関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

夢二繚乱 【東京ステーションギャラリー】

10日ほど前の土曜日に東京ステーションギャラリーで千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」を観てきました。

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【展覧名】
 千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」

【公式サイト】
 http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201805_yumeji.html

【会場】東京ステーションギャラリー
【最寄】東京駅

【会期】2018年5月19日(土)~ 7月1日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
予想以上に多くの人で賑わっていて、場所によっては人だかりができるような感じでした。たまに列を作るくらいの混み具合です。

さて、今回は大正期に活躍し、現在でも人気の高い竹久夢二の大規模な回顧展となっています。この展覧会には夢二が関わった様々な媒体の作品が500点以上も展示されていて、初公開の初期の作品や『出帆』という自伝小説に関する作品なども並んでいました。私は夢二は好みでないので満足度は低めにしていますが、ファンには嬉しい内容ではないかと思います。展覧会は4章構成となっていましたので、各章ごとにご紹介していこうと思います(今回はあまりメモを取っていませんのでごく簡単に)


<第1章 夢二のはじまり>
まずは竹久夢二の若い頃のコーナーです。夢路は若い頃に新聞や雑誌に絵や詩を投稿して生活していたそうで、1905年6月に投稿した「筒井筒」という作品が入賞したことと「夢二画集 春の巻」の刊行が転機となり人気作家へとなっていったようです。ここには夢二が19歳の時に撮影した写真や、画文集『揺籃』という肉筆の中で最も若い頃の作品もあります。これは着物の女性が子供を抱いている姿が描かれていましたが、外国文学を翻訳したもののようです。若い頃からこういう仕事に携わっていた様子が伺えます。

その先には鉛筆や水彩などで描かれた作品があって、いわゆる夢二式美人と言われるスタイルで儚い雰囲気の女性像が早くも登場します。ちょっと拙い感じが好きになれない所ですがw 他には雑誌『中学世界』(筒井筒を投稿した雑誌)の編集者 西村渚山との書簡があり、この人が夢二の才能を見出したことが解説されていました。また、「夢二画集 春の巻」を始めとした画集がいくつかあり、これが出世作となったようです。

その先の小部屋には「夢二画手本」という絵の手本や子供向けの仕事のコーナーがありました。これらはシンプルな絵や童話的な雰囲気の作品で、子供向けの仕事も広く支持されたことが伺えました。…後で出てきますが、夢二が私生活がむちゃくちゃなので子供向けの仕事をしても良いのだろうか?などと思いながら観ていましたw


<第2章 可愛いもの、美しいもの>
続いては女性や子供に手の届く美術に関するコーナーです。夢二は正式に結婚した唯一の女性である岸たまきが経営する港屋に自らのデザインを提供したようで、日本橋呉服町にできた「港屋絵草紙店」は夢二の千代紙や便箋、封筒などを取り扱う一種のブランドショップだったようです。(離婚した時に自活出来るようにとこの店を出したそうです。) アール・ヌーボーや江戸趣味などを取り入れて若い女性に人気だったようで、若い画家たちも集まる一種のサロン的な面もあったようです。
また、この時期には たまきをモデルとして瞳の大きな女性像を描いていて、これが夢二式美人と呼ばれるスタイルの確立に繋がります。どこか儚げで陰りのある美人で、夢二の代名詞的なモチーフです。この先にもこのスタイルの美人画が多く出てきます。

まず肉筆画の掛け軸があり夢二式の美人が3点程度並んでいます。とろっとした表情の美人たちで色っぽい独特の雰囲気があり、細部は大胆に描いてあったりします。さらにこの時期は絵葉書、雑誌、挿絵、装幀など様々な活動を行っていたようで、少し先には絵葉書やテキスタイルが並んでいました。素朴な感じもありつつアール・ヌーボー調のテキスタイルもあったかな。絵葉書に関しては苦学生時代の頃にも早稲田の絵葉書屋に野球の早慶戦を描いた肉筆絵葉書を売り込んで生活費を稼いでいたのだとか。展示品の中には何故か鎧兜を着たり大工の格好で野球する様子が描かれた絵葉書なんかもありますw  しかしやはり女性像の絵葉書が人気だったようで、芸者や海の女を描いたものがありました。ちょっと変わった所では戦時下の人々の生活を描いたものがあり興味を引きました。

その先には装幀の仕事が並んでいます。夢二は他著の装幀300冊、自著の装幀57冊に携わったそうで、これも多彩な作品となっています。原画の横に書き込みで「中央キル」とか指定もあって実際の使われ方の指示なんかも分かりました。

その後は「子供之友」や「コドモノクニ」といった子供向けの雑誌と挿絵が並んでいます。楽しげな子供を描いているのですが、中にはマティスの「ダンス」を模したような作品(手をつなご)なんかもあって、意外な印象を受けました。


<第3章 目で見る音楽>
続いては楽譜の表紙などのコーナーです。夢二はセノオ楽譜などの表紙を手がけていて、世界各国の様々なイメージを取り入れて描いています。ここには壁一面に楽譜の表紙が並んでいるのが圧巻で、これは今回の展示の見どころと言えそうです。題材は各楽曲の国や時代を考慮したものとなっていて、絵柄自体もそれに寄せているような感じでした。他にも「新小唄」や「中山晋平作曲全集」、童謡といった楽譜集なんかも並んでいます。

