 「一の谷合戦図屏風」 ★こちら観られます
こちらは六曲一双の屏風で、右隻は青い背景に金の扇の画中画に熊谷直実、左隻は金の背景に青い扇の画中画に平敦盛が描かれています。その色の対比が非常に強く、わざわざ扇の形にしている点も面白いです。解説によると、屏風を折りたたむのを扇を折りたたむのに見立てているとのことで、その発想にも驚きの作品でした。

141 「織部扇面形蓋物」 ★こちら観られます
こちらは扇型の蓋付きの織部で、蓋の表面には竹骨を表したような凹凸まで付けられています。模様は幾何学的で先進性も感じるかな。先述のように扇は邪気を払うものという考えもあって、この形にしたのだとか。今回の展示でこの辺の考え方を知ることが出来たのは大きな収穫だったと思います。

この辺には同様の扇形の陶器がいくつかありました。尾形乾山の作品もあります。他には扇が描かれた小袖なんかもあって、扇そのものがモチーフとして広く使われていることが伺えました。そして最後にシーボルトによる本があり、そこには出島は扇のような形と書いてあるとのことでした。外国にとって日本はまさに扇の国だったということでしょうねw


ということで、普段よく観ているけれど意外と知らなかった話も多くて楽しめました。今後の美術鑑賞にも役立つと思いますので、特に日本美術に興味がある方は是非どうぞ。


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MIDTOWN CHRISTMAS 2018 (ミッドタウンクリスマス2018)

今日は写真と動画が中心です。前回ご紹介した展示を観た後、六本木ミッドタウンの毎年恒例のミッドタウンクリスマスのイルミネーションを観てきました。

DSC07831.jpg

公式サイト:
 http://www.tokyo-midtown.com/jp/xmas/

期間:
 2018/11/13(火)~12/25(火)

こちらのイルミネーションは毎年11月半ばからクリスマスまで行われているもので、マンネリ化しているのが否めませんが今年も近くに行ったついでに観てきました。今回もちょっとだけ去年と違ったかな。写真と動画を使ってご紹介していこうと思います。

参考記事:
 MIDTOWN CHRISTMAS 2009 (ミッドタウンクリスマス2009)
 MIDTOWN CHRISTMAS 2010 (ミッドタウンクリスマス2010)
 MIDTOWN CHRISTMAS 2011 (ミッドタウンクリスマス2011)
 MIDTOWN CHRISTMAS 2012 (ミッドタウンクリスマス2012)
 MIDTOWN CHRISTMAS 2017 (ミッドタウンクリスマス2017)

今年のマップはこんな感じ。
DSC07756.jpg
毎年、ミッドタウンの正面あたりにもオブジェがあるのですが、今年はありませんでした。他は概ね同じです。

ミッドタウンの中もクリスマスの飾り付けをしていました。
DSC07754.jpg
下に見えているのはクリスマスマーケットです。結構多くの人で賑わっていました。

こちらはサンタツリー
DSC07837.jpg DSC07838_20181206232634301.jpg
沢山のサンタクロースから成るツリーです。これも毎年恒例かな。

ミッドタウン周辺のツリーイルミネーション
DSC07826_2018120623235189b.jpg DSC07824.jpg
今年もエンヤツリーが一際目を引いていました。これぞクリスマスツリーって感じの装飾。

こちらはスターライトロード。
DSC07829.jpg
青が神秘的な雰囲気です。撮り忘れましたが、シャンパンイルミネーションも健在です。

こちらは昼間に撮ったスターライトガーデン2018
DSC07757.jpg
今年はこの丸っこいが今までとちょっと違うポイントかな。特別演出の「しゃぼん玉イルミネーション」を12月16日(日)までやっているようです。

でっかいハリー・ウィンストンの看板が出てました。
DSC07760.jpg
去年は東芝がスポンサーをやってましたが、毎年変わるのかな? 東芝は流石にスポンサーやってる場合じゃないでしょうね。

夜になってから観るとこんな感じです。
DSC07835_2018120623234113f.jpg
冒頭の写真は眼の前で観られるポジションですが、この歩道橋の上辺りが一番見やすいところです(その分混んでます。)

せっかくなので動画。

今年はオレンジ色が混ざって赤々とした印象です。

上から観るとこんな感じ。

一斉に柱が立つような演出が見どころかな。

最後にもう1つ。

宇宙的な感じがするのは例年通りでした。

ということで、今年も何だかんだで楽しんできました。今年は六本木の展示はボナール展くらいしか大きいのが無いですが、もし六本木に寄る機会があったらついでにカメラを持って見に行ってみるのもよろしいかと思います。