この先には画家としての夢二の側面を紹介するコーナーがあり、当時の個展に出品した作品もありました。「コーヒーと女」という作品では手を組んで肘をついた姿勢でコーヒーを飲む女性が簡素な輪郭と少ない色数で描かれ、大正時代の洒落た雰囲気がよく出ていました。また、「海辺風景」という作品では寂しげな風景が漂っていて、ちょっと夢二の作品にしては珍しい気がしました。他にも着物の女性が振り返る様子が描かれた作品では色白で儚い女性が色っぽく、これが一番良い作品に思えました(タイトルは「早春第一枝」だったかな。うろ覚え)

さらにその先には『婦人グラフ』の表紙が並んでいました。この雑誌はグラビア詩で彩色木版を使った高級誌だったそうで、夢二も人気挿絵画家の1人でした。


<第4章 出帆>
最後は昭和2(1927)年に都新聞で連載された『出帆(しゅっぱん)』という自伝小説についてのコーナーです。これは登場人物の名前は変えてありますが、夢二が愛した女性たちや事件などが綴られたもので、素朴なデッサンと共に思い出が語られます。 …と書くと何だか美しい思い出のようですが全く違いますw 出てくる人物がみんな畜生だらけで、特に夢二はとんでもなく酷いw どれも濃すぎて波乱しかないのですが、少し例を挙げると唯一の妻となった たまき が病気になった時、医者を迎えに行く!と貯金通帳を持って出ていき、そのまま東北に雪見に旅行しに行って年末に帰って来たとか、刃傷沙汰になって別れたとか… 後半はお花(お葉)という元モデルの女性の話が多いのですが、この人も中々パンチの効いた人物で、後に心労で倒れてたりもします。 そんな話を新聞に載せるのだから竹久夢二は凄いw 勿論、この連載は当時大きな話題になったそうで、夢二は連載後に海外へ旅立ったそうです。
この章には134点の原画と共にそうした女性関係の年表があるので、それを読むだけでも夢二の人物像が想像できると思いますw


ということで、非常にボリュームのある内容だったと思います。とは言え、私はやはり夢二の作風は好きにはなれないかな。 「出帆」の畜生エピソードは面白かったですがw ファンの方には新しい発見もあると思いますので、夢二好き向けの展示だと思います。



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創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃- 【森アーツセンターギャラリー】

1ヶ月以上前のゴールデンウィーク中に、六本木の森アーツセンターギャラリーで「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃-」を観てきました。

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【展覧名】
創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃-

【公式サイト】
 https://shonenjump-ten.com/

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅

【会期】2018年3月19日(月)~6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
割と空いていて快適に鑑賞することができました。以前のVol.1の時はやけに厳しい鑑賞ルールが煩わしかったですが、今回はそれが解消されてたように思います。
 参考記事:週刊少年ジャンプ展VOL.1 創刊~1980年代、伝説のはじまり (森アーツセンターギャラリー)

さて、今回のこの展示は週刊少年ジャンプの歴史を辿るもので3期に分かれて展示が行われています。今期はvol.2と位置づけられていて、最高の売上を記録した黄金期の90年代に連載された40程度のタイトルの原画などが展示されていました。簡単なメモだけ取ってきたので、会場の様子をさらっとご紹介していこうと思います。

まず最初に壁一面にジャンプの紙面が貼られた部屋があり、ここでしばらく待たされます。vol.1の時もそうでしたが、この先に映像があって入る人の人数を調整する感じです。 …とは言え、この日はガラ空きでしたw そして映像の部屋は2部構成となっていて、1部は90年代の漫画のコマを使ってスピード感のある紙芝居みたいな映像が流れます。(これもvol.1と同じ) 続いて2部はドラゴンボールのフリーザ戦で悟空が超サイヤ人になる辺りを同様の映像で流していました。この辺の映像は既存のものを切り貼りしただけなので、別に何とも思わないかな。それよりも当時の制作風景とかインタビューとか、もっと他に良い映像が無かったのかと疑問です。

その後は各漫画の原画が並んでいます。基本的には1作品につき3~5枚程度で、人気作は10~20枚くらいです。人気作は展示スペースも作品に合わせた壁紙になってたりします。 原画は割と見開きとかカラーの時の原画が多いかな。当時読んでいた人には見覚えのあるシーンばかりなので、往年のジャンプファンには嬉しい原画と言えます。一方でそれほど有名でない作品は原画の数が少な過ぎるのがちょっと残念ですが…。ここから先は有名作のコーナー別にいくつかご紹介します。

「DRAGON BALL」鳥山 明
ここはサイヤ人が襲来した頃からブウまでの原画が並んでいました。たまにカラーの原画もあって、この辺は当時みんな毎週楽しみにしていたのを思い出しました。まあ、最近でもアニメの再放送とかやってるんで身近な感じではありますがw 他には関連のグッズがあって、消しゴム(キン消しみたいな)や、スカウターの玩具、ゲームなども展示されていました。ドラゴンボールの格ゲーは友達が集まって徹夜で延々やったのを思い出して何とも懐かしいw 他にもカードダスなんかもありました。この辺のグッズは80年代のほうが盛り上がっていたような気がします。(全体的にグッズの揃えはvol.1の方が充実してたように思います)

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」秋本 治
今回のこち亀は派出所を壁紙で再現したようなブースとなっていました。アニメの歌なんかも流れて雰囲気を出そうとしていますが、割とチープな作りですw ここには100巻頃までの原画が並んでいて、何度も繰り返し読んでいた私には感慨深いものがあります。また、ここにも関連グッズがあって、超合金のフィギュア等もありました。これが造形がイマイチというか… こち亀好きとしては原画以外の部分はもっとどうにかなったろ!と言いたくなるような中途半端なブースでした。

「ジョジョの奇妙な冒険」荒木飛呂彦
今回のジョジョは3部終盤から5部の内容となっていて、カラー原画8点とキャラクターの切り抜きの壁画みたいなものがありました。原画が少ないのが非常に残念ですが、この夏に国立新美術館でジョジョ展をやるのでそちらに期待といったところでしょうか。

割と好きな作品の扱いが酷くてこの辺では逆に怒りが湧いてきました。
その先には「マジカルたるルートくん」や「ダイの大冒険」なんかのコーナーもありました。ダイの大冒険は見開きの原画やメンバーの必殺技の原画があったので、ここは結構楽しめたかな。他には4~5枚ずつ「ジャングルの王者ターちゃん」「花の慶次」「山田太一」「変態仮面」など懐かしい面々もありました。

「幽☆遊☆白書」冨樫義博
幽遊白書はレベルEと一緒に20枚くらいの原画があり、カラーも少しありました。暗黒武術会のシーンが多めかな。仙水編とか魔界編は1枚程度だったように思います。レベルEはカラーが2枚だけなのでおまけ程度です。 幽遊白書は暗黒武術会の辺りが最高に盛り上がった気がするのでこのチョイスは妥当かも。今観てもカッコいい作風で、これだけのクオリティでも昔は今ほど休載しなかったのになあなんて思いながら観ていました。(仙水辺りから怪しかったけどw) 他には2等身位の人形とか、ゲームなんかもありました。

その先には森田まさのり の「ろくでなしBLUES」12点と「ルーキーズ」5点のコーナーもありました。これは毎回飛ばしてた漫画なので思い入れはありませんw

「SLAM DUNK」井上雄彦
多分、今回最も原画が充実してたのはこのコーナーじゃないかな。20点ほどの原画が並び、名シーンとされる三井が安西先生に「バスケがしたいです」と言うシーンなんかもありました。見開きのダイナミックな原画もあって、湘北メンバーはそれぞれ4枚くらいずつあったと思います。カラーは3枚、大型ポスター5枚、山王戦の映像なんかもあります。この映像は残り試合時間47.5秒のシーンをコマで映すもので、結果を知っていてもこれは見入ってしまいました。今も色褪せない名シーンですね。

この先には「アウターゾーン」や「珍遊記」、「ボンボン坂高校演劇部」「忍空」といった人気作も3~4点ずつ並んでいました。アウターゾーンはもう一度読み返したいなあ。

そして、ここに1990年代のジャンプの歴史を世相と共に紹介していました。1994年に達成した653万部は積み重ねると富士山52体分、縦に並べると六本木ヒルズから沖縄の那覇市までの距離に匹敵するのだとか。もうこの先はこの記録を抜けそうもないので、当時の勢いの凄さが一層よく分かります。

ここは撮影可能でした。こちらが653万部の号。
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知らないのが3つくらいあるけど、流石といったメンツです。

「るろうに剣心」和月伸宏
最近作者がやらかして飛天御剣流書類送検とか言われていましたが、ちゃんと展示されてて良かったw(続編の再開だそうで何とか立ち直ったw) ここには部屋の中央の硝子板に「天翔龍閃」や「火産霊神」「牙突」「回天剣舞・六連」といった各キャラクターの必殺技の絵が並び、壁際に20点程度の原画が並んでいました。やはり志々雄編が一番多くて、人誅編は2~3点くらいかな。原画が多くて、動きを感じる絵を楽しめました。 他にカードダスとかもあったと思います。

この近くには梅澤春人の「BOY」「HARELUYA」のコーナーや、「地獄先生ぬ~べ~」6点程度もありました。

「すごいよマサルさん」うすた京介
ここは15点でした。ここではPENICILLINのロマンスが流れてて、この曲とこのアニメの絶妙な組み合わせが思い出されましたw メソのぬいぐるみとかボケステの雲とか、当時のギャグが蘇ってきた感じの品が置かれています。

この先にはキャプテン翼(ワールドユース編)、マキバオー、モンモンモン、封神演義、ラッキーマンなんかも4~8点程度ありました。

「遊☆戯☆王」高橋和希
ここも原画20点くらいだったかな。しかしここは原画だけでなく遊戯王のカードゲームのカードも並んでいて、むしろカードのほうが充実しているような気がします。 ちょっと何版とかまでは分かりませんが有名なカードが並んでいました。遊戯王もMTGみたいなカードゲーム中心になってからこんなに長生きするゲームになるとは当時は予想もしなかったw

その先は「王様はロバ」「真島クンすっとばす」「I's」「電影少女」「ワイルドハーフ」「テンテン」「ホイッスル」「ライジングインパクト」「明稜帝梧桐勢十郎」「MIND ASSASSIN」などが少しずつありました。この辺は読んでなかったので原画を観てもピンと来なかったw

こちらは出口付近の撮影コーナー。
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今回の展覧会に寄せた各漫画家のコメントなんかもありました。