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アメリカ近代写真の至宝 ギルバート・コレクション展 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

前回ご紹介した展示を観た後、六本木ミッドタウンの中にあるFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「アメリカ近代写真の至宝 ギルバート・コレクション展」を観てきました。この展示は既に終了していますが、今後の参考にもなりそうな内容だったので記事にしておこうと思います。

DSC07742.jpg

【展覧名】
 写真表現の源流は、ここにある。
「アメリカ近代写真の至宝 ギルバート・コレクション展」 

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/1811090123.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅

【会期】2018年11月9日(金)~11月28日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
意外と混んでいて場所によっては人だかりができる感じでしたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は京都国立近代美術館が所蔵する写真コレクション「ギルバート・コレクション」の中から「近代写真の父」と称されるアルフレッド・スティーグリッツをはじめとしったアメリカ近代写真の10人の写真家の作品を70点ほど集めたもので、無料とは思えないほどに充実した内容となっていました。ギルバート・コレクションは、アメリカのアーノルド&テミー・ギルバート夫妻が20年に渡って収集したコレクションの中から約1000点が京セラに購入され、後に京都国立近代美術館に寄贈されたもので、特に1930年代から50年代のコレクションが充実しているようです。アーノルド・ギルバート氏は自身も写真家だったようで、点数だけでなくコレクションの質も素晴らしく、それを東京で観られるというのは中々貴重な機会でした(20日程度しか開催されていなかったのが残念なところです。)
展覧会は写真家ごとにブロックになっていましたので、各写真家ごとに簡単に振り返ってみようと思います。


<冒頭>
冒頭にはアーノルド・ギルバート氏による「無題」という写真がありました。手を撮った写真ですが、先進的な作風で 高い審美眼を持ってコレクションを蒐集したもの頷けました。

また、冒頭には「ストレート・フォトグラフィー」の登場についての解説がありました。19世紀後半の写真は絵画の様式を模したものだったのですが、その模倣から脱すべく現れたのが「ピクトリア写真」で、これは実際には依然として情感を重視した絵画的な雰囲気を残していたようですが、19世紀末までに世界的に流行したようです。しかし1900年初頭にアルフレッド・スティーグリッツは「ストレート・フォトグラフィー」提唱し、レンズのシャープで直截な描写を生かした写真独自の表現を目指しました。この「ストレート・フォトグラフィー」は、フォト・セセッション(写真分離派)を中心として広まり現在でも発展しているようです。今回はこの「ストレート・フォトグラフィー」にまつわる作品が並んでいます。


<アルフレッド・スティーグリッツ>
アルフレッド・スティーグリッツは「三等客室」が展示されていました。この写真は船の人々を撮った有名な作品で、階段の上は紳士たち 階段の下は貧民のような人たちが埋め尽くしていて、社会階層の縮図のような対比となっています。この写真は当時から評判を呼び、写真におけるキュビスムとも評されたのだとか。確かにこの写真には情感よりも現実を感じるかな。(画面的にはキュビスム的ではないし、キュビスムも絵画じゃないか というツッコミをしたくなりますがw) 写真の歴史を変えた1枚と言えそうです。

こちらは今回の看板の一部をアップしたもの(撮影不可の展示でした)で、アルフレッド・スティーグリッツを撮った写真(イモジェン・カニンガムによる写真)です。
DSC07748.jpg
元々は画家を目指していたらしく、ピクトリアリズム(絵画的写真)に強く影響を受けていたのですが、ストレート・フォトグラフィーを提唱するに至りました。そう言えばアルフレッド・スティーグリッツの印象派的な作品も見覚えがありました。
 参考記事:モネ それからの100年 感想前編(横浜美術館)


<ポール・ストランド>
こちらは今回の看板の一部をアップしたもの(撮影不可の展示でした)で、「白いフェンス, ニューヨーク州ポートケント, 1916年」という作品です。
DSC07750.jpg
作者のポール・ストランドはスティーグリッツに影響を受けて写真家を志した人物で、これを撮った際に「何故撮ったのか?」と聞かれ「白いフェンスが魅力的だった。生き生きとして非常にアメリカ的で、その国の一部を表していた」と答えたそうです。ありふれた光景を題材にした点でピクトリア写真と決別した意味でも写真史上 最も重要な作品と言えるのだとか。私が観るとこれも近代絵画にありそうに思えるのは現代人の感覚だからでしょうか…w それでもアメリカ的という言葉は非常に端的にこの作品を表していますね。構図が面白いセンス溢れる作品です。