そして最後に次回のVOL.3に先駆けて「世紀末リーダー伝 たけし!」「COOL RENTAL BODYGUARD」「ZOMBIEPOWDER.」「カラクリ」「ROMANCE DAWN」が紹介されていました。ROMANCE DAWNは尾田栄一郎の作品で、見た目はワンピースそのものです。同様にカラクリは岸本斉史の作品で「NARUTO」のプロトタイプ的な感じが出ていました。

ショップは相変わらずレジは1回のみというルールでした。


ということで、鑑賞ルールが改善されて快適になった一方で、原画以外の展示品や会場の装飾は前回よりもショボくなっていた感じがします。この内容でルーヴル展などの本格的な展示よりも高い2000円というのは如何なものかと思います。(記事化を後回しにしていたのもあまりお勧めできるものじゃない為です。) ジャンプ好きには往年の思い出が蘇って来るとは思いますが、あまり満足という程でもありませんでした。次回のvol.3は撮影可能な所も増えるようですが、思い入れが無いので行かないのは確実です。

おまけ:
今回も会場のすぐ近くでジャンプカフェをやっていました。
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西洋古版画にみる「複製」と「創作」 【町田市立国際版画美術館】

前々回・前回とご紹介した町田市立国際版画美術館の特別展示を観た後、常設室で 西洋古版画にみる「複製」と「創作」 というミニ企画展も観てきました。こちらは撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介しようと思います。

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【展覧名】
 西洋古版画にみる「複製」と「創作」

【公式サイト】
 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2018-388

【会場】町田市立国際版画美術館
【最寄】町田駅

【会期】2018年4月11日(水)~6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて今回の展示は常設室の無料で観られるもので、原作がある作品を版画にした「複製版画」などが並んでいました。対になるのは「創作版画」で、レンブラントやデューラーのように自分で絵も版も作ったものですが、「複製版画」は原作の画家(過去の名品含む)・版画家・版元といった共同作業で作られたようです。複製とは言え独自の解釈もされることがあり、今回はそうした様子も垣間見られるような内容となっていました。先述の通り撮影可能となっていましたので、詳しくは写真と共にご紹介していこうと思います。

版刻:マルカントニオ・ライモンディ 原画:ラファエロ・サンティ? 「『美徳』より 賢明」
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理想的な均整の取れた裸婦像。腕の辺りに若干の硬さがあるようにも思えますが、優美な肉体をしています。ラファエロはいち早く版画の潜在能力に気づいて、自らの作品を版画にして弟子の育成にも活用したのだとか。

当時は何枚も作り出せる版画によって素描を普及させる役割が重視されたようです。版画によって他の作品に転用されたりアイディアが伝えられたり、手本になっていきました。

版刻:マルコ・デンテ 原画:バッチオ・バンディネッリ 「嬰児虐殺」
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かなり多くの人達が色々なポーズで描かれています。当時のイタリアでは人物表現の多様さや人数の豊富さも評価されたらしいので、この絵は素描の宝庫とも言えそう。あちこちで子供が死んでるのはキリストの身代わりになった子どもたちでしょうね。

模刻:ニコラ・ベアトリゼ 版元:アントニオ・ラフレリ 「嬰児虐殺」
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さっきのと同じやんけ!と思った方は私と同じ反応ですw それもそのはず、こちらは先程の模刻となっていて高度な間違い探しみたいになってます。しかしよく観るとこちらの方が陰影が強めになっているようでした。版画家が変わると同じ絵でも解釈が違うんですね。

版刻:ウーゴ・ダ・カルピ 原画:ラファエロ・サンティ 「ダヴィデとゴリアテ」
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こちらは元々はラファエロの版画を作っていたライモンディが線刻した複製版画があったようで、それを「キアロスクーロ(明暗)」という技法で翻案したものです。「キアロスクーロ」は16世紀初めにドイツで生まれた技法で、線を表す板(ラインブロック)と色面を表す板(トーンブロック)を使って刷られているようです。その名の通り明暗が強めで遠近感や立体感がよく表れているように思えます。 こうした「キアロスクーロ」は複数の版を高度が必要なので高価であると共に、美しさ・希少さからコレクターズアイテムにもなったのだとか。

版刻:ジョルジョ・ギージ 壁画:ミケランジェロ・ブオナロティ「『システィーナ礼拝堂天井画の預言者と巫女』より  預言者エゼキエル」
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エゼキエルはバビロン捕囚の頃の預言者で、これはシスティーナ礼拝堂の天井に描かれたものを版画化したものです。ここにはこうしたミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井壁画の部分画が並んでいて、版画だけで天井画を観て回れる感じ。現地に行けない人や、下から観るだけでは見えづらい場所も手軽に観ることができるので重宝されたようです。ちょうど現在のインターネット上で写真を共有するような感じだったんでしょうな。

版刻:不明(コルネリス・コルト?) 原画:ピーテル・ブリューゲル(父) 版元;ヒエロニムス・コック「『軍艦』より 二隻のガレー船と軍艦」
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ブリューゲル一家が得意とした船の絵を版画化したもの。ここで版元の名前もわざわざ入っていますが、このコックは当時の流行やピーテル・ブリューゲル(父)の才能を見抜いて版画を大ヒットさせた人です。今でこそブリューゲル一家の名前は西洋絵画史に燦然と輝いていますが、それを見出したコックは名プロデューサーと言ったところでしょうか。割と版画の歴史では蔦屋重三郎とか渡邊庄三郎のように時代を作るプロデューサー的な版元がいるものですね。
 参考記事:ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 感想前編(東京都美術館)

版元:フィリップス・ハレ 原画:ヤン・ファン・デル・ストラート「『使徒行伝』より 天使によって牢から救い出される聖ペテロ」
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こちらは先程のコックの元で活動していた版画家のハレが自ら版元になって刊行して作った連作の1枚。画中に版元の名前のみならず版画家の銘まで入っているそうです。私が観てもどこに銘があるのか分かりませんでしたが、出来が良いだけに名前を残したかったのかも。

版刻:ヤン・サーンレダム 原画:ヘンドリク・ホルツィウス 「ホロフェルネスの首をもつユディット」
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敵将のホロフェルネスに酒を勧めて寝首をかいたユディットを描いた作品。下の方にサインみたいなのがあるのは神聖ローマ帝国の中でこの作品の版権が守られていることを示すそうで、さらなる複製を禁止しているようです。今で言う所の著作権みたいなものですね。かなり緻密な作品なので真似るのも容易じゃないと思いますがw

版刻:パウルス・ポンティウス 原画:ペーテル・パウル・ルーベンス 「十字架を担うキリスト」
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ルーベンスは自分が監督した版画を多く作っていますが、版画に力を入れた要因の1つに勝手に他人に粗雑な版画が作られたことがあった為のようです。こちらは本人監修だけあって肉体表現の見事さはまさにルーベンス作品そのものと言った感じです。 こうした版画家は1人ではなく何人かいるようでした。

今回の内容はこれくらいで、他に中央のガラスケース(撮影不可)で畦地梅太郎の作品が展示されていました。

こちらは浮世絵玉手箱というコーナーで、普段はカーテンで覆われていて観るときだけ開けて観る感じになっています。
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三代歌川豊国の古今名婦伝で、左から須磨松風、小野小町、清少納言です。それぞれ故事にちなんでいるようで、小野小町は草子を洗って自らの嫌疑を晴らす様子が描かれています。御簾を上げてドヤ顔の清少納言は「香炉峰の雪」からでしょうねw

最後に版画の技法を紹介するコーナーがありました。
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余談ですが、同時期に上野の森美術館で開催されているエッシャー展では様々な版画技法が使われている様子が紹介されているのですが、技法の詳細は解説が無いので何だか分からないと言っているお客さんが多くいました。これは分かりやすいのでこれを観ると一発で分かるはずw


というわけで、点数はそれほどない小展示ではありますが、版画の歴史や技法について様々な知識を得ることが出来る内容となっていました。これを無料で観られるのは中々凄いことだと思います。この企画展はもうすぐ終わってしまいますが、この美術館は名前の通り古今東西の版画に精通しているので、訪れると今後の美術鑑賞の参考になることが多いと思います。



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浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・(感想後編)【町田市立国際版画美術館】

前回に引き続き町田市立国際版画美術館の「浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・」についてです。前半は女性像と風景についてご紹介しましたが、今日は残りの3章~5章についてご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 前編はこちら

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【展覧名】
 開館30周年記念
 浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・

【公式サイト】
 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2018-380

【会場】町田市立国際版画美術館
【最寄】町田駅

【会期】2018年4月21日(土)~ 6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
後半にも各章に撮影可能な作品がありました。今回も写真を使いながらご紹介していこうと思います。


<第Ⅲ章 役者 ―歌舞伎から新派まで>
こちらは役者絵のコーナーです。役者絵は江戸時代から人気のジャンルですが、この時代は歌舞伎だけでなく新派の役者なども描かれているようでした。

203 山村耕花(豊成) 「四世尾上松助の蝙蝠安」
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ほっぺたにコウモリ型のあざがあるのが特徴で、やや伏目がちに描かれています。脇役の名人だった役者だそうで、主役のような華やかさは無いですが個性が感じられる作品です。

204 山村耕花(豊成) 「七世松本幸四郎の関守関兵衛」
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こちらは七世松本幸四郎の役者絵。目が飛び出しそうなくらい見得を切っていて、ちょっとユーモラスにすら思えます。特徴を誇張したような表現が面白い。

211 山村耕花(豊成) 「梨園の華 十三世守田勘彌のジャン・バルジャン」
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こちらは名前から察するにレ・ミゼラブルのジャン・バルジャンを演じているのかな。凄く悪そうなので囚人時代でしょうかw 鬼気迫る印象を受けました。
 参考記事:映画「レ・ミゼラブル」(ネタバレなし)

223 名取春仙 「創作版画春仙似顔絵集 五世中村歌右衛門 淀君」
こちらは女形の役者の大首絵みたいな作品で、目の周りに赤い化粧をして口角を上げてニヤっとした表情をしています。妖艶で何処と無く悪巧みしているような顔が中々インパクトがあって目を引きました。淀君の役だからこういう雰囲気なのかも。

224 名取春仙 「新派似顔絵集 大河内傳次郎 丹下左膳」
こちらは片目は古い刀傷で閉じている、剣客らしき姿の役者絵です。もう一方の目は睨みつけるような鋭い眼光で、刀に手をかけて今にも抜きそうな感じです。緊張感があり、中々カッコいい風貌となっていました。

この近くには写楽のような画風の吉川観方の作品などもありました。


<第Ⅳ章 花鳥 ―求められる伝統性とその変容>
続いては花鳥をモチーフにしたコーナーです。ここには様々な草花や鳥などの動物が描かれた版画が並んでいました。

234 小原古邨(祥邨) 「五位鷺」
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夜の静けさが漂う情感たっぷりの作品。月で影が水面に写っている様子など神秘的な光景です。