<アンセル・アダムス>
こちらは今回の看板の一部をアップしたもの(撮影不可の展示でした)で、「月とハーフドーム, ヨセミテ・ヴァレイ, 1960年」という作品です。
DSC07751.jpg
この写真家は先程のポール・ストランドに出会って写真家を志し、グループf.64を結成した1人です。この写真でも分かる通り、自然の中の美や崇高さをテーマにした写真が多いようで、雄大な光景を撮ったものもあります(それも私には絵画的な主題に思えるのですが…w) 他に、ゆで卵を輪切りにする器具を撮った静物など、独特の視点の写真が並んでいました。
 参考記事:ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション (東京都美術館)


<イモジェン・カニンガム>
この人もグループf.64を結成した1人です。ここには「タイサンボクの花」という花を接写した写真があり、柔らかくて艶めかしい雰囲気の作風となっていました。絵画で言うとジョージア・オキーフの作品を思い起こすかな。他には葉っぱを撮った抽象画のような視点の妙が楽しめる作品もありました。


この先はグループf.64のコーナーとなっていました。グループf.64のメンバーはエドワード・ウェストンと息子のブレット・ウェストン、先述の2名(イモジェン・カニンガム、アンセル・アダムス)らで、絞り値の最大がf.64であることがグループ名の由来となっているようです。


<エドワード・ウェストン>
こちらは今回の看板の一部をアップしたもの(撮影不可の展示でした)で、「ヌード, 1936年」という作品です。
DSC07744.jpg
この女性の滑らかで柔らかい肉体表現が何とも優美。シュルレアリスム的でもあってまさに傑作です

こちらは今回の看板の一部をアップしたもの(撮影不可の展示でした)で、「貝, 1927年」という作品です。
DSC07746.jpg
こちらも貝というありふれたモチーフの魅力的に撮った作品。質感も感じつつどこか女性的な柔らかさも感じます。

エドワード・ウェストンは他にも砂丘などを撮った作品もあり、曲線や質感などに魅力を感じる作風でした。


<ブレット・ウェストン>
今回最も好みだったのがこのブレット・ウェストンです。サボテンの接写や、誰もいない「ガラパタビーチ カルフォルニア」、日本家屋の窓と壁を撮った「ジャパン」、ヴェニスのゴンドラの舳先を撮ったものなど、様々な被写体があるのですが、共通して幾何学性や構成の美しさが目を引きました。干物を焼いている所や海の養殖場など日本の風景を撮ったものもいくつかあり、日本との関係性も感じられます。多様な表現なのに芯がある感じが素晴らしかったです。

<ウィン・バロック>
こちらの写真家は、森の中の女性や子供を撮ったものが並び、裸の女の子が倒れ込んでいるような写真もあります。流石に演出っぽい感じがしますが、神話的な感じがするかな。(絵画的やないか!とまた思ってみたりw) 似たような裸婦がいくつかいたので、お気に入りのモデルと主題だったのかも。

他に流木や倒木を撮った写真や、テールライトをトリミングした写真もあって、だいぶ作風が違うように思いましたがこちらはストレート・フォトグラフィーらしい感じで面白い作品郡でした。(これはマイナー・ホワイトのコーナーだったかも)


<アーロン・シスキン>
こちらには「ニューヨーク」というもはや壁のシミみたいな作品がありましたw 壁の落書きのような作品もあって、一種の抽象絵画のようでもあるかな。写真の世界にもこういう抽象的で斬新な作品が1940年代半ばに既にあったのが驚きです。


<ハリー・キャラハン>
こちらもかなり気に入った写真家。「エレノア」という女性が頭の後ろで手を組む姿のシルエットの写真が特に良くて、白黒くっきりして簡潔かつ洗練された印象を受けました。ある意味、マティスに通じるものを感じます。

他にマイナー・ホワイトのコーナーもあったのですがメモを取り忘れました。


ということで、面白い写真家ばかりで少数ながらも かなり楽しめました。1人1人個展を改めて見たいと思わせる傑作ばかりです。私はまだまだ写真には疎いので、この展示で写真の歴史を知ることが出来たのも良かったです。残念ながら既に終了しましたが、記憶に留めたい展示でした。


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