237 小原古邨(祥邨) 「水に映る月をつかむ親子猿」
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水に映る月を捕まえようとする猿は「猿猴捉月」という題材で割とポピュラーですが、ここでは親子で手を繋いで仲が良さそうな印象を受けます。簡潔に毛の質感を出しているのも見事。

241 高橋松亭(弘明) 「堀きり花菖蒲」
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こちらは撮影できなかったので外にあった看板です。タイトル通り堀切の菖蒲を描いていて、手前の花が大胆な構図です。背景には菖蒲を鑑賞したり小屋で休んでいる人の姿もあって、楽しげな光景でした。

247 吉田博 「動物園 於ほばたん あうむ」
こちらは写実的に描かれたややピンクがかった白のオウムの像です。羽の模様を彫り跡みたいに白い輪郭で表していて、面白い効果を生んでいます。背景には荒いバレンの跡が黒っぽく渦まいていて、オウムの白さを際立たせているように思いました。
 参考記事:
  生誕140年 吉田博展 山と水の風景 (東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館) 

この近くにあった土屋光逸の鳥を描いたシリーズも情感豊かで見事でした。


<第Ⅴ章 自由なる創作 ―さまざまな画題と表現>
最後はその他の題材の作品のコーナーです。ここは色々な画題がありますが、当時の風俗を知ることができるような作品が多かったように思います。

260 ヘレン・ハイド 「かたこと」
こちらは着物の女性が赤子をあやしている様子が描かれていて、背景には藤と菖蒲が描かれた襖絵があるなど豪華な部屋で 大名のような有力な家の母子だと思われます。抑えがちな色彩で、着物にはうっすらとしたグラデーションがついているなど繊細な表現となっているのが特徴です。作者はアメリカ出身の版画家で、フェノロサの勧めで木版画を制作するようになったようです。この作品はシアトルの展覧会で金賞を取ったり、パリのサロンでも入賞したのだとか。

この辺は他にも来日した外国人による版画が並んでいました。

269 古屋台軒 「越後獅子」
こちらは雪の降る街の中を2人の越後獅子という軽業の芸人がトボトボと歩いている様子が描かれています。この2人は親子らしいですが、他に道には誰もおらず、背景の家々の明かりが逆に物悲しい雰囲気となっていました。芸人の悲哀みたいなものを感じます。

272 山村耕花 「踊り 上海ニューカルトン所見」
こちらは社交ダンスしている複数ペアの男女たちと、手前でテーブルに座ってそれを観ている2人の貴婦人が描かれています。孔雀の扇子に赤い羽根帽子というエレガントな装いで上流階級の女性かな。この施設は上海にありダンスホールや映画、レストランなどもあったそうで、非常に華やかな雰囲気です。 描写も鮮やかな色彩とアールデコ調の筆致が 垢抜けた都会的な作風となっていました。

この近くには竹久夢二の作品なんかもありました。

281 小早川清 「ダンサー(レヴュー)」
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こちらは今回の中でも見どころの作品。これを観てマトリックス避けだ!と思ったのは私だけではないはずw 躍動感溢れるポーズが踊りの特徴を凝縮したような感じで、惹きつける魅力がありました。

282 小早川清 「舞踊」
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こちらも軽やかに舞う様子で、ちょっと変わったポーズをしています。黒地に赤い服と白い肌が映えて動きが強く感じられます。

294 上村松園 「大近松全集 第12巻 「雪女五枚羽子板」の雪女」
こちらは横向きの全身真っ白な雪女を描いた作品で、手には刀を持っています。口を半開きにして幽霊のように立っている姿は何とも恐ろしげです。一方では か細い印象もあって、中々印象深い作品でした。

296 橘小夢 「唐人お吉」
こちらはアメリカの旗をなびかせる黒船を背景に、赤い着物の女性が描かれた作品です。これは下田の唐人お吉の話を元にしたもので、話の上では唐人お吉は日本の犠牲になったような同情すべき人なのですが、ここではニヤッと笑って上目遣いの妖艶な女性として描かれています。まあ橘小夢の女性は妖艶になりがちですがw 独特の色香が漂う作品となっていました。

299 小村雪岱 「初雪〔雪兎〕」
こちらは傘を差した女性がしゃがんで雪うさぎを手に取っている様子が描かれた作品です。周りは雪が降っていて、1人ぽつんとした感じでちょっと寂しいようにも思えますが、可憐な姿となっていました。
 参考記事:小村雪岱とその時代 (埼玉県立近代美術館)


ということで、後半も斬新な作品が多くて楽しめました。かなり満足できたので図録も購入して、観られなかった前期日程の作品も楽しんでいます。この記事を書いている時点で会期が残り1週間しかありませんが、お勧めの展示です。


おまけ:
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1階に今回の展示のスタンプがありました。吹き出し部分は空白で、自分で台詞を書くことができるようになっているのですが、奥さんからこの2枚を渡されましたw 早めに観てカフェに行くと約束したのに回るのが遅かったので恨まれましたw 点数が多くて2時間半もかかってしまった。



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浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・(感想前編)【町田市立国際版画美術館】

日付が変わって昨日となりましたが、土曜日に町田の町田市立国際版画美術館で「浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・」を観てきました。こちらは非常に点数が多く充実した内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、各章で撮影可能な作品もありましたので、写真も使って参ります。(色々ネタが溜まっていますが、会期末が迫っているので先に記事にしておきます)

DSC08001_20180610030132cc9.jpg

【展覧名】
 開館30周年記念
 浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・

【公式サイト】
 http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2018-380

【会場】町田市立国際版画美術館
【最寄】町田駅

【会期】2018年4月21日(土)~ 6月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
結構多くのお客さんで賑わっていましたが、自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は「浮世絵モダーン」というタイトルで、浮世絵版画の復興を目指して作られた「新版画」の名品が集まる内容となっています。新版画は大正初期から昭和10年代まで制作・出版された版画で、今回の展示でも「新版画運動」を提唱した渡邊庄三郎(版元)に関係する画家の作品などが多めだったかな。220点近くもあり 題材ごとに章分けされていますので、各章ごとに気に入った作品と共に振り返っていこうと思います。
 参考記事:
  馬込時代の川瀬巴水 (大田区立郷土博物館)
  伊東深水-時代の目撃者 (平塚市美術館)
  生誕140年 吉田博展 山と水の風景 (東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館) 


<第Ⅰ章 女性 ―近代美人画の諸相>
まず最初は女性を描いた版画が並ぶコーナーです。近代の美人画だけあって、洋画からの影響も感じさせる作品もありました。なお、撮影可能だった作品は写真を使っております。

5 フリッツ・カペラリ 「黒猫を抱く女」
こちらは無地の屏風の前で黒猫を抱いてしゃがんでいる女性が描かれています。上半身は裸で、下半身には赤い着物?を履いているようです。後ろの屏風は左端辺りはさらに後ろの部屋が見えていて、女性位置も合わせて不思議な空間構成となっています。何故 裸で黒猫を抱いているのかも不明で、描写も含めてミステリアスな雰囲気がありました。日本風のような西洋風のような独特の画風です。なお、この作者はオーストリア生まれの版画家で、1911年に来日して1915年に渡邊庄三郎と出会い木版画制作に取り組むようになったそうです。最低でも15点は制作されたことが分かっているのだとか。

8 橋口五葉 「浴場の女」
DSC08178.jpg
『吾輩は猫である』の装丁も手がけた橋口五葉の裸婦像で、渡邊庄三郎の元で作った新版画での第1作目です。しかし橋口五葉は出来に満足しなかったそうで、貰った50部を焼いてしまい渡邊庄三郎との仕事もこれ1作で終わったのだとか。ちょっと体の線が硬いようにも思えますが良い出来だと思うんですけどねえ。

12 橋口五葉 「髪梳ける女」
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こちらは橋口五葉の版画の代表作。雲母引を背景に、清らかな女性が髪を整える姿が何度も可憐です。

16 伊東深水 「対鏡」
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こちらは撮影不可でしたが、代わりにポスターの写真です。試筆として作られた作品で、赤い長襦袢と白い肌・黒い髪の対比的な色合いが艶っぽい印象です。この長襦袢は3~4回も摺りを重ねているようです。また、この写真では分かりませんが、背景はバレンの丸い摺り目をつけて渦巻くような模様のようなものもあって、斬新さも感じました。

この背景の渦巻くような技法は近くにあった「浴後」や「春」などでも使われていました。

21 伊東深水 「伊達巻の女」
こちらは鏡の前で後ろ髪を整えて座っているピンク色の着物の女性で、うつむいた後ろ姿で顔は見えませんが、優美な雰囲気が漂います。着物のひだ等を細い輪郭線で表現したり、うなじ辺りは細い線で緻密に表現するなど、細部まで清廉な感じがしました。

25 伊東深水 「新美人十二姿 涼み」
こちらは橋の欄干に肘をついて川を観ている黒い浴衣の女性の後ろ姿を描いた作品です。帯は白地に青の輪郭で籠のような縞模様となっていて爽やかな雰囲気があります。顔は見えませんが、白い肌と佇む様子は絶対に美人だと予感させますw 夏の風情もあって素晴らしい作品でした。

この辺には同じく「新美人十二姿」が5点くらい並んでいました。1922年に予約会員200名に向けて頒布されたシリーズで、毎月1枚制作されたのだとか。

38 伊東深水 「現代美人集第二輯 吹雪」
こちらは吹雪の中を傘をさして歩く着物の女性を描いたもので、雪は着物にまで付いていて結構な勢いの吹雪ようです。ポーズも動きを感じさせるような感じが面白く、寒そうな雰囲気も出ていますがそれでも優美さが目を引きました。着物の色の取り合わせなども鮮やかでした。

この近くには画壇の悪魔派と呼ばれた北野恒富による妖艶な美女の作品などもありました。

39 山川秀峰 「婦女四題 秋」
こちらはショートカットのような髪型(耳の所で髪を束ねた変わった髪型)をした着物の女性を描いた作品で、着物の1枚にはハートやダイヤ、クラブといった模様があってモダンな印象を受けます。紅色の衣も非常にエレガントで、昭和初期の華麗なファッションと共に楽しめる1枚でした。

49 小早川清 「近代時世粧ノ内 六 口紅」
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鏑木清方 門下の日本画家による作品。ちょっと気の強そうな強い目をした女性の化粧の様子が艶やかです。特に指先に色気を感じました。

57 高橋松亭(弘明) 「裸婦と黒猫」
膝を崩して座る裸婦が手ぬぐいを持っていて、それを黒猫がじっと見ている様子が描かれています。背景は真っ赤で、白い肌と黒い猫が引き立って見えるかな。顔は浮世絵風なのですが、西洋画のような雰囲気があり、主題と相まって妖艶な女性像となっていました。

65 吉田博 「鏡之前」
こちらは裸で鏡に向かい合って化粧をしている女性が描かれています。吉田博にしては珍しい人物画じゃないかな。輪郭と明暗を上手く使って立体感を出しているので、洋画的な雰囲気がよく出ています。まあ、それが魅力的かどうかは別の問題ではありますがw ムラのある背景にも奥行きを感じさせました。

71 梅原龍三郎 「裸婦十題 座裸婦」
こちらは真っ赤を背景に緑の椅子に座る裸婦を描いた作品です。右後ろには花束も置かれていて、梅原っぽいモチーフが揃っている感じかな。黒く太い輪郭線が使われて力強い生命感のようなものが感じられました。先生のルノワールよりはマティス的な作風にも思えます。

この隣には安井曾太郎の版画作品もありました。


<第Ⅱ章 風景 ―名所絵を超えて>
続いては風景画のコーナーで、こちらは川瀬巴水が特に良かったです。戦時中に作られた戦争画とも呼べる外地の風景画なんかもありました。

78 坂本繁二郎 「日本風景版画 第六集 筑紫之部 神の湊 玄界灘を遠望」
こちらは 」の字のような形の砂浜と海を描いた作品で、遠くには岩も見えています。非常に単純化されてすっきりした画面構成になっているのが面白いです。坂本繁二郎がこんなに爽やかな作品を出していたのかとちょっと意外でした。

この近くにはつい先日観たばかりの伊東深水の「夜の池之端」もありました。
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2018年05月)

94 伊東深水 「近江八景 堅田浮御堂」
こちらは水辺に建っている小さなお堂に雪が降り積もっている様子が描かれています。木々や渡り廊下の欄干なども真っ白で、雪の日の静けさまで感じられそうです。空はやや暗く、しんみりと寂しさを感じました。

108 川瀬巴水 「東京十二題 大根がし」
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青物問屋の活気と川沿いの生活感が出ていて非常に風情があります。昔の東京の趣は情緒豊かで それだけ好みですw

109 川瀬巴水 「東京十二題 深川上の橋」
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川瀬巴水の魅力の1つにグラデーションの美しさがあるのではないかと思います。橋の下に舟が収まる構図も遊び心があって面白い。

126 吉田博 「牧場の午後」
こちらは4頭の牛が牧場を歩いている様子が描かれたもので、それぞれ色も模様も異なる牛です。空には輝くような雲があり、午後ののんびりした風景となっています。結構写実的にも思えますが、しっかり叙情性もあるのが吉田博の魅力じゃないかな。解説によると、1921年の「板画展」で伊東深水や川瀬巴水の作品は3~5円程度売られたようですが、吉田博は20円もしたのだとか。洋画家のほうが格上扱いだったのかもしれませんね。

150~152 吉田博 「瀬戸内海集 帆船 朝・午後・夕」
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こちらは以前の吉田博 展でも観られた色を変えて異なる時間を表したもの。透明感があり、特に夕方の色使いが好みです。並べて観られるので色による印象の違いもよく分かりました。

160 吉田博 「インドと東南アジア フワテプールシクリ」
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こちらはインド外遊中に観た光景を版画にしたもの。異国情緒溢れる1枚です。

168 土屋光逸 「東京風景 四ツ谷荒木横町」
こちらは建物の玄関に2人の芸姑が立っている様子を描いたもので置屋の様子かな。夜の光景となっていて、周りは暗いのですが建物から漏れる明かりが非常に強く感じられます。2階の障子には女性の人影もあって風情があり、どことなく川瀬巴水と似た作風に思いました。しかし巴水に比べると明暗がくっきりしているのが特徴と言えるかも。

この近くにあった石渡江逸(東江、庄一郎)の「夜の浅草」も幻想的で好みの作品でした。

179 伊東深水 「ジャワ ジャカルタ郊外」
こちらはジャカルタの街を描いた作品で、手前にスカーフを被った2人の女性がいます。奥には沢山の人たちがいて活気があり、明るい色彩からは強い光も感じられます。伊東深水は海軍報道班員としてこの地に派遣されたことがあったようで、その時の写生を元に版画にしたようです。よく観る伊東深水の作風よりもデフォルメされた感じにも思いますが、中々興味深い作品でした。

183 川瀬巴水 「かちどき」
こちらは廃墟のような城壁の上で日の丸の旗を降って両手を挙げる日本兵たちを描いた作品です。日本兵の手には銃剣があって、今しがた戦いに勝利したような光景ですが、実際に巴水はこの光景を観たわけではなく写真を元に描いたようです。巴水も戦争画を描いていたのは結構意外ですが、まあ夕暮れの色合いだけは巴水っぽさがあるかな。評論家も「これは芸術的とは言えない、巴水と戦争はあまりにも違った世界」と評しているようで、確かにその通りに思いました。逆に巴水を知る上で貴重な作品とも言えそうです。


ということで、前半からかなり濃密な内容となっていました。本当に新版画の美味しい所を詰め合わせにしたような感じで、大正の頃のモダンな雰囲気と相まって非常に満足度の高い版画ばかりです。後半もまだまだ見どころがありましたので、次回は残りの3~5章をご紹介の予定です。

→ 後半はこちら



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